2014 Fiscal Year Research-status Report
異文化環境における「人生紙芝居」の有効性:コスタリカでの実証研究
Project/Area Number |
24617014
|
Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
糟谷 知香江 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 准教授 (30337274)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ナラティブ / 移民 / 国際協力 / 心理学 / 紙芝居 / コスタリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は以下の2点を目的に、近隣国からの移民と難病患者を対象としてコスタリカにおける調査を実施した。 (1)「人生紙芝居」の制作事例を重ねる (2)マイノリティへの理解を促進するための教材として「人生紙芝居」を活用する (1)については、本年度の調査対象者は高等教育レベルの学歴を有する者であった。日本では紙芝居は主に幼児教育に用いられており、子どものためのものというイメージが強い。本研究の対象者たちが紙芝居をどう受け止めるかという点に特に着目したが、「異文化のもの」として好意的に受け止められることが確認された。また、人生紙芝居の制作過程における試みとして、脚本と作画に対象者の意見を積極的に取り入れるようにしたところ、彼らの主体的参加が促された。現地調査においては様々な制約があるため、この方法を全ての事例に適用できるわけではないが、人生紙芝居の制作を通した共同作業には対象者をエンパワーする効果もあるのではないかという洞察が得られた。 (2)については、難病患者の紙芝居を使用し、この難病について研究を行っているコスタリカ大学微生物学部の研究グループの協力の下、小学校で上演会を実施した。対象となった小学校には患者が在籍しており、病気に対する理解を深めることで患者が学校生活を送りやすくすることを目的とした。上演会での子どもたちの反応について観察を行ったところ、紙芝居に対して関心を示し、紙芝居の図版が患者の抱える生活上の困難を理解しやすくしたようであった。また、子どもたちの発言から、患者に対するいたわりと共感の気持ちの芽生えを伺うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度の課題は、マイノリティに対する理解の促進に「人生紙芝居」が役立つか検討することであった。コスタリカ大学の研究グループの協力により上演会を実施し、一定の成果を上げることができた。しかし、上演会の実施にあたっていくつかの制約があり、当初計画とは異なる方法で観察データを収集することになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の調査地であった首都近郊スラムで治安状況についての懸念が生じたため、25年度から調査地を変更しており、研究計画の一部にも変更が生じている。研究成果の公表について当初計画を見直し、27年度は「人生紙芝居」技法が持つ心理的効果について理論的検討を進め、公表する予定である。また、当初計画の内容に近づけるために、コスタリカで継続して調査活動を行う。なお、調査地の変更は多様な調査協力者の獲得につながっており、この技法の洗練と理論化に寄与する知見が得られている。
|
Causes of Carryover |
現地の治安状況の変化を考慮して、調査地を当初計画から変更した。これに伴って、調査に要する費用および研究協力者への謝金が当初の見積と異なってきている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度に計画していたコスタリカにおける調査内容の一部を27年度に延期したため、調査に関わる費用に充てる計画である。
|
Research Products
(1 results)