2013 Fiscal Year Research-status Report
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24616024
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
紀平 知樹 兵庫医療大学, 共通教育センター, 准教授 (70346154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜渦 辰二 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70218527)
大北 全俊 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (70437325)
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Keywords | 脱成長 / サブシステンス / ケア / 自立 / ささえあい |
Research Abstract |
平成25年度は本研究課題の二年目である。今年度の課題は、研究計画にもとづき、1.成長志向社会から定常型社会へと社会が転換した場合に、どのような変化が生じるのか、あるいは生じなければならないかを明らかにすることであり、2.またそうした社会の変化が、ケアに対してどのような影響を与えるかを、特に一対一のケアではなく、むしろ多対多のケアの可能性を考察すること、そして3.そうした関係の中で「自立と支え合い」の両立がいかに可能かを考察することである。 上記のような研究課題を解明するために平成25年度は主として文献研究を通して成長志向社会から定常型社会への転換を導く思想の検討を行った。また地域コミュニティでのケアのあり方について、一般の市民も参加可能な研究会を開催した。 文献研究では、フランスの思想家、セルジュ・ラトゥーシュの「脱成長」という理念を取り上げ、その理念の由来や目指す社会を批判的に検討した。彼の思想はイヴァン・イリイチのコンヴィヴィアリティやサブシステンスといった概念から大きな影響を受けており、またひいてはカール・ポランニーのサブスタンスとしての経済という構想にまでさかのぼって関係づけることができるだろう。しかし彼らの思想は、市場経済の限界を指摘するものとしては非常に鋭いが、その反面、現代の社会の中でいかにサブシステンスを確保することができるかということが問題として残り続けている。 研究会としては大阪、神戸、京都で地域に根ざしたケアの活動を行っている方と富山で「ものがたり診療所」を開設している佐藤伸彦医師をお招きして、在宅での看取りについての講演会を行った。また第二回目の研究会としては、東日本大震災以降も仙台で哲学カフェを開催している西村高宏氏をお招きして、「被災地における「哲学的実践」とケア」というテーマで活動についての報告をしていただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで二年間の研究で、定常型社会に関する諸問題(持続可能性論争、成長志向社会から定常型社会への移行条件の問題)やケアを支えるシステムの問題は、一定の成果を上げつつあるといってよいであろう。その反面、医療組織におけるケアの問題について十分考察ができているとは言いがたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究課題の最終年度であり、「市場と社会」、「ケアと社会」、「ケアと市場」という三つの関係をまずは明らかにしつつ、それら三つの関係が相互に関わり合うことを明確に意識しながら、定常型社会におけるケアのあり方についての一定の方向性を描くことが課題である。 それぞれの研究テーマは主として文献研究によって行われるものであり、まずは先行研究の批判的読解が必要である。しかし文献研究にとどまらず、平成25年度もおこなったが、実際にすでに地域や社会で実践させている様々な取り組みに関する調査が必要である。在宅や地域でのケアについては平成25年度の調査に加えて異なる地域での実践など、さらなる調査を行う予定である。他方で、医療組織内でのケアに関する問題が十分考察されていないので、そうした組織内部の問題を積極的に調査する予定である。この問題に関してもまずは文献などによる調査を行い、できれば聞き取り調査も加えて研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題の二年目に計画していた、医療職従事者に対するインタビュー調査予定通り行うことができず、そのために見積もっていた謝金、旅費などが未使用のまま残ってしまった。 最終年度である、平成26年度は、これまで実施できていなかった医療従事者に対する聞き取り調査を行い、計画書通りの研究費の執行を行う予定である。 また平成26年度は最終年度であるので、これまでの研究の成果を論文集のような報告書の形で残すことを計画しているので、編集、印刷、郵送費用などにも使用する予定である。
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Research Products
(6 results)