2012 Fiscal Year Research-status Report
要求工学の応用による,法とその解釈のモデル化・分析
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24650017
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
石川 冬樹 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (50455193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河井 理穂子 埼玉工業大学, 人間社会学部, 講師 (10468548)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 要求工学 / ゴール指向要求分析 / 法律 / 法解釈 |
Research Abstract |
法が定める権利や義務を考慮して組織運営や情報システム構築・運用を行う際には,曖昧な文言で定義された法そのものに加え,判例などで順次与えられる,より具体的な解釈を考慮する必要がある.本研究においては,属人性を可能な限り排除して系統的に分析を行い,また変更の追跡を可能とする要求工学のアプローチを活用し,法やその解釈のモデル化・分析手法を構築する.これにより,自動化が困難で人が行う部分も含めて可能な限り知識・経験によらず,非専門家が法解釈に関する専門家の議論を理解したり,自身で分析・判断をしたりすることができるようになる.また新たな判例が現れた際などに,その影響範囲や必要な対応を同定することも可能となる.このように工学的観点を交え,幅広い人々が法の曖昧さの本質と向き合うことを支援する. 当該年度においては,著者らが以前に示した初期アイディアを踏まえ,法とその解釈に関するモデル化手法を構築した.分析目的は以前と同様,既存の判例への照らし合わせ,ゴール指向要求分析モデルとの連動という2つに絞った.拡張を行った点としては,実際の判例に存在する様々な詳細化を表現できることに取り組んだ.基本的な考え方としては,ゴール指向要求分析手法における,抽象的なゴールから具体的なゴールへの詳細化関係と同様のモデル化を行う.すなわち,法に現れる文言と,解釈により,より詳細化された具体的な文言との関係を記述する.この際に,必要条件や寄与条件など,様々な種類の情報の追加による詳細を区別するようにした.また,法に現れる単語同士を組み合わせて意味のある要件を構成する方法も検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の初期アイディアにおけるモデルは,必要条件の追加のみを考える単純なものであった.これに対し,既存判例に実際に現れる詳細化のボトムアップの分析,および論理学の観点からのトップダウンな分析の双方から検討を行い,十分条件,寄与条件,例示など他の種類の情報による詳細化も導入することができた. ただし,次年度の実証のための題材整理,包括的な手法やツールの構築など,計画内容に留まらずに取り組む潜在的な方向性は見えていたが,大きな進展を具体的に生み出すには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,本研究の提案モデルを情報システム開発・運用の観点から活用する方法について議論を進めてきた.これに限らず,法学における比較的単純な分析に利用する分析,もしくは高度な分析・議論に利用する表現にも活用することを検討する.題材としては,EUのプライバシー保護指令の改定予定も踏まえ,プライバシー・データ保護に関する様々な国の法律の比較などを題材として取り組んでいく. また,本研究において構築したモデル化・分析手法について評価を行う.特に,既存の判例などを用い,主に法の専門家が入力した情報・知識・議論に対し,必ずしも法の専門家ではない開発者などによる活用を,分析を行う際の容易さ,正確さ・妥当性などの観点から評価する.理論および実証の双方の観点からの評価を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表,および成果活用と評価のための準備などに活用する.
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Research Products
(2 results)