2012 Fiscal Year Research-status Report
難治性疼痛の痛覚ー情動系の分子機構解析と栄養因子治療応用
Project/Area Number |
24593057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石川 敏三 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90034991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 浩三 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (20624795)
鈴木 秀典 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30393432)
仲西 修 九州歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (50137345)
掛田 崇寛 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (60403664)
山本 美佐 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70379957)
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
伊吹 京秀 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90232587)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | chronic pain / depression / BDNF / ERK / magnetic stimulation |
Research Abstract |
口腔顔面の難治性疼痛は、長期化し気分障害を併発しQOLを低下させる。我々は、痛覚-情動系のシグナル変調と神経栄養因子(BDNF)不足が関与すると考えている。特にBDNFは、シナプスの修飾作用の他、細胞傷害過程の抑制、軸索進展および再生能を高める神経変性疾患を軽減する可能性がある。 本研究では、ラット慢性疼痛における痛覚-情動系の時空的分子機構解析を行うことを目的とした。今年度は以下のことが判明した。 1)磁気刺激により ラット培養大脳ニューロンのBDNF(ELISA)およびmRNA発現が増加した。2) 細胞内シグナルではBDNFの主要経路MAPキナーゼの活性化(リン酸化)を認めた。3)神経障害性疼痛モデルで、磁気刺激は神経幹細胞の増殖と分化をもたらし、この作用は神経細胞のマーカーで確認した。4)磁気刺激を培養細胞へ照射すると、BDNF mRNA発現がRT-PCRで確認された。 本研究において神経栄養因子が神経細胞傷害の予防及び障害後の修復に極めて有用であることが、培養細胞および脊髄・脳神経回路の細胞実験から判明した。磁気刺激以外にも、ポリフェノール化合物が細胞活性を高める可能性があり、鬱状態、神経過敏を軽減する可能性を見いだした。したがって、慢性痛の分子機構解明、つまり培養系実験と生体実験から、神経栄養因子の生理活性がより詳細となり、また磁気刺激による治療応用に基礎的知見を得た。よって近い将来に、神経栄養因子様活性をもつ化合物や磁気刺激によって慢性疼痛の治療が可能になれば、本研究の臨床への貢献度はきわめて高いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経障害性疼痛は気分障害を伴うが最近 、脳内帯状回神経系の過剰興奮、および連鎖した下降性抑制系の機能低下の関与が示唆されている。このことはまた、脳イメージ画像法からも確認ができているとともに、臨床的にも有用な解析や病態診断となっている。こうした中、本研究では、培養系で生理活性を解明したのち、続けて脳の不快情動に関与する部位、前帯状回、島、扁桃体の脳活性亢進や下降性抑制系の賦活作用などの解析が順調に進んでいる。 主な成果は、 1)慢性痛モデルで前帯状回におけるpERK-pCREBの活性化が判明した。 2)磁気刺激と類似作用が期待されている、BDNF誘導剤(4-Methlycatechol)が、MAPKsリン酸化作用を介し、BDNF合成誘導や軸索伸展をもたらすことが判明した。さらに、3)細胞内pERKーCREBの過剰興奮が併発することも判明した。 今後、こうした意義深い所見をもとに、BDNF合成誘導薬がそれらの機序を適正に緩和させる分子細胞学的裏付けを行う予定である。 また電磁刺激治療器の痛覚―情動系の時系列的・局所的細胞応答の変化を解明し、本治療が臨床応用できるか否か、培養系実験から生体実験まで、詳細な基礎的知見を得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、多くの神経変性疾患では、「脳内の親和性の高い部位で共通してBDNF不足が起こる」と仮説を立て作業を進めている。 その検証の一つとして、BDNF誘導剤が、細胞内pERKシグナルの過剰興奮が併発する病態を修飾するか否かを解明したい。 その結果により、BDNF合成誘導薬がそれらの機序を適正に緩和させる可能性が判明すると考えられ、したがって、このような分子細胞学的裏付けが必要とされる。 今後、分子細胞学的裏付けを行う予定である。 また電磁刺激治療器の痛覚―情動系の時系列的・局所的細胞応答の変化を解明し、本治療が臨床応用できるか否か、培養系実験から生体実験まで、詳細な基礎的知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では痛覚―情動系の可塑性解明および治療法について検討する。とくに、前帯状回の可塑的現象および延髄RVMの機能について、遺伝子工学的(シグナル、遺伝情報)に解明し、また治療法についても検討する。 1.分子病理学的検討:1)慢性痛後に延髄・脳を摘出、凍結し、クライオスタットにて厚さ20μmの凍結切片を作成する。2)これらの組織切片に対してBDNF mRNA, pERK, c-fos 遺伝子発現をin situ hybridization法にて検討する。3)BDNFノックダウンマウスで神経障害性疼痛モデルを作成し, pERK-pCREB, BDNF mRNAの変化をさらに確認する。 2.最適な治療法の探索およびその特性解析:1)ラット、マウス脳由来神経細胞を培養し、BDNFの産生促進活性評価と細胞内シグナル伝達の修飾活性を評価する。2)歯髄神経障害後の痛覚過敏実験で、磁気刺激治療器について三叉神経尾側亜核細胞の修復作用を評価する。 なお、昨年度予算において、試薬などの購入が予定よりも安価で済み、108,637円の残となった。次年度には、遺伝子解析も重要となり、関連キットや器材などを当初予算に加えて執行したい。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Different activation of trkB-pERK contribute to the progression of hyperalgesia2012
Author(s)
Y Kishishita, S Yasuda, S Yamamoto, D Miura, H Miyazaki, H Sasaki, T Ariyashi, K Ishikawa, Y Ida, T Ishikawa
Organizer
NEUROSCIENCE
Place of Presentation
New Orleans Convention Center(Louisana, USA)
Year and Date
20121014-20121016
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[Presentation] 4-Methylcathechol, neurotorophin inducer, prevents abnormal pain-emotion response including hypersensitization and mood disorder in rat with chronic pain2012
Author(s)
M Yoshida, S Yasuda, S Minoda, K Ishikawa, S Yamamoto, Y Kishishita, S Watanabe, O Nakanishi, T Ishikawa
Organizer
NEUROSCIENCE
Place of Presentation
New Orleans Convention Center(Louisana, USA)
Year and Date
20121014-20121016
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