2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24651055
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
太田 成男 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00125832)
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Keywords | 損傷 / 水素分子 / 抗酸化物質 |
Research Abstract |
電離放射線(以下、放射線)は、生体内では主に水と反応しヒドロキシルラジカルのような酸化力の強い活性酸素種を生成し細胞と遺伝子に損傷を与える。本研究では、放射線障害に対する水素の防御機構を遺伝子損傷の抑制という視点から明らかにすることを目的とした。しかし、実験的に短時間で放射線による遺伝子損傷自体を明確にすることは難しく、基礎研究の結果をそのまま社会に適用することは不可能で誤解を生じさせる可能性もあるので、遺伝子損傷よりも細胞障害性の改善における分子機構の解明を目的とした。 放射線によってヒドロキシルラジカルが生じ、それがトリッガーとなってラジカル連鎖反応を生じさせ、主に細胞膜において細胞障害をあたえることが知られている。水素とヒドロキシルラジカルの反応性はそれほど高くなく、水素の効果をすべてヒドロキシルラジカルの消去では説明できない。しかし、本研究において、水素は脂質部分に水溶液よるも2倍蓄積すること、5倍も保持されることを明らかにしたので、水素は細胞膜上でより効果を発揮することが示唆された。さらに、1,2,3,4-tetrahydro-fl-carboline (THBC)や2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine) dihydrochloride (AAPH)のようなラジカル反応誘発剤による細胞障害も抑制したので、水素は少量でも脂質ラジカルを抑制することにより連鎖反応を抑制して細胞を保護することを明らかにした。さらに、低い水素濃度でも、細胞膜の脂質過酸化を抑制することを明らかにした。 本研究では、放射線障害を水素が抑制する可能性を示唆し、その分子機構の一端を明らかにしたが、それをそのまま社会に適用するためには不十分である。
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Research Products
(23 results)