2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
満渕 邦彦 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50192349)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電磁心臓電池 / 生体埋め込み型デバイス |
Research Abstract |
心臓の拍動の機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換し、これを電源として生体内埋め込み型のセンサを駆動するシステム構築の予備的実験として、高磁場の永久磁石を用い、in vitro で人工心臓血液ポンプシステムを用いて発生させた電解質液(生理的食塩水)の流れ(定常流及び拍動流)による電磁誘導(フレミングの右手の法則)により、流体の流れ、および、印加した磁場の両者に垂直な方向に起電力を発生させ、実際にどの程度の起電力の生成が可能かについて検討を行なった。最初、遠心ポンプを用い、定常流での実験を行なったが、その際は流量に依存した起電力の変化がほとんど得られなかったのに対し、人工心臓ポンプによる拍動流を用い、表面磁場 0.39 [T] の永久磁石を用いて、ピーク流量8 [l/min], 10 [l/min] で生理食塩水を流した際の電極間での起電力は 5.0 [mV], 6.3 [mV] であり、ほぼ理論的計算値の86~88%の起電力が得られた。また、この電極対と長軸方向に 20 mm 離して、もう一つ電極対を設置し、この2つの出力を直列に接続してみたが、電位差が加算されるという結果は得られなかった。定常流では拍動流と異なり、ほとんど起電力が得られなかった原因として、我々は、電極と電解質液の界面において電気二重層が形成され、これが関与している可能性を考えていたが、2つの素子の出力(起電力)を直列に接続する実験で、その起電力がほとんど加算されなかったことから、電気二重層の形成が関与している可能性に関しては再検討中で、現在、昇圧回路(チャージポンプIC)のドライブに必要な電圧は 0.3 [V] 程度であり、起電力をこの電圧値まで上げる事を目標に、電極対を複数個(多数)設置し、これを直列に接続して生じる電位差を大きくするという手法、また、その他の手法について、さらに検討を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定では、平成24年度では、電磁血流計様式の発電素子を設計・作成し、そのin vitro 性能評価実験行なうと共に、うまく行けば、作成したシステムをヤギの大動脈に装着し、1か月程度の慢性埋め込み in vivo 実験を行ない、起電力、発電能力等のデバイス側のパラメータ、および、循環動態の変化の記録を行なう計画であり、これに対して、平成25年度は、システムの in vivo 埋め込み実験を中心に研究を行なう計画で、平成24年度の in vitro 性能評価実験において解決できなかった事項がある場合には、必要に応じて、in vivo 埋め込み実験と並行して、当該の in vitro 実験も継続して進めて行く予定であった。平成24年度の進捗状況としては、電磁発電素子の設計・試作、および、そのin vitro 性能評価実験に関しては、ほぼ計画・予定通り進める事が出来たが、(起電力の小さい)個々の発電素子を模擬血管に多数配置し、これらを直列に接続する事により、起電力を大きくする試みについて、満足し得る結果が得られておらず、平成25年度に、この問題を解決する必要があり、素子の直列接続のみでなく、化学的な反応を利用した系、その他、種々の手法により起電力の増幅を試みる予定である。また、平成24年度は、起電力の増幅系の問題の解決を図る事を優先させたため、in vitro 実験は実施しなかったが、一応、現時点では、想定範囲内の進捗状況と考えており、平成25年度には、in vitro 実験、および、in vivo 埋め込み実験を、平行して実施して行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、昇圧回路(チャージポンプIC)のドライブに必要な電圧は 0.3 [V] 程度であり、起電力を最低でもこの電圧値まで上げる必要がある。個々の発電素子については、理論値の80%以上の起電力が得られているので、原理的には磁場の強さを大きくすれば、電極間に生じる起電力は大きくなり、単一の素子でも、計算上では、流量を 6 [l/min] 、血管の直径を15mm とした場合には、磁束密度を45 [T] にすれば 0.3 [V] の電位差を発生させる事が出来る。しかし、実際にはこのような超強力な磁場を印加する事は困難で、印加する磁場の強さはある程度の強さに抑え、電極対を複数個設置し、これを直列に接続して生じる電位差を大きくする等の方法が考えられるが、この際、流路方向に配列した電極列の隣り合う電極の短絡が問題となる。実際に、今回、複数の素子を設置し、これらを直列に接続した実験では、この手法によって個々の電位差が加算されるという結果は得られなかった。これからの研究の推進方策として、前述の電気二重層の形成も関係するが、隣り合う電極間距離をある程度大きくする事により、対処する事が可能かどうか、さらに検討を行ない、電磁誘導発電素子の直列化を図ると共に、化学的な手法等により、起電力を増幅させる事も試みる予定である。また、これと並行して、システムの in vivo 埋め込み実験を進め、慢性埋め込み実験を行ない、デバイスの性能評価を行なう予定である。当面の目標は人工心臓血液ポンプおよび駆動装置を用いたin vitro 実験。および、in vivo 実験で、発生した起電力によりLEDを点灯させる事に置いているが、システムを作動させた場合の起電力等のデバイス側のパラメータを測定すると同時に、循環動態の変化の記録も行ない、デバイスの作動に伴い、心臓に加わる負荷に関しても検討を加える予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に必要な費用は、in vitro 実験系、および、in vivo 実験系における物品費が主なもので、発電素子やin vitro 実験に用いる模擬循環回路の作成に必要な費用、in vivo 動物実験に用いる医薬品、医用器具類、および、実験動物(ヤギ)の購入などに必要な費用などが主たるものである。 また、発電素子の起電力は個々では微小なため、これを昇圧回路のドライブに必要な電圧まで増幅する必要があるが、その手法に関する情報の収集を目的として、関連する研究を行なっている学会への参加や研究室への訪問を行なう予定で、そのための旅費を予定しており、また、研究成果の発表のための学会・研究会等への旅費・参加費も予定している。 その他には、素子の作成、実験補助、データ整理などの補助を行なうための、研究の補助員の雇用費を予定している。
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Research Products
(2 results)