2013 Fiscal Year Research-status Report
『北の国から』と富良野――メディアコンテンツと地域文化・社会のエスノグラフィー
Project/Area Number |
24617012
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
大月 隆寛 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (40185327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 顕宏 札幌国際大学, 人文学部, 准教授 (20337083)
坂梨 夏代 札幌国際大学, 人文学部, 講師 (40448832)
武井 昭也 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (50289683)
横田 久貴 札幌国際大学, 観光学部, 准教授 (50535127)
飯田 俊郎 札幌国際大学, スポーツ人間学部, 教授 (60254736)
菊地 暁 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (80314277)
赤川 智保 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 准教授 (80438407)
吉岡 精一 札幌国際大学, 人文学部, 講師 (90438408)
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Keywords | 民俗学 / 大衆文化 / 観光 / 地域振興 / 北海道 / カルチュラルスタディーズ / メディアコンテンツ / 精神史 |
Research Abstract |
初年度の基本的な方針調整と基礎資料収集、それらの上に立った資料収集と整理、およびそれぞれの分担作業を具体的に行っている。メディアコンテンツとしての「北の国から」と作者倉本聡に関する基本的な資料は、当該作品や作者の著作物はもとより、関連する各種報道や雑誌なども含めた同時代資料を中心に東京その他、北海道外の専門的図書館なども利用しながら収集、整理を行い、利用の便宜を図った。同時に、テレビドラマとしてのコンテンツの特性を考察するための周辺資料についても、紙媒体のみならず映像資料なども含めて必要に応じて収集を行った。これらは専門分野や関心の異なるチーム内部の全体的な問題意識や理解の前提を準備することにも役立っている。また、地元富良野の地域社会に関する基本的な資料についても、地元郷土史や地域史なども含めた基礎的資料の検索、整理を行い、前期資料群と相関させながら利用するための目処を概ね立てた。これらもチーム全体の理解に寄与している。 それぞれの分担分野においては、個々の研究者の裁量に従い具体的な作業の進展を行っている。倉本聡についての文学的な視点からの予備的な考察は、共同研究者からの中間的な報告も公刊された。また、メディアコンテンツとしての検討考察を通じて、「北海道」自体がどのようにそれら大衆社会状況とそれを前提にしたメディア複合のステージで語られ、描写され、意味づけられていったのかという副次的な課題がクローズアップされてきたのは、ひとつの中間的成果だと言える。当初の予想以上に、単に地元富良野のみならずそれも含めた「北海道」というイメージの変貌に当該コンテンツが大きな影響を及ぼしているらしいことが改めて見えてきたことは、メディア複合が重要なリアリティ形成のセクターを担う今日的な大衆社会状況下での「地域」「地元」イメージ形成のありようについて、興味深い事例になるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的な資料の収集と整理については概ね予定に従った達成がなされている。また、それらに実際にあたり、内容を検討することもそれぞれの分担分野に応じて作業が行われており、分野ごとの理解とその共有がある程度まで進んでいる。特に、メディアコンテンツとしての「北の国から」が1970年代から80年代にかけての同時代状況においてどのように受け取られ、語り直され、大衆社会状況での意味づけがされていったかという点については、いくつかの重要と思われる発見と大衆文化研究という側面からも新たな視点が設定できたと思われる。また、それらを踏まえた「北海道」という地域の意味づけられ方や、そことの関係で地元富良野がどのように地域としてのセルフイメージを変貌させていったかについても、概ねの経緯を把握することができた。ただ、現状ではそれぞれの分担分野における進捗状況に差があること、全体的な検討や討議の前提がまだ十分に調整されているとは言えない部分があること、など最終年度のとりまとめと具体的な作業に向けての課題がいくつか確認できているので、それらの解決に向けて全体として注力したい。予算規模と関わる人数のバランス等、具体的な作業に制限があるのは当初から理解していたが、現在までのところ、それらの制約にも関わらず可能な作業は概ね行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度であり、総合的な研究成果のとりまとめに向けて、進捗状況に遅れの見られる分担分野を中心に作業の進展を促し、同時に全体的な作業の検討とそれに基づいた討議の過程を具体的に持てるようにまず準備する。地元における「北の国から」の受容のされ方とその波及効果についての取材・調査、とりわけ行政も含めた「観光」コンテンツとしての地元のとらえ方の具体的な経緯などの理解にまだ不十分なところがあると思われるので、それらの部分の補足を重点的に行うことを分担者のみならず、できる限りチーム全体でフォローアップしながら行いたい。特に、政策的な受容にからむ部分は実際の担当者その他地元の人間関係や利害など、微妙でデリケートな問題が当初予想されていた以上に具体的にからんできているので、そのあたりのコンプライアンスも含めた判断も適切に行いながら作業を進めたいと思っている。その上で、チーム全体での検討、討議の場を設定し、とりまとめに向けての作業を進めたい。その際、できれば地元富良野のインフォーマントなども積極的に交えた検討のあり方も考えつつ、当初の意図のひとつでもあった地域・地元に還元できるチャンネルにも配慮した研究成果の報告・広報ということを可能な範囲で具体的に考えてゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
取材・調査における協力者への謝礼、資料収集・整理作業の補助者への謝金等を想定して予算措置してあった人件費等が、これまでの作業において各研究分担者の協力および予算負担の軽減の努力などもあり、当予算から執行する必要がないまま留保されてきたこと。および、最終年度の成果報告・広報なども含めて全体的な会議やそのための下準備を想定して措置してあった旅費の留保が残っていること、による。 今年度の計画で触れたように、最終年度における予定作業の中で適正かつ有効に使用し、執行するよう準備中である。
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Research Products
(1 results)