2012 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドβ産生を阻害する新奇米由来成分のアルツハイマー型認知症予防効果の検証
Project/Area Number |
24614005
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 貴子 新潟大学, 工学部, その他 (10568413)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / 米 / BACE1 / β-セクレターゼ / アミロイドベータ / 酵素阻害 |
Research Abstract |
アルツハイマー型認知症(AD)は、我が国では65歳以上の20人に1人は発症する深刻な脳疾患である。ADの病因には、脳内でのアミロイドベータペプチド(Aβ)の蓄積が深く関与していると考えられている。Aβは、Aβ前駆体蛋白質(APP)から、β-セクレターゼ1(BACE1)及びγ-セクレターゼにより順次切り出される。BACE1はAβ切り出しの最初に働くため、BACE1活性を阻害すれば、Aβ蓄積予防の効果的な方法となり得る。研究代表者らはこれまでに、米にBACE1阻害成分が含まれることを見出していた。 本年度は、米由来BACE1阻害成分の高度な精製と同定を目標とした。玄米抽出液をまず3k MWCO スピンフィルターを用いて分画し、分子量3 kDa 以下の粗精製画分を得た。この画分を更にOctadecylsilyl silica(ODS)カラムを用いた逆相液体クロマトグラフィーによって分画した。自動分取した各画分のBACE1阻害活性を、蛍光基質を用いたin vitroでのBACE1活性測定系を用いて分析した。その結果、BACE1阻害活性はある特定の画分に含まれることが判明した。この画分を更にシリカゲルカラムを用いた親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)によって分画したところ、複数の成分が含まれることが判明した。現在、更にゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせてBACE1阻害活性を有する成分の高度な精製を行っている。 また、上述の精製とは別に、既知の米由来成分がBACE1阻害活性を有することを新たに見出した。本成分は、培養ヒト由来細胞においてAβ産生を抑制し、細胞毒性を示さないことを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究の目的は、1)米由来BACE1阻害成分の精製と同定、および2)同定した成分の培養ヒト由来細胞におけるAβ産生抑制効果の確認であった。本年度の研究において、各種クロマトグラフィーを用いたBACE1阻害成分の精製と同定は未達成であったものの、既知の米由来成分がBACE1阻害活性を有することを新たに見出した。また同成分は、培養ヒト由来細胞においてAβ産生を抑制し、細胞毒性を示さないことを確認できた。これらの結果から、平成24年度の目的は概ね達成できたと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vitroでのBACE1阻害活性および細胞培養系でのAβ産生抑制効果を示した既知の米由来成分について、APPとBACE1のどちらに作用するかを、アフィニティークロマトグラフィー等を用いて解析する。また、BACE1は、シアル酸転移酵素などAPP以外の基質も切断することが知られている。そのため、上述の既知の米由来成分が、BACE1によるAPP以外の基質切断を阻害するかどうかを、ウエスタンブロットや酵素免疫測定法(ELISA)を用いて検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アフィニティークロマトグラフィーに必要となる樹脂や、APP、BACE1、シアル酸転移酵素などの精製タンパク質、ウエスタンブロットやELISAに必要となる抗体、検出試薬、生化学試薬などの購入を計画している。また、成果を雑誌に投稿するための経費も計上する計画である。
|