2013 Fiscal Year Research-status Report
地域包括的視点に基づく看護管理学の創出に向けたアクションリサーチ
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24593217
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Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
吉田 千文 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (80258988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 雅子 聖路加国際大学, 看護学部, 教授 (30459242)
伊藤 隆子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (10451741)
雨宮 有子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 講師 (30279624)
亀井 縁 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 助教 (90624487)
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Keywords | 地域包括ケア / 看護管理 / アクションリサーチ / 理論創出 / 地域医療連携 |
Research Abstract |
平成24年度に引き続き、ソフトシステム方法論に基づくアクションリサーチを用いて、地域包括的看護管理学の概念創出に取り組んだ。 前年度に住民の生活及び保健医療福祉状況は行政区ごとに異なることがわかったため、研究フィールドを3つの小地区にわけて研究者・実践者ミニワークショップ(以下、ミニWS)を繰り返し開催し、「地域で看護するとはどういうことか」、あるいは当該地区の実践者が決定した問いについて、現場での実感をもとに本音で話し合った。そして研究者ワークショップ(以下、研究者WS)を、ミニWSごとに開催し地域包括的視点に基づく看護管理についての探求を継続的に行った。平成26年2月には各地区WSと研究者WSでの学びを共有し、さらに議論を深めることを目的に合同WSを開催した。 実践者の全12回延べ参加者数は85名、病院看護師、地域包括支援センターの保健師・介護支援専門員・社会福祉士、訪問看護師、老人保健施設の看護師のほか、事務長、住民、看護学校教員、理学療法士も加わった。 これまでに見出した地域包括的視点に基づく看護管理学のコンセプトは、①全ての人が看護することの当事者。専門家の活動はそこに含まれる、②専門家は素人との間にブレずに揺れる関係性を築く必要がある、③専門家も住民も皆でリスクを取り責任を負える信頼を育てる、④「地域包括的」の地域とは空間、時間、人々の重層的な関係性を含む概念、⑤管理のコンセプトの一つは、気づいた人からやる、気づきを芽吹かせ育てることなど。 「地域を包括的に看護するとはどういうことか」の最終段階の「思いのモデル」は以下の通り。「Z:否応なく押し寄せるなみにあっても、したたかに生き抜くために、Y:一人ひとりのケア力を信じて、状況を丸ごと受け止めて思い切って一歩踏み出すことによって、X:みんなでぶれずに揺れながら粘り強く、「大丈夫」「大丈夫」とかかわり続けるコト。」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の順調な進展の理由の一つは、採用している研究方法の専門家から、研究方法に関する理論的、実践的支援を得ていることである。毎回、内容の濃いワークショップを行え、そこからコンセプトの創出という螺旋的創出サイクルをたどることができている。 二つ目は、ワークショップを通して、研究フィールドの実践者が気づきを得て、それをもとに各自が看護実践においてアクションを起こし、現場が変わるという経験をしたことで、研究へのコミットメントが高まったこと、また研究の意義、方法についての理解が深まって、ワークショップの企画運営に対する協力が得られたことがあげられる。 三つ目の理由として、研究者と実践者、研究方法の専門家との信頼関係が築け、研究遂行への自信が強まっていること、また研究者自身が研究方法を理解し習熟してきたことがあげられる。 最後に、学会などでの成果発表については、研究成果を提示できる段階には至っていないが、インフォメーションエクスチェンジやアクションリサーチ関係のシンポジウムへ積極的に応募し、多様な背景をもつ看護管理者、ビジネスマン、企業経営者、そして一般市民からのフィードバックを得ることができたことも、研究者の思考を促進し研究を進めることにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前半に「地域包括的視点に基づく看護管理学」のコンセプトの精錬、後半は成果公表と報告書作成を行う。研究の厳密性を確保するために、引き続き研究方法論の専門家の支援を得る。 4月~9月に行うコンセプトの精錬は、ソフトシステム方法論に基づくアクションリサーチの手法に従い、「思いのモデル(平成26年3月)」をもとに、理論導出デザインを「概念活動モデル」を用いて描き、これに基づき進める。そして、「概念活動モデル」の各構成項目(1.否応なく押し寄せる波にあっても、したたかに生き抜くとはどういうことかを考える、2.みんなでぶれずに揺れながら粘り強く、「大丈夫」「大丈夫」とかかわり続けるとはどういうことかを考える、3.一人ひとりのケア力を信じて、状況を丸ごと受け止めるとはどういうことかを考える、4.思い切って一歩踏み出すとはどういうことかを考える、5.一人ひとりのケア力を信じて、状況を丸ごと受け止める方法を決める、など10項目)について、「比較表」を用いて「現実(実践者の体験・研究者自身の体験)」との照合およびその看護管理学的意味についての検討を行う。 照合にあたっては、平成24~25年度に実施した全WSデータを用いるほか、新たに文献検索と先駆的実践者の探索・面接および実践の参加観察によって、導出した理論の裏付けを行う。研究者WSは1~2か月ごとに行い、研究者ができるだけ集中的に思考できるようにする。 10月~3月は、報告書の作成および国内外の学会での成果発表によって理論の精錬をめざす。研究代表者である吉田が、中核論文を作成し、それをもとに各研究分担者が執筆するテーマを決定する。11月には英国で開催されるアクションリサーチ学会で、海外研究者との意見交換を行い理論を精錬させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.本研究は平成24年度から平成26年度までの3年計画で進めることとしている。そのため、当初に計上していた最終年度の研究活動に必要な予算をもとに活動する。 2.平成25年度は、研究フィールドでのワークショップを7回行ったが、研究協力者のスケジュール調整が困難であったため旅費支出が予定よりも少なかった。平成26年度には、当初の計画になかった海外での学会発表を行うため、繰越金はその旅費に充てる。 1.研究者ワークショップ・会議の開催(場所:聖路加国際大学):ワークショップは、4月~9月に1回/1~2か月の頻度で、10月~3月には2か月に1回の頻度で研究会議を開催し、報告書作成を進める。そのために、研究者と研究協力者(宇都宮氏)の京都-東京間の旅費が必要である。2.理論創出に向けた文献検索:書籍購入、文献複写の費用が必要である。3.研究方法論の専門家の支援:専門的知識の提供に対する謝金、旅費が必要である。4.研究成果発表:8月に日本看護管理学会(愛媛、松山)で、10月-11月に国際アクションリサーチ学会(英国、ニューカッスル)において研究成果発表を行う。英文校正費、旅費が必要である。5.研究補助者:データ整理、ワークショップ・会議準備・記録などの研究遂行補助を行うリサーチアシスタントを雇用する。謝金が必要。6.報告書作成:印刷費、郵送費が必要である。
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Research Products
(2 results)