2013 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼・嚥下機能を最適化する全部床義歯形態のイノベーション
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24592920
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
永尾 寛 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30227988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本釜 聖子 徳島大学, 大学病院, 診療支援医師 (60380078)
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Keywords | 義歯口蓋形態 / 咬合高径 / 嚥下 / 食塊形成 |
Research Abstract |
義歯製作においては咀嚼機能や審美性を優先するあまり、嚥下機能は軽視されがちである。舌の機能は加齢と共に低下し、それに伴い嚥下機能も低下する。義歯装着時に問題がないようでも、義歯を長期間使用することで、義歯が不潔になるうえに嚥下機能が低下すると、誤嚥性肺炎のリスクが大きくなる。そこで、咀嚼・嚥下機能を考慮した義歯形態の指標を得ることを目的として、咬合高径と臼歯人工歯の頬舌的排列位置が食塊形成能、口腔期・咽頭期の嚥下動態に与える影響を調査し、嚥下機能に最適な舌接触圧分布と患者の舌機能に調和した咬合高径、口蓋形態について検討することとした。 平成24年度には、口腔期と咽頭期の嚥下動態を一連のものとして接触・嚥下機能を総合的に評価するための新しいシステムを構築した。また、嚥下機能に障害のない若年者5名を被験者として、若年者の摂食・嚥下動態を評価する予定であったが、実験において嚥下内視鏡を用いることに対する恐怖心から、若年者の被験者を見つけることが非常に困難であった。 平成25年度は、嚥下内視鏡の操作トレーニングを繰り返し行い、安全で確実に操作できるように研鑽を積んだ。加えて、被験者の同意を得る際には、安全であることを実際に見せて、研究に協力してもらえる若年被験者を確保した。これらの被験者において、咬合高径と口蓋形態を変化させ、これが若年者の最大舌接触圧、食塊形成能、嚥下機能に与える影響を総合的に評価した(被験者3名) また、被験者として嚥下障害のない全部床義歯装着者20名を予定している。若年者での被験者確保が困難であったことから、上下全部床義歯患者を確保するために、研究の概要・主旨と得られる成果などを繰り返し説明しながら、全部床義歯の作製、調整を行い、被験者候補者を確保した(現在の候補者7名)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度の計画(24年度の進捗状況から計画を修正)では、若年者の摂食・嚥下動態を評価するために、嚥下内視鏡を安全かつ確実に操作するためのトレーニングを行った後に、嚥下機能に障害のない若年者5名を被験者として、以下のような研究を予定していた。 まず、咬合高径を第1大臼歯部で2㎜挙上した実験用口蓋床と咬合高径は変化させず、臼歯口蓋側部の厚みを3㎜に設定し口蓋形態を変えた口蓋床を製作し、JMS舌圧測定器を用いて、各口蓋床装着時および未装着時の最大舌接触圧を測定する。次に、嚥下内視鏡を用いたAbeらの方法(J Prosthodont Res.55(3):171-8 2011)で、各口蓋床装着時および未装着時の食塊形成能を測定、評価する。嚥下評価システムを用いて、各口蓋床装着時および未装着時の嚥下(空嚥下、2ml水嚥下、ゼリー嚥下)を評価する。以上より、咬合高径と口蓋形態が若年者の最大舌接触圧、食塊形成能、嚥下機能に与える影響を総合的に評価する予定であった。 しかし、嚥下内視鏡トレーニングに時間を要した。また、嚥下内視鏡の安全性を実際に見せて実験方法を説明したが、嚥下内視鏡を用いることに対する恐怖心から、若年者の被験者は3名(平成26年3月31日現在)に留まっている。 全部床義歯装着者を被験者とする場合には、これ以上に被験者の確保が難しいと思われることから、上下無歯顎患者に対して、研究の概要・主旨と得られる成果などを繰り返し説明しながら、全部床義歯の作製と調整を行い、被験者候補者を確保している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、嚥下内視鏡を安全かつ確実に操作できるテクニックを身につけるために、更なるトレーニングを継続する。また、機会があれば嚥下内視鏡に関するセミナーを受講したいと考えている。これによって、被験者に安心して研究に協力してもらえるようになり、当初予定していた若年者5名(現在3名、残り2名)の被験者数を確保できると考えている。 平成26年度の計画では、被験者として若年者2名に加え、嚥下障害のない全部床義歯装着者20名を予定している。全部床義歯装着者では、良好に経過している上下全部床義歯を複製し、咬合高径を変化させた実験用義歯(-3㎜、0㎜、+3㎜)、臼歯人工歯の排列位置を変化させた実験用義歯(臼歯人工歯の中心窩が歯槽頂より2㎜舌側、2㎜頬側を通る)を製作し、若年者と同じ方法で咬合高径と口蓋形態が全部床義歯装着者の最大舌接触圧、食塊形成能、嚥下機能に与える影響を総合的に評価する予定である。高齢者を被験者とするため、高血圧等の全身的な疾患をもっていることが予想される。実験前の問診、かかりつけ医への照会等によって、健康状態を詳細に把握した上で測定を行わなければならない。 しかし、全部床義歯患者が少ない上に、健康状態が比較的良好で、かつ、研究に協力的で被験者となって頂ける患者を確保することは非常に困難と思われるので、目標被験者数を10名に変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入予定であった、鼻咽腔ファイバースコープシステム(鼻咽腔ファイバースコープ用DVD&HDレコーダー含む 2,336,000円)を、本釜聖子(若手研究(B)24792090 食塊形成能評価法の開発)と共同購入したため、残額が生じ平成25年度へ繰り越した。平成25年度には、嚥下内視鏡に関するセミナーを受講し、嚥下内視鏡を安全かつ確実に操作できるテクニックを身につけるために使用する予定であったが、当該セミナーの開催がなく、実験補助者を関連学会に参加させるのみであった。 また、全部床義歯装着者を被験者として実験を行う予定であったが、実験の遅れから若年被験者3名の実験のみに留まった。 平成26年度は、若年者2名、全部床義歯装着者10名を予定している。研究の遅れを取り戻すために、実験補助を増員するための人件費として使用する。また、被験者の確保が困難な時には、謝金を使用することも考えている。
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