2013 Fiscal Year Research-status Report
歯髄炎の病態形成における炎症-抗炎症バランス制御の解析
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24592871
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中西 正 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00217770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
細川 義隆 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90346601)
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Keywords | 歯髄 / 炎症 / サイトカイン / 歯髄細胞 / 象牙芽細胞 |
Research Abstract |
本研究では、エフェクター細胞であるTh17細胞の歯髄炎における役割を検討するため、まず代表的な液性因子であるインターロイキン(IL)-17を歯髄細胞に作用させたときの炎症メディエーター発現について検討した。その結果、IL-17濃度依存的にCXCL10やvascular endothelial growth factor (VEGF)の産生が上昇することが示されたが、cyclooxygenase-2 (COX-2)の発現は認められなかった。また、歯髄細胞において恒常的に発現が認められるheat shock protein 27 (Hsp27)については、IL-17の影響はみられなかった。一方、Th1サイトカインのインターフェロン-γは歯髄細胞に対しCXCL10産生を強力に誘導したが、VEGFやCOX-2の発現は誘導されず、Hsp27発現にも影響を及ぼさなかった。これらの結果より、歯髄細胞は自然免疫応答に加え、エフェクターT細胞から産生される液性因子に対する反応性を有することから、歯髄炎の病態形成における役割の一端を担っている可能性が示唆された。 また、歯髄の最外側に位置し外来刺激に対する最初の防御線となる象牙芽細胞に着目し、象牙芽細胞様細胞として樹立されたラットKN-3細胞を用いて、自然免疫受容体に対するリガンド刺激を行ったときのサイトカイン産生について検討した。その結果、NOD1リガンド刺激によりKN-3細胞におけるCCL20やMCP-1の発現誘導が認められたが、NOD2, TLR2またはTLR4リガンド刺激に対しては発現誘導は認められなかった。これは、歯髄細胞がこれらの自然免疫受容体に対するリガンド刺激に対し様々なサイトカイン産生を示したのと比較して、KN-3細胞は異なる反応性を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、エフェクター細胞であるTh1サイトカインやTh17サイトカインに対し、歯髄細胞がCXCL10等の炎症メディエーターを産生することが示されており、歯髄炎における歯髄細胞の役割についての解析は順調に進行していると考えている。また、炎症-抗炎症のバランス制御という観点からは、Treg細胞の解析が望まれるが、今までのところ炎症歯髄における発現があまり確認できていない。しかしながら前年度に、活性化された歯髄細胞におけるCXCL10産生を脂質メディエーターであるPGF2alphaが抑制することが明らかとなっており、正負のバランスに関する解析の一部は達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エフェクターT細胞から産生される液性因子に対する歯髄細胞の反応性についての解析を進展させ、自然免疫受容体に対するリガンド刺激との相互作用について検討する。さらに、Treg細胞に関する解析を継続していく。また、象牙芽細胞様細胞におけるサイトカインに対する反応についても検討を加え、総合的に歯髄炎の病態形成の解析を進める。加えて、抗菌物質であるカテキンを作用させたときの歯髄細胞や象牙芽細胞様細胞の反応性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、当初の計画どおりに培養細胞を用いた研究計画が進み物品の購入を行ったが、前年度の繰り越し分を完全には消費できなかったため、トータルで次年度への研究費が生じる状況となってしまった。なお、さらなる解析を行うにあたりELISA等の費用のかかる物品の購入を次年度に予定している。 次年度に使用する研究費の使用計画として、培養細胞を用いた実験が主となるため、ELISAやウエスタンブロット等の解析試薬の購入が中心になるものと考えている。また、研究成果を国内外の学会や論文として発表するための経費にも使用していく予定である。
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Research Products
(1 results)