2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650345
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秡川 友宏 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90324326)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 視覚障碍 / 商品情報提供基盤 / パッケージ |
Research Abstract |
申請者らは、視覚障碍者が自らバーコードをスキャンすることで人の目を借りずに商品名を知ることを可能とする取り組みを進めている。運用8カ月で利用者は480名を突破し、ADLとしての商品識別には視覚障碍者の関心がきわめて高いバーコードは、パッケージ印刷と同時にマーキングできるという圧倒的なコスト合理性を有するため、あらゆるメーカに受け入れられ流通しているが、視覚障碍者自身がスキャンすることは当然容易でない。申請者らは視覚障碍者の商品識別に必要となる情報技術およびその周辺技術を明らかにし、(1) 端末の改良,(2) パッケージの工夫,(3) 情報の充実 の3つの側面から、視覚障碍者自身のバーコード利活用モデルを構築する。 (1) 端末の改良: 端末は、読み取り性能および情報交換機能の改善を行う。これは (3) ,(2) とともに並行して行い、平成25年度前期までにいくつかのプロトタイプを完成させる。 (2) パッケージの工夫: 申請者らは、量産コストを増やさずにバーコードの位置把握を可能とするいくつかの方式をすでに提案しており、もっとも検討が進んでいる紙箱からパッケージの試作に着手する。視覚に障碍のある参加者に評価協力を求め、箱の組み立てや強度への影響など、製造・流通面からも特質を多面的に分析する。 (3) データの充実: 筑波大学内にサーバを構築する際、現在までの取り組みで必要性がわかっている調理法データベースを「調理法・アレルゲンデータベース」としてDBMSに作り込んでおく。調理法・アレルゲンの初期データは、製品を入手し、メーカの許可を得たうえでパッケージの説明文を地道に手入力することで提供する (これはメーカがはじめて協力する際の敷居を下げる意図である) 。 得られる情報技術・周辺技術そのものやそれらの連携のあり方は無論、研究期間終了後も運用を続けるシステムが成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 端末の改良: 端末は、読み取り性能および情報交換機能の改善を行った。これは(3) ,(2) とともに並行して行った。計画通り、次年度前期までにいくつかのプロトタイプを完成見込みである。情報交換機能とは、データベースに存在しないデータをユーザ間の互助で補える機能である。これはTwitterと中継用のbotプログラムにより実現した。読み取り性能の改善については、携帯電話のファームウェアには手を入れられないため、計画通りPC上の画像処理ライブラリで模擬的に行った。 (2) パッケージの工夫: パッケージは、箱,袋 (自立するもの/しないもの) ,柱などに分類できる。協力者である包装専士との協業で、現在もっとも検討が進んでいる紙箱からパッケージの試作に着手した。これは視覚に障碍のある参加者に評価協力を求めるのみならず、数値評価・印象評価についても完了し、これに基づく見本パッケージを、東京ビッグサイトで開催されたTokyo Pack 2012 (東京国際包装展) の大日本印刷ブースにソフトとともに出展した。 (3) データの充実: 現在までの取り組みであらかじめ必要性がわかっている調理法データベースを「調理法・アレルゲンデータベース」としてDBMSに作り込んだ (アレルゲンをあわせて格納できるようにしておくのは、より切実な情報を抱き合わせ、メーカにデータの提供を促しやすくしたり、将来、厚労省,消費者庁などで公的にデータベース整備事業を立ち上げやすくする意図である) 。 端末の改良については予定通り次年度前半にかけ完了の見込み。パッケージについては、次年度に予定していた評価までを15名の協力者により先行し、いずれの触知加工でも30秒を要せず読み取り可能であることを実証。データの充実は約300種類の商品については調理法情報を提供している。以上から概ね予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 端末の改良: 携帯電話は持ち運びが手軽であることから、商品識別のデバイスとしては捨てきれない。携帯カメラによる撮像では、バーコードを読むためにパッケージから携帯を浮かせなければならないことが距離感をつかみにくく問題となっているから、東芝モバイルディスプレイのインプット・ディスプレイ,シャープの光センサー内蔵システム液晶など、液晶画面が面スキャナになる入力デバイスを用いた接触方式など、高性能のスキャンエンジンを携帯電話に内蔵することの可能性について積極的に取り扱う。 (2) パッケージの工夫: 携帯電話による読み取りは、バッテリライフとの兼ね合いで、画像処理を無闇に高速にすることが難しい。位置がある程度特定できれば読み取りは容易になるが、厚盛り印刷,紫外線硬化インクなどの特殊印刷により触知加工をするためには追加コストが伴い、メーカの広い支持が得にくい。このために検討した平成24年度の箱製品について評価結果をとりまとめ、メーカに対する公開提案を行う。また、柱状,袋状包装についても、これと親和性の高いかたちでパッケージの設計ならびに試作を行う。 (3) データの充実: データの入力がいつまでも手打ちでは、次々と登場する新製品に追従できない。協力メーカが増え、実績と信頼を得たのちに、JANコードデータベースがそうしているように、電子的データ提供への移行を (交換フォーマットを含め) メーカとともに検討する。また、吸い上げたニーズに対して有用性が期待できるものは、メーカに協力を求めるなどしてデータセットを部分的に用意し、その有用性の評価を行い提言への根拠とする。 平成25年度はこれらに加えて、研究結果をまとめ公表する。構築したサーバおよびクライアントソフトは平成25年度以降も継続して運用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度予算は、接触式面スキャナのデバイスを購入し、端末の改良を行う。また、箱以外のパッケージを設計し、試作を行う。また、データ投入,成果報告経費ならびそれに伴う旅費に充当する。
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Research Products
(2 results)