2012 Fiscal Year Research-status Report
高病原性ストレプトコッカス・ミチスは存在する:その病原性と疫学の研究
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24592769
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長宗 秀明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40189163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田端 厚之 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10432767)
友安 俊文 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20323404)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Streptococcus mitis / 連鎖球菌 / 毒素 |
Research Abstract |
S. mitis(SM)の中の一群である,単数あるいは複数のコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)を分泌する高病原性SMの病原性や分類学的特性を解析するため,菌株保存バンク株やボランティアからの分離株等の収集を行いSM株コレクションの作製を進めた。それを用いてPCR等によるCDC遺伝子の保有状況の解析,及び高病原性SMと非病原性SMのドラフトゲノム配列の解析を進めた結果,ある疾患患者由来のSM株に新規5ドメイン型CDC(5D-CDC)が頻見されることが認められた。さらにゲノム解析の結果からは,SMには複数の亜系統が存在する可能性とその各亜系統のCDC獲得状況と高病原性化の間に関連性がある可能性が示唆された。また高病原性SM株が持つ5D-CDCの分子特性を既知のCDCと比較した結果,ヒト細胞指向性が高く,2つの受容体を認識するSM由来ヒト血小板凝集因子(Sm-hPAF)と類似した2受容体認識性のCDCであることが明らかとなった。さらにCDC保有パターンの異なる高病原性SM株について,生育に伴うCDC産生と分泌の動態を比較した結果,CDC保有パターン毎に生育性やCDCの産生・分泌のパターンが異なること,特にミチリシンを合わせ持つタイプでは培養後期に自己溶解により一気に毒素分泌量が高まることが判明した。現在,複数のSM亜系統の中のどれが高病原性SMに対応するのか等のSMの高精度の系統分類学的な検討を進めるため,またSMやその近縁菌種の系統進化に伴うSMの病原性化メカニズムや各種CDC遺伝子の発現制御メカニズムを解明するために,さらにSM株コレクションの拡大を進めるとともに,SMの各亜系統の代表株についての完全ゲノム解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SM株の各種CDC保有状況の解析において特定の疾患患者の分離株に高病原性SMが保有するCDCが頻見されるという興味深い知見に加え,SM株のドラフトゲノム解析ではSMには多くの亜系統が存在するという予想外の知見も得られた。また高病原性SMの保有する5D-CDCの分子特性についても明らかにすることができた。以上のように当初の多くの予定は順調に進み,また一部の検討項目はより発展的な研究展開に至っている。しかし,計画よりもSM株の収集は遅れていることから,さらにこれを継続して進行することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れているSM株コレクションの拡大を進めるとともに,当初の計画通りに平成25年度の研究を推進する。先ず,CDCの保有状況が異なる高病原性SMの代表株について,これらの株の持つcomC遺伝子の構造情報を元に合成する形質転換促進ペプチドを用いた生理的コンピテンス化あるいはエレクトロポレーションによる人工的なコンピテンス化による遺伝子導入方法を確立し,各CDC遺伝子のノックアウト株(KO株)を作製する。また高病原性SM株が保有する各CDC遺伝子のプロモーターについて,他のCDC遺伝子と類似の発現調節を受けるのかあるいはそれ以外の未知の発現調節を受けるのか等を,レポーターアッセイ等の手法で解明を進める。また,各野生株と得られたKO株を,ヒト培養細胞と比較対照する他の動物培養細胞に作用させ,共焦点走査蛍光顕微鏡等を用いてその感染性や培養細胞生存率への影響,また細胞内での増殖状況などを解析し,高病原性SM株のヒト指向的な感染性の有無や高病原性SMの感染現象に対する各CDCの関与について検討を行う。さらに,高病原性SM株の病原性をin vivoで解析するため,マウスに野生株とKO株を接種し,その感染性,組織障害性や致死誘導性,また感染定着部位等を明らかにする。使用するマウスとして,可能であればヒト型CD59トランスジェニックマウスも併用して解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の経費残額は平成25年度の消耗品購入経費に繰り込み使用する。昨年度の旅費については平成25年3月に執行済であるが,その支払が平成25年4月になっている。これらの点を除いては,当初の平成25年度の研究経費使用計画に沿って使用する。
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Research Products
(3 results)