2012 Fiscal Year Research-status Report
近代朝鮮医学史研究への日本宣教医療という視点の導入
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24650582
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
愼 蒼健 東京理科大学, 工学部, 准教授 (50366431)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 医学史 / 植民地 / 宣教 |
Research Abstract |
2012年度の研究計画・方法に即して、実績を示すことにする。 (1)植民地期朝鮮における日本宗教界の医療・救援活動について。今回の先行研究サーベイの結果、社会事業史研究において宗教界の貧民救護などについて論じられることはあったが、医療活動について取り上げ、その歴史的な意味について考察した先行研究はなかった。ただし、そこには資料の制約という問題があると同時に、日本の宗教界が現実に医療活動をさほど展開していなかったという事実もある。そういった意味で、天理教は他の日本宗教とは異なる運動を展開したといえる。公開資料からは、植民地朝鮮において天理教運動が死や病気といった次元で展開していた様子が窺い知れる。今回、非公開資料にアクセスできなかったため、深い考察はできなかったが、本部と朝鮮の宣教所との間の文書を見ることができれば、より詳細な事実が明らかになるだろう。 (2)天理教信者となった朝鮮民衆にとって、天理教の医療とはどのような意味があったのか。この点については、いまだ資料収集段階にとどまり、議論を展開できる段階にはない。ただし、一部の先行研究に次のような記述があり、本研究が議論を挑まねばならない。「対面的関係で生まれた個人的・情緒的絆こそ日本の布教者が韓国人信者を得ていくための前提であった。その限りでは、韓国における天理教運動を植民地支配・被支配の両国関係に関連させて説明する必要はなくなる」(李元範「近代日韓関係と天理教運動」2002年)。実はこのような解釈をする研究者が他にもいる。布教者と民衆の個的関係に還元することなく、植民地時代の天理教医療を解釈するパースペクティブが必要となる。この問題に関しては最終年度に仮説を提示したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画・方法で提示した(1)に関しては、[1]、[2]の公開資料の収集、分析に関しては終了したが、[3]にある非公開資料の開示に関する動きが鈍く、公開資料のみとなった。 また、(2)の主題である朝鮮民衆にとっての天理教医療については、こちらも文献資料の収集に終始し、韓国での資料調査ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今年度は、いわゆる非公開資料の開示を求めて、本格的に天理側と交渉を行う。 (2)「総督府主導の植民地医学」、「キリスト教の宣教医療」、「日本宣教医療」という三者の関係に関する仮説を提示する。宗教学、朝鮮医学史の専門家との会議を開催し、成果と仮説を提示し、議論を行う。その上で、年度末までにジャーナルに投稿するための論文を仕上げる。 (3)あわせて、現時点で入手していない先行研究所、論文を収集整理して研究の準備を整える。 (4)かりに非公開資料にアクセスできない場合には、公開資料のみで研究を終了させることになるが、公開資料だけであっても、宣教医療の目的、実態などを断片的に知ることができるだろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)物品費:天理教、天理教の海外伝道、天理教と医療に関する関連書籍を引き続き収集する。また、図書館などでの資料複写が増えるため、こららをPDF化し保存し持ち運びができるよう携帯用タブレットを購入する。 (2)旅費:天理大学へ2回程度の出張。大阪、京都で、天理教・宗教学研究者との会議のために2回程度の出張。また、東京で小さな会議を開催するために必要となる招聘費用。資料調査のための韓国出張。 (3)人件費・謝金:研究者からの知識提供謝金。アルバイト学生の費用。韓国語論文の翻訳費用。 (4)その他:資料の複写費用。
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Research Products
(3 results)