2013 Fiscal Year Research-status Report
温度応答性ポリマーによる口腔ケアに有効な義歯安定剤の開発
Project/Area Number |
24592958
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
友竹 偉則 徳島大学, 大学病院, 准教授 (70263853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 禎人 徳島大学, 大学病院, 助教 (20509773)
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Keywords | 歯科材料学 |
Research Abstract |
本研究では、温度応答性ポリマーを用いることによって、患者による取扱いが容易で口腔衛生の維持に寄与する義歯安定剤、軟質裏装材を開発することを目的としている。医薬品や食品加工剤であるポロキサマー(商品名Lutrol:BASF SE、ドイツ)を用い、ポリマーの組成比、粉液混和比等を調整して、その流動性や粘着性などの物性評価を行い、Lutrol108の質量%30%、Lutrol127の質量%25%の蒸留水の混水率とした場合に17-18度で流動性、物性の変化を認めた。質量40%として混水率を減じた場合にはポリマーの溶解は困難であることが分かった。上記の条件で義歯安定剤として使用に適すると考えられた一方で、物性として含有水分比率が高かったため、現在使用されている義歯安定剤よりも粘性は低いものであった。 温度応答性ポリマーの義歯安定剤としての機能的な要件を評価するために、上下無歯顎模型の両側犬歯相当部にインプラントを設置したオーバーデンチャーモデルの実験を行い、通法のアタッチメントと比較した。義歯の維持の評価として、上顎モデルを用い、インプラントアタッチメント部に義歯安定剤および上記条件のポリマーをアタッチメントとして使用した場合の義歯の維持力を測定した。また、義歯床下組織への圧力分布の評価には、下顎モデルを用い、インプラントアタッチメント部に義歯安定剤および上記ポリマーを使用した場合のインプラント周囲および臼歯部顎堤粘膜への圧力分布を測定した。結果として、機械的に接合するアタッチメントと比較して、軟質系材料による義歯の維持力は小さかったが、材料の粘着性およびハウジングの形状によって義歯が完全に離脱することがない異なった特性が観察された。応力分布では、軟質系材料ではインプラント周囲に伝わる負担は小さく、インプラント支台への負担は軽減できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリマー混和条件を検討することにあり、温度変化による流動性や粘着性などの物性評価を行い、検索途上で実際使用に適当な温度での物性変化は確認できたが、ポロキサマー単体では物性的に想定していた粘性が発揮されないことが推測できた。 そこで、温度応答性ポリマーを担体として粘膜調整剤および義歯安定剤と混和することによって粘性、粘弾性を強化し、かつ温度応答性の物性変化を付与することとし、義歯安定剤としてのモデル実験を先行した。現在使用されている各種の義歯安定剤ならびに粘膜調整材、軟質裏装材の性能を口腔内使用による維持力、応力分布を計測、比較するものである。軟質系材料の義歯、オーバーデンチャーのアタッチメント使用に関しての周囲組織への負担が減少できることを確認した。さらに、デンチャーハウジングの形状を改良していくことで、軟性材料の実際の使用条件を検索している。
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Strategy for Future Research Activity |
温度応答性ポリマーを担体とした義歯安定剤を評価するため、基本的物性の評価方法としてJIS規格(JIS T 6525-1:2005)に則って、各混和条件の評価を行う。具体的には、生体親和性および偽害性の有無、口腔内での耐久性を評価する。温度応答性ポリマー混和体のゾル・ゲル変化温度を確認する。口腔内での使用を考えているため、4℃~15℃でゾル化、30℃~40℃の範囲で完全にゲル化する条件を検討していく。また、JIS規格以外にも義歯安定剤の物性を評価する方法として、操作性や効果に影響する動的粘弾性の測定を行う。並行して、ある程度の条件設定が確認できた段階で、引き続き模型実験において各条件で維持力、応力分布を測定し、義歯安定剤としての性状を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
温度応答性ポリマーの組成比、粉液混和比等を調整して、その流動性や粘着性などの物性評価を行い、義歯安定剤に適する使用温度の混和条件が得られた一方で、物性としては含有水分比率が高いため異なる特徴を示した。臨床での使用状況を考え、オーバーデンチャーの軟質系アタッチメント材料としての有効性を考慮するためのモデル実験を行ったことでプレスケール検査の予定が繰り越しとなり生じた。 基本的物性の評価方法としてJIS規格(JIS T 6525-1:2005)に則って、各混和条件での物性評価を行うための規格試料を作製する材料・器具が必要となる。また、温度管理下での粘性測定のために動的粘弾性測定装置を購入済みであるが、設定条件を広げるための計測用スピンドルなどの附属品の追加購入も必要である。模型実験および動物実験においても、各条件での規格試料を複製する必要があるため、材料・器具が必要となる。
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