2013 Fiscal Year Research-status Report
スパコン等の並列計算環境を用いた野球選手の評価手法に関する研究
Project/Area Number |
24650404
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
大澤 清 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学研究部, 契約研究員 (60601135)
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Keywords | ハイパフォーマンスコンピューティング / オペレーションズリサーチ |
Research Abstract |
平成25年度は昨年度に引き続き野球選手の勝率に対する貢献度を測るために野球における様々なプレーをモデル化し,選手の各種成績をそのモデルに当てはめてどの程度その成績が勝つ確率に影響しているかを定量的に評価した. 具体的には,野球の試合中にとり得る状態(無死一塁や一死二塁,二死満塁など)を定義した上で打撃成績,走塁成績,相手の守備成績を考慮に入れて状態間の遷移行列を選手ごとに定義し,マルコフ連鎖を用いて1イニングに挙げる得点の期待値,9イニングに挙げる得点の期待値(延長戦に対応するために10~12イニングまで計算する),与えられた2チームの得点の期待値から得られる両チームの勝つ確率を計算する.ここでいう「勝つ確率」とは一般的に「勝率」とよばれる勝利数を勝利数と敗戦数の和で割った値ではなく,上記計算を行って得られる得点の確率分布から得られる「試合終了時に相手の得点を上回る確率」を指している.この勝つ確率が,ある選手の打撃成績を一定の値だけ向上させた場合にどの程度向上されるかを計算することで,その選手の勝利に対する貢献度を測ることが可能となる. 平成24年度までは対戦する2チームの試合開始時における打順から勝つ確率を計算し,その値を基にした打順の最適化や,守備成績がその値に及ぼす影響の評価等を行った.平成25年度は試合中の各選手による打撃,走塁,守備の各結果が勝つ確率をどの程度上昇あるいは低下させたかを計算するモデルの構築を行った.このモデルによる計算を行うことで,例えばある打撃結果(イニングの先頭打者による安打等)が勝つ確率に与える影響について,試合の序盤と終盤でどの程度の差が生じるかといった定量的評価が可能となり,試合開始時に出場していた選手以外の途中出場の選手についても評価が可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では二つの並列計算環境(GPUクラスタ,スーパーコンピュータ)上に提案したモデルに基づく計算を行うプログラムを実装することを目標としているが,平成24年度は本科研費で調達・設置したGPUクラスタに関してはプログラム開発環境の整備や基本的な演算の実行テストにとどめ,スーパーコンピュータ(東京大学情報基盤センターに設置されたFX10スーパーコンピュータシステム,以下,FX10システム)のアカウントを取得して主に同システム上で数値実験を行った. FX10システムでは並列計算環境として一般的に用いられているMPI(計算ノード間の並列化に利用されるインタフェース)とOpenMP(計算ノード内の並列化に利用されるインタフェース)が用意されているが,本研究課題で利用するプログラムはPOSIX Threadsとよばれるインタフェースを利用してより計算ノード内の並列化効率を高めることを目指し,その実装を行った.並列処理特有の排他制御(あるプログラムが利用しているデータを他のプログラムが利用しないようにする等)を本実装においても適切に行う必要がありその部分の作成に時間を要したが,インタフェースを適切に配置して動作させることにより希望する並列処理が可能となった.その結果,上記概要に記した守備成績が勝つ確率に与える影響の評価や,平成25年3月に開催された野球の国際大会(WBC)における日本代表の最適な打順をFX10システムの計算ノード96台を利用して約2億1千万通りの打順から選ぶことが可能となった. 平成25年度は主に試合中の打撃,走塁,守備の各結果が勝つ確率をどの程度上昇,低下させているかを計算するモデルの構築と,そのモデルに必要となるデータの収集と整理を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24,25年度は並列化したプログラムを実装しさえすれば比較的容易に高い計算性能が得られるスーパーコンピュータを主な計算環境として数値実験・性能評価を行ったが,次年度以降はGPUクラスタ上にも同様の処理を行うプログラムを実装することを目標とする.ハードウェア(GPU)の性能を引き出すにはその構成を意識したプログラムを作成する必要があるため,様々な検証を行いながらプログラムの実効性能を理論性能に近付けてゆく.GPU自体は近年並列計算の分野で注目を集めているデバイスではあるが,スーパーコンピュータと比較するとその処理能力(FLOPS値)は小さくなる.ただ,GPUを利用するメリットとして費用対性能の値が非常に高くなるため,スーパーコンピュータの値と比較してその有用性を検証する. また本研究で使用しているモデルは試合開始時の選手の成績を基に勝つ確率を計算していたが,途中出場の選手についても成績の評価を可能とするために,試合中の打撃,走塁,守備の各結果が勝つ確率をどの程度上昇,低下させているかを計算するモデルを構築して評価を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の支出額は支払請求額を超えているため,昨年度において本年度の使用額が生じた理由について述べる.本研究課題で調達したGPUクラスタは,デバイスとしてのGPUを2基あるいは4基搭載している製品が一般的である.申請段階ではGPUを4基搭載したクラスタを想定していたが,実際に交付された金額からGPU2基搭載のクラスタを調達することとなり,結果的に未使用額が発生した. 本年度はGPUクラスタの処理能力を向上させるためのGPU増強や,その他のデバイス(ストレージ等)の追加・変更等への使用を予定している.また,平成25年度に引き続き東京大学情報基盤センターに設置されたFX10スーパーコンピュータシステムのアカウントを取得し,最大で96台の計算ノードが使用できるサービスを利用する(25万円/年). またスポーツ工学,情報工学に関する知識を深めるための関連書籍の購入費用,GPUクラスタの制御用に購入したPCの関連部品やその他消耗品の購入費用として10万円程度を見積もる.その他,関連分野の研究者と情報や意見を交換するために学会への参加を予定し,それに要する費用として15万円を見積もる.
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Research Products
(1 results)