2013 Fiscal Year Research-status Report
新学習指導要領に対応した物質概念育成を図る化学教材の開発と実践研究
Project/Area Number |
24650532
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10284449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 義信 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50253365)
原田 雅章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (00251364)
長澤 五十六 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40302351)
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Keywords | 実験 / 観察 / 新学習指導要領 / 粒子 |
Research Abstract |
本年度は当初計画に従って4分野で以下の教材開発や実験プログラムの開発とその実践を行った。 有機化学分野では,新たに光学異性体を取り扱う実験プログラムの開発に着手し,速度論的分割によるマツタケオールの合成を行った。さらに,この実験プログラムを試行的に近隣の高等学校の課題研究指導に導入した。高校生へのアンケート結果から,微視的である光学異性体の違いと巨視的である匂いの違いを実感する実験として有効であることが示された。 物理化学分野では,24年度に開発した「ものの溶け方」,「溶解度」,「酸の性質」,「化学平衡」などを総合的に学習する実験授業「粒子の視点で観るホウ酸の化学」(本学中学・高校理科教員免許取得予定学生対象)を改善し,公開授業の形式で実践した(本学理科教育講座教員へ公開)。また,教育現場でも比較的簡単に作製できる燃料電池について検討し,中学生・高校生を対象とした実験講座においてその成果を検証した。 分析化学分野では,(1)簡易霧箱の製作と放射線の観察,(2)簡易型測定器による環境放射線等の測定,を内容とする教材を作った。この教材を使って福岡県教育センター主催の中学校理科教員向け研修会,および本学の中等教員養成課程の学生用に開設されている「無機分析化学実験」において放射線教育を実施した。その結果,本教材は学校現場でも使用可能との意見を貰ったが,放射線源の入手法などいくつかの検討課題も見つかった。 無機化学分野では,昨年度に開発した,小学校における「粒子をイメージ化しやすい授業」の授業実践を目的とし,宗像市内の小学校と共同で,「ものの溶け方」での授業実践を試みた。授業プログラムは小学校教員が実施し,「溶ける」という現象から,粒子モデルへの「気づき」を促すことができるかを検証した。検証の結果,新たな教材の導入と授業設定時間の精査で,有効な授業プログラムとなることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要欄に記載した通り,当初計画に沿って4分野で計画通りの教材開発を行うことができた。さらに,本学学生向けへの授業実践や公開講座・出前実験,高等学校理数科と連携した課題研究における実践まで行うことができた。実践では参加者にアンケートをとり,その結果を踏まえて成果の把握と今後の改善への取り組みまでの計画が立っている。以上のことから,本研究は「おおむね順調に進行している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
有機化学分野では前年度に開発した光学異性体の合成と巨視的な違いと微視的な違いを理解するプログラムを中高生向けの講座で実践し,その効果を検証する。これと並行して,触媒を用いた香料の合成について,高等学校理数科との連携による課題研究として実施する。さらに,小・中・高の粒子概念の接続を意識した実験プログラムを開発して教員研修で実施し,その効果を検証する。 物理化学分野では,これまでに開発した実験授業「ホウ酸の化学」をさらに改善し,粒子の視点で観る物質感を育成することができる理科教員養成化学実験プログラムの完成を目指す。さらに,粒子概念に加え,環境教育との関連でも注目される燃料電池について,できるだけ身の回りの材料を使ってさらに簡便に作製できる燃料電池教材へと改善し,本学学生を対象とした化学実験授業,中学・高校の理科授業において実践することを目指す。 分析化学分野では,作成した教材(1),(2)を使って,今年度も学校教員向け研修会や教員養成 課程の学生実験において授業実践を継続する。その際,中学校へ新しく導入され た「放射線」への対応と,エネルギーと環境教育教材として活用するという観点から,実際の学校現場でより実施しやすくなるように,昨年度指摘があった検討項目について改善を行うとともに,安全性や環境にも配慮した内容になるよう修正を加える。 無機化学分野では,研究実績の概要で述べた,小学校での実践教育の結果を大学における理科教員養成課程の授業にフィードバックし,現在行っている大学の授業を,より効果的な教育プログラムに改善できるかを検証する。 なお,本研究は概ね順調に進行していることから,研究計画の変更は予定しておらず,遂行上の課題もない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は,教材開発とその実践のために多くを消耗品として使用したが,研究の進捗に伴い,本年度に新たな教材開発を計画したので,それに使用するための消耗品代として一部を本年度に繰り越した。 本年度は前年度の実践結果を踏まえて内容の改善と評価や新たな実験プログラムの開発を行う予定であり,当初予定の研究費と繰り越した研究費を合わせて使用する計画である。 具体的には,薬品代,ガラス器具代,実験器具代の実験消耗品代に多くを使用する予定である。これに加えて,成果発表のための出張旅費を計上している。
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Research Products
(9 results)