2014 Fiscal Year Research-status Report
聴神経再生治療を志向した骨髄由来間葉系幹細胞から聴神経分化誘導の高効率化
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24592567
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
下村 敦司 北海道医療大学, 心理科学部, 教授 (50340237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向後 晶子 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20340242)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨髄由来間葉系幹細胞 / グルタミン酸作動性ニューロン / 感音性難聴 / 聴神経 / 再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ptf1a及びPax2は、GABA作動性ニューロンへの分化運命を決定づける転写因子である。骨髄由来間葉系幹細胞(以下BMSCとする)から効率よく聴神経、すなわちグルタミン酸作動性ニューロンを得るには、この分化過程で両因子、あるいはどちらか一方の発現を抑制し、GABA作動性ニューロンへの分化を抑えることである。平成26年度は、Ptf1a及びPax2の発現を抑制するsiRNAをデザインし、ウイルス発現ベクターの構築を試みた。現在その構築を行っている。 本研究計画を遂行中に、グルタミン酸作動性ニューロン分化過程におけるTlx3の働きを偶然発見した。Tlx3が、ヒストンアセチルトランスフェラーゼである転写活性化複合体CBPとの相互作用を介して、幹細胞をグルタミン酸作動性ニューロンへと分化に導くことを明らかにした。すなわち、この相互作用が、グルタミン酸作動性ニューロンへの分化運命の鍵となる生体反応である。またこの際、Tlx3と転写複合体を形成するPbx3が、Tlx3とCBPとの相互作用を促進することを明らかにした。この結果は、Tlx3だけでなく、Pbx3と共発現させることにより、BMSCのグルタミン酸作動性ニューロンへの分化効率を高める可能性を示唆するものである。本研究結果は専門誌への投稿され、レビュアーの意見に基づき改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、研究代表者である下村が、北海道医療大学へと移動した。その研究室への立ち上げに時間の多くを費やした。このような状況にも関わらず、本研究計画から得られた副次的発見を含めて、多くの成果を得ることができ、3報の論文としてまとめた。しかし、実験計画での2項目目2‐1について、そのウイルス発現ベクターの構築がまだ済んでいない。以上、総合的に判断して、「おおむね順調に進展してる」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が移動した北海道医療大学での動物実験が、手術機器の不足から今後予定している難聴実験動物モデルへの適応の実施ができない可能性が生じている。共同研究を行っているIndiana大学のグループが、in vitroで内耳構造を胚性幹細胞から作製する技術を開発した(Nature, 2013)。動物実験の実施が不可能となった場合、このin vitro内耳構造に、私たちが作成したBMSCを移植し、その聴神経再生能の評価を行うこととする。 また、本研究計画を遂行中に、グルタミン酸作動性ニューロン分化過程におけるTlx3の働きを偶然発見した。この結果は、Tlx3だけでなく、Pbx3と共発現させることにより、BMSCのグルタミン酸作動性ニューロンへの分化効率を高める可能性を示唆するものである。そこで、Tlx3とPbx3を強制発現させたBMSCについても、この分化能の効率化へ与える影響を調べてみる。
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Causes of Carryover |
平成26年度に藤田保健衛生大学から北海道医療大学へと、職場を移転した。そのれに伴い、年度前半は研究室の立ち上げに多くの時間がとられた。実際に研究を行うことができるようになったのが、年度後半であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスへの移植実験は、手間とその評価に時間がかかる。さらにその分、計画が遅れる可能性がある。共同研究を行っているIndiana大学のグループが、in vitroで内耳構造を胚性幹細胞から作製する技術を開発した(Nature, 2013)。また結果を得ることは、動物実験よりも早い。in vitroで内耳構造に、私たちが作成したBMSCを移植し、その聴神経再生能の評価を行うこととする。
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[Journal Article] Requirement of DLG1 for Cardiovascular Development and Tissue Elongation during Cochlear, Enteric, and Skeletal Development: Possible Role in Convergent Extension.2015
Author(s)
Akiko Iizuka-Kogo, Takao Senda, Tetsu Akiyama, Atsushi Shimomura, Ryuji Nomura, Yoshimi Hasegawa, Ken-ichi Yamamura, Hiroshi Kogo, Nobuhiko Sawai, and Toshiyuki Matsuzaki.
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Journal Title
PlosOne
Volume: 10
Pages: e0123965
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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