2014 Fiscal Year Research-status Report
乳児期における人見知りのメカニズム:行動―脳―遺伝子の多角的解析
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24600028
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松田 佳尚 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (60342854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 行郎 同志社大学, 心理学研究科, 教授 (40135588)
渡部 基信 同志社大学, 付置研究所, 研究員 (30649306)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人見知り / 気質 / 脳機能 / 遺伝子多型 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生後6~18ヶ月の乳幼児でみられる人見知りのメカニズムを「行動―脳―遺伝」の3つのレベルから明らかにすることである。本年度は、「行動」の中でも特に、気質から人見知りの観察を行った。人見知りの強さや出現時期には個人差があるため、Colorado Childhood Temperament Inventory (CCTI)人見知りアンケートを毎月1回、ウェブ上で行い、生後6~18ヵ月まで縦断的に経時調査を行った。アンケートの回答は、養育者が行った。途中経過を含めて現在550名の被験者から参加してもらっており、今後800名まで数を増やす予定である。縦断的アンケートの結果、通常言われている7~9ヵ月で人見知りが現れる児が多い一方で、4ヵ月から現れる児、1才を過ぎてから現れる児、人見知りが全く現れない児、ずっと人見知りが続く児など、多様性に富むことが示唆された。また人見知りのピークは1度だけであることも分かった。乳児期の人見知りの原因は、学童期の人見知りの原因と本当に同じなのか、乳児期においてどのような児が、そのあと学童期に入っても人見知り行動を続けるのだろうか。長期にわたる観察をすることで、1人1人に合わせたコミュニケーションと教育環境、能力開発が期待できる。また、人見知りのメカニズムを知ることで、逆に人見知りを「全くしない」とされる発達障害の理解にも役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人見知りの縦断的アンケート、およびDNA抽出のための爪サンプルを550名分集めることができた。研究分担者の協力によるところが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
爪サンプルからDNAを抽出し、遺伝子と人見知りの相関を解析する予定である。乳児期では、扁桃体など皮質下構造が先に成熟し、大脳皮質は遅れて発達する。そのため、大脳・腹内側前頭前野から扁桃体への抑制がかかりにくく、結果、扁桃体が過剰応答しやすい。人見知りでは、この扁桃体からの恐怖信号によって他者の回避行動がたやすく誘発されると考えられる。この大脳と皮質下構造における発達のアンバランスこそが人見知りを引き起こす、との仮説を検証するため、大脳―皮質下に発現している遺伝子産物の個人差について注目する。たとえば、恐怖行動やストレス応答に関わる遺伝子産物として、セロトニントランスポーター(5-HTT)やモノアミン酸化酵素A(MAOA)が知られている。一方、報酬応答や選択的注意に関わる遺伝子産物はカテコールOメチル基転移酵素(COMT)や、ドーパミン・トランスポーター(DAT)がある。成人におけるこれら遺伝子多型が行動の違いを反映していることは知られているが、乳児における個人差の研究は始まったばかりであり、検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析の準備に時間がかかってしまい、予定の予算執行が難しかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は遺伝子解析を主に行い、予算執行する予定である。
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Research Products
(12 results)