2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24603017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 明 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (80325571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 大輔 久留米工業大学, 工学部, 准教授 (20461543)
竹之内 和樹 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (90207001)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地面効果翼機 / 前進翼 / 省エネルギー |
Research Abstract |
船舶は大量輸送には適しているが、スピード面では陸上輸送や航空機に一歩譲るという印象があるが、海に囲まれ海洋国家とも呼ばれた我が国は、全く新しい輸送機器の提案で、もっと海上輸送を盛んにする事も可能と思われる。それゆえ本研究は、水の抵抗を全く受けず非接触で海面上を滑空し、目的地到着時にスピードが減少すると自動的に着水し、フロート又はボディ等で海上に浮くことができる地面効果翼機の提案を行っている。その背景は、航空機では大きな抵抗となる翼端渦の発生を水面により低減できるうえ、飛行場の様な大規模なインフラは必要なく、距離的には湾や半島の対岸等にも最短の直線距離で移動でき、かつ陸上輸送よりも相当高速が出る地面効果翼機は、まさに日本の地理的環境に最良の移動機器となる可能性があると考える為である。 以上が研究目的の概要であるが、研究背景や目的を具体的に記すと次のようになる。原油価格の高騰・地球の温暖化・大気汚染等が地球規模で大きな問題となっている。それらの対策として、身近な存在でもある自動車の場合は、バイオ燃料、水素燃料、電気、ハイブリッド等の各方面で研究が進み各々対応している。これらは省資源対策として使用エネルギーには着目しているが、自動車(車体本体)そのものは変化していない。それゆえ、地球資源の有効な活用という観点から、エネルギー効率も良く、高速で、かつ経路の自由度(海上のため道路を必要としない)もある、新しいトランスポーテーション(移動機器)に着目した。このような背景から地面効果(グランドエフェクト)を利用した乗り物を提案し、デザインも加味した可動モデルを制作し、それをベースに企業に製品化の可否を問い、最終的に地球のエネルギーを大切に使うことを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地面効果翼機に関する国内外の文献や種々の情報を調査・分析した。国内では鳥取大学の久保研究室の有人機ミュースカイや、旧ソ連ではカスピ海で走行したエクラノプラン、そして中国では大型実験機や同濟大学等の研究を参考にした。特に、関心がある点は着水時の頭上げ(ピッチングモーメント)やローリングモーメントの制御方法と、旋回時に左右両翼が、ある程度水平を保ったままで進行方向を変えられる方法等を見つけ出すことであった。その理由は、一般の飛行機のようなバンクが付いた旋回では、内側の翼が水面に近付き過ぎるためである。しかし、この点については今期の実験では満足する結果が得られていないので、更に飛行実験を繰り返す必要があると認識している。 機体については、初年度は前進翼をもった前衛的なデザインの機体とフロートに特徴のある水上モビリティの様な機体の2機を制作し、飛行実験を行った。 最初に1機目について解説を行う。前進翼の地面効果翼機の研究は、現在まで行われていなかったのでデザイン的な要素も含めたランニングプロトタイプを制作し、Uコン方式で飛行実験を行った。当初は双発のモーターを持つ本機体は、地面効果の影響もあり、飛行が安定しなかったが、水平尾翼の大型化による修正を行った結果、安定した飛行が可能になった。 次に2機目については、飛行データを読み取ることが可能なテレメトリーシステムを導入し、プロペラの回転数による省エネ効果を測定した。この機体も最初はピッチングモーメントの変化が大きく、安定した高度が維持できなかったが、重心位置の調整と翼面積の修正により、安定した飛行が可能になった。 またトランスポーテーション デザインのシンクタンクであるイタリアのベルトーネ社やフランスのED2 デザインセンターの責任者に対し、我々が研究中の地面効果翼機に対する意見を伺った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者と分担者2名は長年、自動車メーカーで研究開発に従事してきた経験があり、車の様に地面(または水面等の空気より硬質なもの)の影響を受ける移動機器の空力データ等の蓄積がある。その経験を生かし、かつ中国や旧ソ連での飛行実験を調査・分析し、操縦安定性等の改善点を洗い出し、風洞用1次試作モデルを製作する。そのモデルを用い地面板をセットした風洞での実験、更にデジタルモデルによる数値シミュレーション(CFD)等を行い、空力特性と操縦安定性の向上を計る。それらのデータをベースに、空力的に理想的な飛行可能な2次試作モデルを作り、さらに未来的なデザインを加味し、最終的に魅力的な移動機器を提案する。 初年度のランニングプロトタイプをベースに、更に研究を進める予定である。具体的にはカナード翼を持った機体を制作し、飛行実験を行う予定である。また、デザイン的見地から専門家の意見も参考にし、魅力的な地面効果翼機の提案に繋げたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の調査・分析結果から、更にスケールモデルをデザイン・制作し、風洞実験を行なう。気流糸やスモークを用いた「流れの可視化」で大まかな渦を把握した後、地面板の影響を考慮しつつ6分力(X.Y,Z各軸の力とモーメント)を測定する。パラメータは、モデルと地面との距離、仰角(アタックアングル)、ヨー角(旋回時等の風に対して斜めに進む角度)0~30°での安定性等を考えている。鳥取大学、大阪府立大学等で研究が行われている為、文献を参考にする。これらの実験の為に、モデル制作費用と実験装置に研究費を使う予定である。 風洞実験ではモデルを必要とするが、CFD(Computational Fluid Dynamics)を用いたデジタルモデルによる数値シミュレーションでは、モデルなしで空力解析ができることを利用し、簡易的に翼端渦の可視化やボディ下面の流れを解析したい。この段階ではリアルモデルではないため、大胆なデザインの前進翼やリフティングボディの提案も行うことができると思われる。このCFDによる実験の為、高性能PCとソフト等に研究費を使う予定である。
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Research Products
(2 results)