2013 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺の管腔構造形成・維持におけるHippoシグナル伝達経路の機能解析
Project/Area Number |
24592768
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
北川 道憲 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30314496)
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Keywords | 唾液腺 / Hippo / 管腔構造 |
Research Abstract |
本研究は、唾液腺におけるHippoシグナル伝達因子の分子機能を解析し、唾液腺の管腔構造形成・維持における同経路の役割を解明する事を目的としている。唾液腺組織は胎児由来組織を培養するシステムが確立されている事、in vitroにおいて唾液腺細胞由来の腺房・導管様構造組織を誘導する手法が報告されている事から、管腔構造形成・維持を解析する上で良いモデルとなっている。本年度は、前年度の研究において胎児唾液腺組織に発現が確認されたHippoシグナル伝達因子の分子機能抑制とその唾液腺組織における影響を検討した。Hippoシグナル伝達経路の中核となる転写コアクチベーターYap/TAZを標的として、これらのタンパク質翻訳を抑制する細胞透過型モルフォリノを設計した。マウス胎児線維芽細胞において、内在性に発現するYap/TAZタンパク質がモルフォリノによって翻訳抑制されることと、細胞の増殖が一部抑制されることを確認した。さらに、これらのモルフォリノを唾液腺組織培養システムにおいて添加すると、唾液腺組織の成長が経時的に抑制され、Yap/TAZの機能抑制が唾液腺組織の増殖において重要な役割を持つことを示唆するデータが得られた。また、Hippoシグナル伝達経路において転写因子Teadと転写コアクチベーターの結合を阻害する因子を添加した際にも同様の結果が得られたことから、胎児期の唾液腺組織増殖において同経路が重要な役割を果たしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、唾液腺におけるHippoシグナル伝達因子の分子機能を解析し、唾液腺の管腔構造形成・維持における同経路の役割を解明する事であり、同経路を構成する因子の発現または機能を抑制することは、目的達成のために重要な手段である。本年度の研究は研究予定通りおおむね順調に進み、胎児唾液腺培養システムにおいてこれらの因子の発現を抑制する系を確立することができた。また、その結果、胎児唾液腺の培養過程において同経路構成因子の重要な役割を示す増殖変化を見出すことができ、当初予定の研究目的はほぼ達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析結果から、胎児期の唾液腺組織において細胞透過型モルフォリノを使用するとHippoシグナル伝達因子の機能抑制が効果的に行えることが確認され、同シグナル経路の唾液腺の管腔構造形成・維持における役割を解明する上で有用であると考えられる。 同様の手法を用いて、他のHippoシグナル伝達因子についても解析を進め、同経路が胎児期の唾液腺組織形成において果たす役割を明らかにする事が重要であると考えられる。 また、Hippoシグナル伝達経路によって発現制御されている標的遺伝子が幾つか報告されているが、その中で胎児期唾液腺組織において重要な役割を担う遺伝子を明らかにする予定である。 さらに、Hippoシグナル伝達経路は組織のサイズ制御機構に関与すると考えられていることから、唾液腺の間葉組織・上皮組織の培養過程における経時的変化を定量的に測定し、前述のHippoシグナル伝達因子の機能調節が及ぼす影響を詳細に解析する。さらに細胞間接着因子・GPCRリガンド等ががHippoシグナル経路の活性制御に関与するとの報告があり、唾液腺組織の培養においても同因子が組織の増大に及ぼす影響を検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額のため、購入可能な研究消耗品が無かった。 次年度の消耗品購入に使用する。
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