2013 Fiscal Year Research-status Report
その場でリガンドの結合能をONにするがん検出分子プローブの開発
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24650649
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
松村 幸子 公益財団法人がん研究会, がん研究所蛋白創製研究部, 研究員 (90414052)
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Keywords | 癌 / ペプチド / ナノバイオ / 蛍光イメージング / 分子認識 |
Research Abstract |
本研究では、特異性と感度に優れたがん細胞検出プローブとして、がん細胞膜上に発現している受容体と酵素の両方を利用したペプチドプローブを開発することを目的としている。標的受容体に結合するサイトをプローブ内に複数組み込み、がん細胞に由来する酵素によってプローブが構造変化を起こし、機能し得る結合サイトを増加させて特異性と感度を向上させることを狙っている。 平成24年度はプローブの設計と合成を行った。がん細胞や腫瘍血管内皮細胞で発現が高いCD13を標的受容体として、これに結合するリガンドペプチドとしてNGR配列をもつペプチドを選択し、NGR配列を導入したペプチドと検出のための蛍光色素を導入したペプチドの作製を試みた。化学合成を行ったが精製収率が低く、十分な量のペプチドを得ることが困難であったため、分子設計と作製条件の改良を進めていた。平成25年度は、このようにして作製したペプチドがβシート構造を形成し、数百ナノメートルからマイクロメートルサイズの集合体を形成することを見出だした。集合体のサイズは、pHや塩濃度に依存しており、光学顕微鏡観察によると血清を含む培地中に入れても集合体の変化は見られなかった。標的受容体のCD13を発現しているがん細胞にこの集合体を添加すると、細胞内に取り込まれ、一部はライソソームに局在していることがわかった。一方、CD13を発現していないがん細胞には取り込まれず、受容体に依存してペプチド集合体が取り込まれていることがわかった。集合体形成という興味深い挙動がみられたので、集合体を利用したプローブの作製を行うことにしたが、このペプチドは溶解性に制限があり扱いにくいため、アミノ酸配列に若干の変更を加えたペプチドを設計、合成した。新たなペプチドは溶解性が改善し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で100 nm以下の集合体を形成することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
がん細胞を検出するプローブとして、リガンドペプチドを組み込んだペプチドの設計、合成を行ったが、作製したペプチドがナノからマイクロサイズの集合体を形成するという結果を得た。集合体は、プローブとしてだけでなくデリバリーキャリアとしても有望と考え、集合体の形成について検討、評価を行っていた。そのため、本来の目的であるプローブとしての能力を評価する実験が遅れ、研究期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したペプチドの集合体挙動の解析をさらに進める。また、プローブにがん細胞に由来する酵素に対する応答性の付与を行う。作製したプローブのがん細胞の検出およびデリバリーキャリアとしての能力を、種々のがん細胞を用いて調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プローブペプチドの作製を行っていたところ、ペプチドが集合体を形成するという予想外の結果を得たため、当初の計画を変更して集合体形成に関する実験を進めた。そのため当初のプローブ能の評価に遅れが生じ、関係する費用において未使用額が発生した。 作製したプローブペプチドのがん細胞検出能力やデリバリーキャリアとしての能力を調べるため、種々のがん細胞を用いた細胞実験に主に使用する。
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Research Products
(2 results)