2013 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸摂取によるトリプトファン代謝産物キヌレン酸産生制御を介した高次脳機能調節
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24614010
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (50295630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 宏一郎 近畿大学, 工学部, 准教授 (50378668)
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Keywords | 脳環境保護 |
Research Abstract |
トリプトファン代謝産物キヌレン酸が脳で増加すると,ニューロンからのドーパミン分泌を抑制する.アミノ酸はキヌレン酸産生に関与する可能性がある.本研究では,食品栄養学的な観点から,アミノ酸摂取によってキヌレン酸産生を制御し,ドーパミン機能が関与する高次脳機能を調節することを目的とする.平成25年度には,1) in vitro実験におけるキヌレン酸産生を抑制するアミノ酸の特性,2) 行動実験によるキヌレン酸が高次脳機能におよぼす影響の評価を行った. 1) に関しては,平成24年度研究によって明らかにしたキヌレン酸産生を抑制するアミノ酸10種について,大脳皮質切片を用いたin vitro実験を行うことによってその詳細な抑制特性を調べた.アミノ酸濃度とキヌレン酸産生抑制の関係を調べることにより,キヌレン酸産生およびキヌレニン取込みに対する各アミノ酸のIC50を決定し,生理的濃度でキヌレン酸産生を抑制するアミノ酸が存在することを明らかにした.また,キヌレニン取込み抑制とキヌレン酸産生抑制の定量的関係を明らかにした. 2) に関しては,食餌によって脳内キヌレン酸濃度を増加させたマウスを用いて,不安用行動,認知機能,うつ様行動,社会行動におよぼす影響を調べた.高トリプトファン摂取によって,マウスの社会行動低下が認められた.この結果は,食餌によるキヌレン酸産生の増加が高次脳機能に影響をおよぼすことを示唆する.以上より,食事が高次脳機能に影響をおよぼすこと,食事のアミノ酸組成を変えることによってキヌレン酸産生の制御が可能であること,それによって高次脳機能を調節できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,大きく分けて,1) アミノ酸食によるキヌレン酸産生制御,2) 行動実験によるアミノ酸食の評価,から成る.アミノ酸食によってキヌレン酸産生を制御するために,平成24年度にin vitro実験によるアミノ酸のスクリーニングを行い,10種類のアミノ酸にキヌレン酸産生抑制作用があることを明らかにすることができた.さらに,平成25年度には,その10種のアミノ酸について,詳細な作用機構と特性を明らかにすることができた.一方,行動実験によってアミノ酸食を評価するために,平成24年度に行動実験による評価系を構築することができた.平成25年度には,高トリプトファン食を与えた実験動物を用いて行動実験による評価を行い,社会行動低下という現象を観察することができた.以上より,いずれのアプローチにおいても,計画通り,平成26年度の研究に取組むことのできる結果を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 効果の期待できるアミノ酸を含む食餌がキヌレン酸産生におよぼす影響について検討する.in vitro実験でキヌレン酸産生を抑制したアミノ酸をラットに摂取させ,キヌレン酸産生を抑制し,ドーパミン代謝を亢進するアミノ酸を明らかにする. 2. 神経伝達物質の分泌に影響をおよぼすアミノ酸について検討する.in vivoにおいてもキヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸について,当該アミノ酸を多く含む食餌をラットに摂取させ,ドーパミン分泌量を測定する.これにより,キヌレン酸産生抑制を介してドーパミン分泌を亢進するアミノ酸を明らかにする. 3. 高次脳機能に影響をおよぼすアミノ酸について検討する.キヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸を多く含む食餌をラットに摂取させ,高次脳機能を評価するための行動実験を行う.これにより,キヌレン酸産生抑制を介して高次脳機能に影響をおよぼすアミノ酸を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分担研究者の所属変更に伴い,実験動物や実験機材の組合せが新しいものとなったため,予備実験が必要となり,行動実験のセットアップに時間を要した.このため,平成24年度は計画していた実験の一部しか行うことができずなかった.平成24年度の研究費を平成25年度および平成26年度に併せて使用することにした. 平成25年度に計画していたが完了できなかった行動実験を平成26年度に行う予定である.そのため,平成26年度は完了できなかった行動実験と従来より計画していた行動実験を併せて行い,助成金の差額をその行動実験のために使用する.
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Research Products
(1 results)