2013 Fiscal Year Research-status Report
乳児期における人見知りのメカニズム:行動―脳―遺伝子の多角的解析
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24600028
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松田 佳尚 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (60342854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 行郎 同志社大学, 心理学研究科, 教授 (40135588)
渡部 基信 同志社大学, 心理学研究科, 研究員 (30649306)
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Keywords | 人見知り / 気質 / 脳機能 / 遺伝子多型 / 乳児 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生後6~18ヵ月の乳幼児にみられる人見知りのメカニズムを「行動―脳―遺伝」の3つのレベルで明らかにすることである。本年度は、「行動」の中でも特に、気質、視線計測、縦断的観察から人見知りを明らかにした。 1.「気質」「視線計測」によって、乳児の人見知り行動が、相手に近づきたい(接近行動)と怖いから離れたい(回避行動)が混在した状態、すなわち「葛藤」状態であることを発見し、さらに相手の「目」に敏感に反応することを明らかにした。この成果によって、これまで知られていた、学童期に見られる人見知りの原因とされる「接近と回避の葛藤」が、わずか1歳前の赤ちゃんでも見られることが初めて示され、さらに「目」に敏感でありつつも直接目を合わせるのは避けるような情動的感受性が、人見知り行動の背景にあることが示唆された。この研究成果はPLoS ONE誌に掲載され、同時にプレスリリースを行ったところ、多くのメディアから反響があった。(2013年6月6日) 2.人見知りの強さや出現時期には個人差がある。CCTIという人見知りアンケートを毎月1回ウェブ上で行い、生後6~18ヵ月まで縦断的に経時観察を行った。現在、参加者は約300名であり、今後は800名まで数を増やす予定である。縦断的アンケートの結果、通常言われているように7~8ヵ月で人見知りが現れる子が多い一方で、4ヵ月から現れる子、1才を過ぎてから現れる子、人見知りが全く現れない子、ずっと人見知りが続く子など、多様性に富むことが示唆された。また、人見知りのピークは1度だけであることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人見知りの縦断的アンケートの被験者は半年で300名を集めることができた。同時に爪による遺伝子サンプルも順調に集まっている。研究分担者の協力によるところが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
乳児期では扁桃体など皮質下構造が先に成熟し、大脳新皮質は遅れて発達する。そのため、大脳・腹内側前頭前野から扁桃体へのブレーキ(抑制)がかかりにくく、結果、扁桃体が過剰反応しやすい。人見知りでは、この扁桃体からの恐怖信号によって他者の回避行動がたやすく誘発されると考えられる。同様に、側坐核や腹側線条体といった報酬に関与する脳部位も過剰に反応するため、養育者への接近行動が顕著に誘発されるのだろう。すなわち、乳児では恐怖条件付けに必要な神経回路も、古典的条件付けに必要な神経回路も、大人に比べて容易に活動する。この大脳と皮質下構造における発達のアンバランスこそが人見知りを引き起こすのではないだろうか?さらに人見知りは個人差が大きい。原因として、大脳―皮質下に発現している遺伝子産物の違いが挙げられる。たとえば、恐怖行動やストレス応答に関わる遺伝子産物として、セロトニントランスポーター(5-HTT)やモノアミン酸化酵素A(MAOA)が知られている。一方、報酬応答や選択的注意に関わる遺伝子産物はカテコールOメチル基転移酵素(COMT)や、ドーパミン・トランスポーター(DAT)がある。成人におけるこれら遺伝子多型が行動の違いを反映していることは知られているが、乳児における個人差の研究は始まったばかりである。さらに同じ遺伝子多型のタイプであっても、環境によって発現量に差が出るエピジェネティック修飾が知られている。実際、乳児院に預けられて日ごろの接触がない場合、母親であっても人見知りをする。そのため、行動学的指標や性格検査と比較して、行動―遺伝の対応関係を照らし合わせる必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
爪サンプルからの遺伝子抽出が遅れているため、理化学研究所に遺伝子解析を依頼する謝金の使用が遅れた。 現在、爪サンプルからの遺伝子抽出が進み始めたので、今年度は遺伝子解析を依頼できる。
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Research Products
(8 results)