2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592917
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野村 雄二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (80218370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤尻 昌彦 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (20325195)
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Keywords | 機能的消毒作用 / 二酸化塩素 / 歯科材料 |
Research Abstract |
本研究は、通常は細菌やウィルスに対して静菌的に働き、微生物が生体に為害性を示す状態の時にだけ滅菌作用を示す歯科材料の開発を目指すものである。口腔内において、この目的のために、もっとも適した薬剤が二酸化塩素をベースにしたものであると考えられる。二酸化塩素は、幅広い抗菌スペクトルときわめて低濃度で強力な殺菌力を有することが知られている。さらに、二酸化塩素は、次亜塩素酸ナトリウムのように発ガン性物質であるトリハロメタンを生じることがなく安全性が高いといわれている。二酸化塩素は、即効性が強く耐性菌が生じにくいとされており、申請者らの研究成果においても次亜塩素酸ナトリウムと違ってヒト培養細胞に対して細胞毒性が少なく、アポトーシスも起こさないことが明らかになっている。また、二酸化塩素は、水溶液中でガス状とイオン性の性質を併せ持っており、酸性側ではガス状で細菌の細胞壁の脂質層を透過し細胞質および核の活性を阻害する。アルカリ性側ではイオン状態で細菌の細胞壁を攻撃する。細菌に対する消毒効果は酸性側のガス状の二酸化塩素水のほうが数百倍も強い。そこで、為害性を示す細菌類の増殖、分化およびバイオフィルム形成期における酸産生能を当該年度に明らかにし、細菌が酸産生能を有したときに、より強力に滅菌効果を示す機能的消毒薬を開発を行うことができた。さらに、酸産生能に応じて消毒作用を示す二酸化塩素濃度を決定し、機能的消毒作用を含有した歯科材料の作製に道筋を着けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新型ウィルスや耐性菌に対して、きわめて有効な消毒剤として二酸化塩素を口腔内の機能的消毒作用を有した歯科材料に応用するものである。二酸化塩素は、広範な抗菌スペクトルをもつ強力な酸化殺菌剤で、欧米ではすでに幅広く普及している。日本でも、次亜塩素酸ナトリウムにかわり、循環水の殺菌や食品工業等での使用が広がってきているが、その作用機序は未だ明解ではない。そこで本研究では、この二酸化塩素の細菌に対する滅菌作用機序の解明を行ったところ、細菌の細胞壁攻撃性よりも呼吸器系阻害により滅菌作用を示すことが判明した。呼吸器系阻害は、二酸化塩素の細菌の細胞壁透過性を向上させることが必要であり、そのためのpH調整および最適二酸化塩素濃度を決定することができた。さらに、本研究により、機能的消毒作用を有した歯科材料が口腔内機能の回復と同時に、炎症や感染症の予防にも応用できる道筋を示すことができ、当研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、主としてミュータンス菌およびカンジダ菌に対する二酸化塩素の影響を調べてきたが、口腔内には300以上の細菌類が生息しており、これらの細菌に対しても、増殖期、分化期およびバイオフィルム形成期における実態を明らかにし、各期における二酸化塩素の影響およびヒト培養細胞に及ぼす影響も炎症反応性の観点から明らかにする。さらに、機能的消毒作用を有する消毒剤の調整を行う。二酸化塩素は水溶液中でガス状とイオン性の性質を併せ持っており、ガス状では細菌の細胞壁の脂質層を透過し細胞質および核の活性を阻害する。イオン状態では細菌の細胞壁に影響を与える。このガス状とイオン状態の存在比を細菌の酸産生能に合わせて、細菌の酸産生時に特に強い殺菌性を発揮するよう調整し、さらに強力な殺菌作用を示す機能的消毒薬の開発を行う。これらをふまえて、機能的消毒作用を有する歯科材料の作製を行い、各種細菌に対する消毒効果および生体に対する安全性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験器具の納入が遅れたため 次年度使用額は6万円程度であり、実験器具の購入に充てる予定である。
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[Journal Article] The extracts of Japanese willow tree species are effective for apoptotic desperation or differentiation of acute myeloid leukemia cells2014
Author(s)
Kounosuke Fujita, Yuji Nomura1, Masahiko Sawajiri1, Pravat K. Mohapatra, Hany A. El-Shemy, Nguyen T. Nguyen, Masashi Hosokawa, Kazuo Miyashita, Teruo Maeda, Hirofumi Saneoka, Shohei Fujita, Takayuki Fujita
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Journal Title
Pharmacognosy Magazine
Volume: 10
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed