2013 Fiscal Year Research-status Report
菌体外DNA・蛋白複合体を標的とした口腔バイオフィルム感染症の予防と治療法の開発
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24592872
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 敬志 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30173800)
尾崎 和美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90214121)
中西 正 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00217770)
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Keywords | 歯学 / 感染症 / 細菌 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
Research Abstract |
1. グラム陽性菌、陰性菌、真菌や宿主細胞から精製したDNAを添加してPseudomonas aeruginosa (Pa)を培養すると、Pyocyanin産生量はDNA濃度依存的に有意に増加したが、Colony形成数に変化は認めなかった。 2. 精製各種DNAを添加してPaを培養すると、0.001 mg/mlのDNA濃度でBiofilm形成量は増加したが、0.01 mg/mlでは減少した。また真菌であるCandidaのBiofilm形成に対するeDNAの同様な影響とDNA長による影響が無い事を確認した。さらにeDNAは、Candidaをより病原性が強いと考えられている菌糸型への形態変化を誘導した。 3. 精製Streptococcus mutans (Sm) DNAをSmの浮遊またはBiofilm培養系に添加して培養すると、Biofilm培養系においてcolony形成数の有意な増加が認められたが、浮遊培養系では認められなかった。 4. Biofim形成調節に関与するQuarum sensing、特にCell-cell signalingに影響を及ぼすCom circuit systemに関与する分子ComC, ComD, ComEまたはComXをcodeする遺伝子を欠損させた各Sm com欠失株とWild-typeを用いて、精製Sm DNAを添加して培養すると、Wild-typeとComX欠失株では、DNA添加によりBiofilm形成量は増加したが、ComC, ComD, ComE欠失株では認めなかった。 5. 精製Sm DNAをSm wild-typeの浮遊またはBiofilm培養系に添加して培養すると、Biofilm培養系においてHistone-like DNA binding proteinの菌体表層への有意な発現増強が認められたが、浮遊培養系では認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 脳梗塞と嚥下障害を有する患者の口腔咽頭に形成されたBiofilmから高頻度で検出され、かつ細菌性肺炎の主要な原因菌であるPseudomonas aeruginosaに対して、菌体外DNAがBiofilm形成への影響のみならず外毒素であるPyocyanin産生に影響を及ぼすことが示され、口腔Biofilmによる口腔細菌感染症と細菌性肺炎の関連性の解明に向けた当初の計画が実施され良好な結果を得た。 2. 口腔感染症は、細菌のみでなくCandida等の真菌も主要な病原菌である。CandidaのBiofilm形成に対するeDNAの影響とDNA長による影響が無い事も確認した。さらにeDNAは、Candidaをより病原性が強いと考えられている菌糸型への形態変化を誘導した。 3. Biofilm形成調節に関与するQuarum sensingに加えて、Cell-cell signalingや遺伝子水平伝播(特に薬剤耐性遺伝子獲得)に影響を及ぼす形質転換能力(Competence)に関与するCom circuit systemに着目し、Com分子をCodeする遺伝子を欠損させた各S. mutans com欠失株とWild-typeを用いて解析した結果、遺伝子水平伝播に影響を及ぼすCom circuit system 分子の中でもComC, ComDとComEが菌体外DNAのBiofilm形成誘導に関与する事が明らかとなった。 4. 菌体外DNAは、S. mutans BiofilmにおいてHistone-like DNA binding protein (HLP)の菌体外への発現を誘導し、より強固かつ多量の菌体外DNA・蛋白質複合体を形成させる事や宿主細胞・組織への炎症を惹起・増強する可能性が示唆された。 当初研究実施計画と以上の結果を考慮すると、順調に研究は進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 近年、口腔細菌感染症と様々な全身疾患(心臓血管疾患・細菌性肺炎・糖尿病・低体重児早産)との関連性が明らかにされ、我々は、これまでに心臓血管疾患に着目し、歯周病原性細菌がアテローム病巣形成を促進し、大動脈に局所的な自然免疫応答を特異的に活性化する事やアテローム病巣形成にTLR2が関与する事を報告した。さらに、脳梗塞と嚥下障害を有する患者の口腔咽頭に形成されたBiofilmから緑膿菌が高頻度に検出される事を報告した(Chest 2010)。そこで本研究課題では、さらに口腔Biofilmによる口腔細菌感染症と細菌性肺炎の関連性の解明を目的とした研究へも推進させたい。rHLPの細菌性肺炎に対する病原性に関して、口腔上皮細胞のみならず咽頭・気道・肺胞上皮細胞に対する影響(特に炎症性サイトカインや細胞接着分子等)を解析し、そのメカニズムも解明する。 2. 新たに口腔細菌感染症と様々な全身疾患との関連性について、糖尿病や肥満に着目し、HLPの膵臓ベータ細胞に対する影響(特にインスリン産生)やミトコンドリア活性に対する影響についても解析を行う。遺伝子発現レベルではMicroarrayにて解析を行う。 3. これまでにMPC-polymer処理のBiofilm形成抑制効果やカテキンによる歯髄細胞への炎症反応抑制効果を明らかにしてきた。そこで本研究課題では、さらにMPC-polymerとカテキン処理を組み合わせて抗炎症やBiofilm形成抑制の相乗的な効果について解析を行う。上記項目1で行うrHLPの病原性に対する抑制効果についても解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、昨年度に精製したeDNAが十分に残っていた為にDNA抽出・精製Kitの利用が当初より少なく、研究費の繰越しが生じた。また真菌(Candida)に対するeDNAの影響に関する研究に先駆けて、口腔Biofilmによる口腔細菌感染症と細菌性肺炎の関連性の解明に関する研究を行った為にも研究費の繰越しが生じた。 次年度は最終年度でもあり、口腔細菌Biofilm感染症と糖尿病との関連性の解明という新たな研究を推進する為にもこの繰越し分と次年度の研究費を使用する計画である。また次年度は、呼吸器疾患の解明に際し口腔上皮細胞のみならず咽頭・気道・肺胞上皮細胞を培養し、解析する為に培地作成用試薬や培養器具も多く必要となり、さらに最終年度として学会や論文での研究成果発表を多く行う事に繰越し分と次年度の研究費を使用する予定である。
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Research Products
(11 results)