2012 Fiscal Year Research-status Report
菌体外DNA・蛋白複合体を標的とした口腔バイオフィルム感染症の予防と治療法の開発
Project/Area Number |
24592872
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 敬志 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30173800)
尾崎 和美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90214121)
中西 正 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00217770)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯学 / 感染症 / 細菌 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
Research Abstract |
1. DNase Iを添加してStreptococcus intermedius (Si)を培養すると、Biofilm形成が有意に抑制され、また形成されたSi BiofilmをDNase Iで処理すると、Biofilm量は有意に減少した。さらにDDAOで染色されたSi Biofilm内のextracellular DNA (eDNA)は、DNase I処理により顕著に減少した。 2. Si BiofilmをDDAOと抗Histone-like DNA binding protein (HLP)抗体で染色した結果、eDNAとextracellular HLP (eHLP)は豊富に存在し、HLPは菌体内外でDNAと共局在、すなわち複合体を形成している事が示された。さらにHLPをDownregulateさせたSiでは、顕著にBiofilm形成量が抑制された。 3. Siから精製したDNAを添加してSiを培養すると、0.001 mg/mlまではDNA濃度依存的にBiofilm形成量は増加したが、0.01あるいは0.1 mg/mlでは減少した。高濃度のDNAを添加して形成したBiofilmは、剥がれやすく、Biofilmの構造に影響を及ぼす事が示された。他のグラム陽性菌や陰性菌、さらには宿主細胞から精製した異種DNAの添加でも同様の結果を認めた事から、この現象はDNAの由来に依存しない事も示された。0.01 mg/mlのDNA存在下では、Siの増殖は軽度に抑制されたが、0.001 mg/mlのDNAは影響を与えなかった。 以上より、eDNAやHLPはBiofilm形成を増強し、その安定性・硬直性に重要である事が示された。 4. HLPで単球系細胞を刺激してMicroarray解析を行った結果、cytokineやchemokine等の炎症性メディエーターの遺伝子発現が有意に増強していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 口腔内細菌であるStreptococci等のBiofilm内での eDNAやHLPの発現分布について、それぞれDDAO; 7-hydroxyl-9H-(1,3-dichloro-9,9-dimethylacridin-2-0ne)と抗HLP oligopeptide抗体で染色後、蛍光顕微鏡を用いてeDNAやHLPのBiofilm中での発現分布に関する経時的観察を行うという当初の計画が実施され良好な結果を得た。 2. 既にStreptococcusのhlp antisense遺伝子を導入したdown-regulate strainを用いて、Biofilm形成量を定量解析する事やこのdown-regulate strainにDNA、を添加してBiofilm形成量を定量解析し、HLPとeDNAのBiofilm形成に及ぼす影響に関する良好な結果を得た。 3. これまでに精製したStreptococcus組換えHLP蛋白質(rHLP)を用いて、宿主生体細胞に対する病原性について、ヒト単球を刺激し、遺伝子発現レベルではMicroarrayにて、また蛋白レベルではMulti-plex測定法やELISAにて、HLPの病原性についての分子・細胞生物学的手法による網羅的解析サイトカイン等の産生量を網羅的に解析した結果、炎症性反応に関与するメディエーターの発現・産生増強が示される等の結果が得られた。 当初研究実施計画と以上の結果を考慮すると、順調に研究は進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 近年、口腔細菌感染症と様々な全身疾患(心臓血管疾患・細菌性肺炎・糖尿病・低体重児早産)との関連性が明らかにされ、我々は、これまでに心臓血管疾患に着目し、歯周病原性細菌がアテローム病巣形成を促進し、大動脈に局所的な自然免疫応答を特異的に活性化する事やアテローム病巣形成にTLR2が関与する事を報告した。さらに、脳梗塞と嚥下障害を有する患者の口腔咽頭に形成されたBiofilmから緑膿菌が高頻度に検出される事を報告した(Chest 2010)。そこで今後、口腔Biofilmによる口腔細菌感染症と細菌性肺炎の関連性の解明を目的とした研究へも推進させたい。eDNAのbiofilm形成への影響のみならず、細菌性肺炎の主要な原因菌である緑膿菌やその他の細菌の病原因子の発現・産生にeDNAが及ぼす影響を解析する。 2. 現在、医療現場で問題となっている薬剤耐性菌の問題に関して、HLPやeDNAの薬剤抵抗性への影響の解析を解析する。方法として、eDNAやrHLPを細菌培養系に添加し、薬剤抵抗性に関して、各種抗生剤のMIC(最小発育阻止濃度)及びMBC(最小殺菌濃度)とそれらの比率を調べる。薬剤抵抗性に関しても、抗生剤の種類(作用機序等)による影響についても検討する。さらに、MIC以下の濃度の抗生剤を細菌培養系に添加し、さらに、その培養系にeDNAやHLPも加えて培養して、それらにより調節される遺伝子の発現量を調べて、薬剤耐性機構における役割を解析する。 3. 口腔感染症は、細菌のみでなくCandida等の真菌も主要な病原菌である。そこで、Candida等の真菌のBiofilm形成に対するeDNAの影響も同様に解析する。特に、Candidaは、酵母型と菌糸型の2種類の形態を有し、感染病態によりその形態を変化させていると考えられており、eDNAのこの形態変化への影響も併せて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、初年度であった為、異種DNAとして限定したグラム陽性菌、陰性菌や宿主細胞からeDNAを精製した。またその方法も、それぞれの細菌や細胞に応じて改良した古典的なフェノール・クロロホルム抽出法を用いた為に、研究費の繰越しが生じた。しかし、次年度は、真菌等(Candida等)の異種DNAの種類も増やす事やその精製度と効率を高める為に、DNA抽出・精製Kitを使用する事として、その繰越し分を使用する。さらに、薬剤耐性・抵抗性に及ぼす影響や口腔バイオフィルム感染症と呼吸器疾患との関連性の解明という新規の研究を推進する為の費用として、この繰越し分と次年度の研究費を使用する計画である。また次年度は、培養する細菌、真菌、宿主細胞の種類も増加させる為に、その培地作製用試薬や培養器具もさらに多く必要となり、繰越し分と次年度の研究費を使用する予定である。
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Research Products
(10 results)