2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
岩瀬 峰代 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 講師 (30155048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥本 素子 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 助教 (10571838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対話的手法 |
Research Abstract |
本研究では、研究者の文化を発信するために、研究者だけでは気付かない研究者の文化的背景を、芸術家が市民の視点から研究者と対話することにより明らかにしていく。その後、芸術家は、研究者との価値観や視点を作品という形で可視化し、社会に発信する。 本研究では実践における研究者と芸術家の作品制作、その制作過程のモデル化、出来上がった作品の伝達効果の検証を実施する。 研究者と芸術家の作品制作においては、対話、制作、展示の実践を繰り返し、その中から改善を見出し、改善点を踏まえ実践に生かすという、アクションリサーチと呼ばれる手法を用い実施していく。このような実践を研究結果に直接結び付け、研究結果を実践に直接応用する手法は、実践的に社会で起きている問題解決のためには、有効な手段であるとされている。具体的には、制作過程の記録、アーティストへのインタビューを行い、それらの記録から困難場面、創出場面を抽出し、研究をアートにする際に必要な支援や場面、条件の整理を行う。 上記の実践活動を時系列に分析し、そこでの活動の内容を明確化することにより、制作過程のモデル化を行っていく。その際、社会学で用いられるデータから理論を構築するグランデッド・セオリーアプローチという手法を用い、分析していく。 本研究伝達効果の検証においては、実践場面での検証と、被験者を用いた比較実験による検証を行う。実践場面での検証では、本研究で制作された作品を展示し、作品の伝達効果の検証を行う。作品展示場所は、葉山町公共施設、または総研大基盤機関が持つ展示室を予定している。被験者を用いた比較実験では、通常の視覚表現で用いられる標本画像と、今回の展示の表現の画像とを比較実験し、質問紙等で被験者が受けた印象や内容への理解を測定し、比較し、従来の手法との違いや効果差について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成24年度に下記のような研究を実施した。 *新たな作品の制作:24年度は、生理科学研究専攻の研究をテーマにした作品1点、を制作した。その過程で、分野に関係なく、アーティストと研究者の対談が成立することが明らかになった。 *伝達効果の検証:24年度は文系大学生を対象に、アート作品の画像と標本画像を用いてい印象評価と感想文調査を実施した。その結果、科学に関心があるグループは標本の面白いという印象と、アート作品を楽しいという印象が、有意に関心がないグループより高かった。また、印象評価の結果を因子分析すると、共感や興味を引き起こす感情因子と、奇妙だ、不思議だと思わせる新奇性因子が見つかった。アート作品画像は新奇性因子が標本よりも高く、標本画像は感情因子が高いことが明らかになった。この結果、アート作品は難解な印象を抱かせる可能性があることが分かった。今後はより正確な質問紙調査を実施し、展示の細かな機能と効果について検証していく。また、展示物に関する感想文では、アート作品の意図がつかめないという意見が多く、アート作品を展示する場合に、適切な解説が必要な事が分かった。 *モデルの検証:平成24年度は、関係者による本実践を振り返りのインタビューを行った。その中で、アーティストは、決して科学者の意見のみを根拠に制作しているのではなく、科学者との対話後、自分なりの発想を元に作品を制作していることが分かった。今後は、これらの分業的コラボレーションについて、詳細に検討してく必要があるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、これまでパイロット研究期間および本科研費研究期間で制作した制作物を用いて展示による実践と効果検証実験を行う。なお、これまでの研究を実施して抽出された研究課題は以下の2点であり、それに向けた推進方策を示す。 課題1【アート作品の伝達効果の再検証】アート作品は、単独で見せるとその意図が伝わりにくく、難解、新奇な印象を与えることが明らかになった。今後は、解説を工夫して伝えれば、その印象はどの様に変化するのかを、検証していく必要がある。 →課題1研究方策:アート作品に複数の解説を付け、その解説によって画像の印象評価、伝達効果の検証を行う。本研究では、当初は標本とアート作品との比較を考えていたが、アート作品をどう見せるのか、アート作品を活用して伝達する際の必要な鑑賞支援の方策を探ることに、研究の方向性を転換し、比較対象実験を実施していく。 課題2【アーティストと研究者の分業的コラボレーションのモデル化】アート作品を制作する過程で、アーティストと研究者は意図的に距離を置き、アーティストは研究者の話から自分なりの考えをまとめる期間が必要であるという事が解った。そこで、昨年までの制作場面の記録をまとめ、研究をアートで表現する際に、必要な場面の設定、その頻度、制作期間の条件を整理する必要がある。 →課題2研究方策:本研究では、当初、アーティストと研究者の対話場面の課題や創発の抽出を念頭に置いていたが、作品案は対話場面ではなく、対話が終了し、その対話を元にアーティストが作品を構想する段階で生まれることが明らかになった。そこで本研究では、分業的コラボレーションのモデル化を目指し、アーティスト側から見た必要な支援、情報、期間のインタビューを行い、アーティストが研究を作品化する際のモデルを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、被験者を対象にした実験、アート作品を展示し実践的な効果検証に研究費を使用する。具体的には下記のような計画を立て、研究費を支出する計画である。 *被験者(40名大学生を想定)に質問紙、インタビューを用いて比較対象実験を行ない、アート作品の伝達効果の再検証を行う。 予算…アンケートのための謝金として30万円を予定。 *「葉山芸術祭:個々の自由な創作活動と地域社会がリンクするアートフェスティバル」「福島 土湯温泉 あらふどアート:全国で活躍する芸術家の作品を土湯温泉の街の中に展示して、温泉街をアートで彩る」「分子生物学会:生命科学者、分子生物学者(参加者7000人程度)の研究発表の場」において作品展示を行う。それぞれの展示において、研究者と作家との対話や参加者との対話を含むギャラリートークを企画し、参加者にはアンケートを実施する。 予算…上記3企画の参加および講師依頼を行うための予算として1企画30万円(30万円×3)。展示用物品購入(展示台)50万円を予定。
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Research Products
(1 results)