2012 Fiscal Year Research-status Report
拍動心筋細胞を用いた後天的情報の獲得保持機構の解明
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24650253
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
金子 智行 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (90345067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋細胞 / 細胞外電位計測 / 拍動周期 / 後天的情報 |
Research Abstract |
細胞内に蓄えられた後天的情報を定量化することにより、後天的情報の獲得保持機構を解明することを目的として、心筋細胞の拍動周期とイオンチャネルの機能レベルでの発現量を同時計測する系を確立し、摂動を与えたときの緩和過程を観察することにより細胞内に蓄えられた後天的情報の獲得保持機構を明らかにすることを目指している。初年度は心筋細胞に対する電気刺激応答の基礎データを取得した。従来の刺激方法である両極性の矩形波による電気刺激のプロトコールを見直し、短パルスの刺激を連続して負荷することにより、より低電圧での刺激応答性を確立することに成功し、Japanese Journal of Applied Physics紙において発表した。予定していたマウス心筋細胞の他にヒトES細胞由来心筋細胞塊においても電気刺激に対する応答性を測定し、刺激応答時の拍動周期の変化を捉えることに成功した。また、刺激周期を変化させることにより、心筋細胞塊の拍動周期を制御することにも成功し、刺激周期に同期させて拍動させることが可能となった。これにより、心筋細胞塊の拍動周期が自立拍動から強制拍動周期に応答していくときの拍動周期の変遷や電気刺激を終了した後の自立拍動周期に戻っていくときの変遷も観察することに成功した。今後、これらの拍動周期の変遷を解析することにより、拍動周期という心筋細胞の持つ後天的情報の獲得保持機構の解明を進めていく予定である。さらに、その時の細胞外電位波形からイオンチャネルの動態を推測することを試みていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスやラットから単離した心筋細胞を用いて実験を遂行する予定であったが、ヒトES細胞から分化した心筋細胞が市販される段階となっており、より応用研究に近づけるためにヒト心筋細胞による実験を試みた。ヒトES細胞由来心筋細胞は細胞塊の状態で提供されるため、電極からの電界方向(Z軸方向)に細胞が積み重なっている状態である。このため、電極からの刺激電位に応答しやすく、低電圧で長時間刺激することが可能となった。さらに電気刺激のプロトコールを改良することにより、より低電圧で低侵襲的な刺激が可能となった。しかし、当初予定していたマウスやラット心筋細胞を用いたネットワークパターンを変化させた場合の応答反応については、ネットワークパターンによる変化は見られず、電界方向の距離に依存した応答反応が見られたのみであった。そのため、心筋細胞の後天的情報として心筋細胞塊の拍動周期に焦点を当て、その拍動周期の変化を計測することとした。その結果、ヒトES細胞由来心筋細胞塊における電気刺激による拍動の制御が可能となり、初年度にして電気刺激周期と心筋細胞拍動周期の同期化過程や電気刺激終了後の緩和過程を測定することに成功した。この現象を解析することにより、心筋細胞の後天的情報の獲得保持機構の一端が明らかになることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年4月に医科歯科大学から法政大学に異動し、動物実験が不可能となったが、幸いにも医科歯科大学と法政大学は電車で1時間強の距離にあり、医科歯科大で単離したマウス心筋細胞を移送することはそれほど困難であるとは考えていない。また、法政大学ではニワトリ胚からの心筋細胞の単離を計画しており、サンプル細胞のバラエティが増えることが期待される。また、計測装置等は医科歯科大学から貸与されることとなっており、計測についても問題ないと考えている。しかし、計測装置やサンプルの移送等により若干の実験計画の遅れも心配されるが、法政大学の方で配属された学生が25人もおり、医科歯科大学での2人に比べて大幅に増加しており、学生の力を借りて研究を推進させることも可能となっている。また、すでにヒトES細胞由来心筋細胞塊の実験データは取得済みであり、解析に時間を要しているが、この解析結果から新たな知見が発見できるのでは無いかと期待される。今後はこのデータ解析を進めるとともに、ニワトリ胚やマウスから単離した心筋細胞を用いて拍動制御した心筋細胞集団と制御していない心筋細胞集団の拍動同期過程を観察することにより、獲得した後天的情報の大きさを見積もることにチャレンジしていく予定である。また、細胞外電位計測によるイオンチャネルの動態と拍動周期の関係についても計測、解析していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(27 results)