• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2014 Fiscal Year Research-status Report

定常型社会におけるケアとそのシステム

Research Project

Project/Area Number 24616024
Research InstitutionHyogo University of Health Sciences

Principal Investigator

紀平 知樹  兵庫医療大学, 共通教育センター, 准教授 (70346154)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 浜渦 辰二  大阪大学, 文学研究科, 教授 (70218527)
大北 全俊  東北大学, 医学系研究科, 助教 (70437325)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2016-03-31
Keywordsナラティブ / 尊厳死 / 超高齢社会 / リスク / パブリックヘルス / HIV
Outline of Annual Research Achievements

平成26年度は、これまでの研究成果を総合し、定常型社会におけるケアのあり方について一定の見解を打ち出すべく、研究代表者、分担者が研究を推進した。
まず6月には研究会を開催し、研究分担者の浜渦が「尊厳死を法制化するとは?~ヨーロッパでは~」というタイトルで発表を行った。この発表の成果は『メタフュシカ』に掲載されている。その他の発表者としては中岡成文氏に「定常型社会は<すこやかさ>をどうデザインするか―『養生訓』とその時代」というタイトルで、また屋良朝彦氏には「哲学カフェで死生学?」というタイトルで発表を依頼し、定常型社会における健康や死や生のあり方について情報提供していただいた。また9月には「ケアの臨床哲学研究会」、患者のウェルリビングを考える会との共催で「超高齢社会のなかで成年後見制度を考える」というシンポジウムを一般市民の参加も募り、行った。
研究代表者の紀平は終末期医療における重要な問題である全人的苦痛に関する批判的研究を行った。その成果は以下の通りである。一般的に「全人的」といわれる場合の「全体」というものの理解について、近代科学の基本的傾向である要素還元主義的な理解では、その「全体」の本来の意味が失われてしまうということを明らかにし、「全人的苦痛」を理解するためには苦痛を一つの物語として理解する視点が必要であることを明らかにした。また研究分担者の大北は、HIV予防のための倫理的フレームワークについて考察した。この研究は、定常型社会におけるケアの「システム」を考える上での基盤となることが予想される。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成26年度は、これまでの成果を踏まえて紀平が「社会と市場」の関係を、浜渦が「ケアと市場」の関係を、そして大北が「ケアを支える社会」のあり方についての研究を推進し、それらの成果を総合して、「定常型社会におけるケアとそのシステム」について一定の見解を打ち出す予定であった。
定常型社会を見据えた上での社会と市場の関係については、カール・ポランニーの指摘にもあるように、経済システムに埋め込まれた社会を、再び逆転させ社会の中に経済を位置づけることが必要であることは明らかであるが、しかし、現在のようにあまりにも経済システムが広く浸透した社会においては社会の中に経済を埋め込むための新たな語彙体系の創出が必要であることが明らかになり、その点で当初の計画から遅れが生じている。また、ケアを支える社会システムのあり方についても、組織としてのケアのあり方に関する研究を推進するためにインタビュー調査が必要であったが、適切な施設との交渉が進まずインタビューができなかった点で、当初の研究計画から遅れが生じてしまっている。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題は平成26年度が最終年度の予定であったが、上記のような遅れが生じたことにより、補助事業期間延長申請を行い、承認された。したがって、平成27年度が最終年度となり、これまで残されている研究を実施し、最終的に定常型社会におけるケアのあり方について、一定の方向性を見いだしたいと考える。
そのためには、「現在までの達成度」にも記載したが、経済成長を中心にして編まれた社会システムを手説に批判することができる語彙体系の創出が必要である。この点に関しては、セルジュ・ラトゥーシュの「ポスト開発」論や「脱成長」における「想念の脱植民地化」の議論を参考にすることができるだろう。また「ケアを支える社会システム」のあり方については、北欧のケアシステムを参照にすることができるであろうし、組織におけるケアの問題に関してインタビュー調査や文献調査によって、一定の方向を見いだしたいと考えている。
以上のような研究を遂行することでこれまでに達成できなかった研究目的についても、一定程度の成果を得ることができるのではないかと考える。

Causes of Carryover

平成25年度にインタビュー調査を行い一対一のケア関係と多対多のケア関係について比較考察を行う予定にしていたが、適切な施設及び患者との交渉が進まず、調査時期が遅れ、その調査のための謝金や交通費などが未使用額となった。
また、経済を中心に編成された社会に変わりうる社会を語るための概念の創出が本研究では不可欠であるが、この点に関する検討を行うための資料購入ができていないため、未使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究計画に従い、健康転換によってケア関係がどのように変化したかに関するインタビュー調査を行う予定であり、そのための旅費や謝金として使用する予定である。もしも適切な施設が見つけられない場合は、組織におけるケアの問題に関する文献資料の購入によって、インタビュー調査の補完とする。
また経済中心の社会に変わる社会のあり方に関する調査を行うために、文献資料の購入を予定している。

  • Research Products

    (5 results)

All 2014

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 2 results)

  • [Journal Article] 物語としての全人的苦痛2014

    • Author(s)
      紀平知樹
    • Journal Title

      兵庫医療大学紀要

      Volume: 2 Pages: 7-17

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] Uncertain risk, Public Health, and Ethics: Considering the Ethical Framework for HIV Prevention Strategy2014

    • Author(s)
      大北全俊
    • Journal Title

      Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine

      Volume: 8 Pages: 61-87

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 尊厳死を法制化するとは、何をすることなのか? ―日本とヨーロッパ3国の比較考察―2014

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Journal Title

      メタフュシカ

      Volume: 45 Pages: 1-14

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 事前レクチャー「いつかくる死のことを考えておきたい」2014

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Organizer
      第22回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会
    • Place of Presentation
      神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)
    • Year and Date
      2014-07-12
    • Invited
  • [Presentation] Caring and Phenomenology-From Husserl's Phenomenology of Intersubjectivity2014

    • Author(s)
      浜渦辰二
    • Organizer
      The 6th International Conference of P.E.A.C.E
    • Place of Presentation
      The Chinese University of Hong Kong(Hong Kong)
    • Year and Date
      2014-05-23
    • Invited

URL: 

Published: 2016-05-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi