2015 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロニアル状況における「在日」の知の現在―その「独自的普遍」を問う
Project/Area Number |
24617001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真鍋 祐子 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00302258)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 在日コリアン / 韓国民主化運動 / キリスト教 / 知識人 / 日韓連帯 / 独自的普遍 / 済州島 / 慰安婦問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年度からの本研究期間の途中に韓国大統領選挙があり、2013年1月に朴槿恵政権が誕生した。2014年4月のセウォル号沈没事故以降、遺族たちの真相究明運動に対する弾圧、歴史教科書国定化の強行、慰安婦問題をめぐる2015年の「12・28日韓合意」とこれに反対する勢力への弾圧など、「民主化が30年後退した」ともいわれる強権的な政権の性格があらわとなってきた。一方、日本では在日コリアンに対するヘイトスピーチが社会問題化している。いずれも歴史認識のあり方が問われる局面である。 本研究計画は、70~80年代の韓国民主化運動に対する在日コリアン知識人(主に二世)の役割に焦点をあて、その礎として60年代以降の在日系論壇における在日コリアン知識人(主に一世)との論点の連関性を見るとともに、そうした「知」の系譜が本研究の中心的課題である三世を中心とした中堅研究者たちにどう引き継がれてきたかを考えるものであった。研究方法としては聞き取りなど従来の質的調査の他、SNSを通じた情報収集を取り入れた。 二世を中心とした場合、セウォル号遺族や白南基氏事件(2015年11月のデモで放水射撃を受けて意識不明の重体にある農民)への連帯意識、キリスト教会との結びつきなど、70~80年代の日韓連帯をモデルとした政治参与が見出された。また済州出身者が多い在日社会で、朴政権下でのニューライト勢力による四三事件の貶価を機とし、金時鍾、金石範という一世の文学者を結節点に、独自の歴史認識に根差した済州との連帯意識が見出された。 さらに、韓国と日本の両国社会の反動化の流れの中で、特に焦点化されたのが、慰安婦問題および朴裕河『帝国の慰安婦』の評価をめぐって、日本の知識人と一線を画した在日コリアンの中堅・若手研究者たちの存在である。これは彼らの「独自的普遍」が孕む日本論壇へのインパクトという点で今後も注視すべき課題である。
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Research Products
(2 results)