2012 Fiscal Year Research-status Report
有機分子‐炭素ナノコンポジット材料を用いた2端子多経路確率共鳴素子の開発
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24651140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 恵 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50437373)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 確率共鳴 / ナノ材料 / カーボンナノチューブ / 生体模倣 |
Research Abstract |
自然界は雑音に満ちている。我々は出来るだけ雑音を排し、より正確な信号受信を行おうとする。しかしながら生体はその雑音を積極的に利用した、雑音があるからこそ微弱な信号が受信出来る確率共鳴現象を利用している。人工的にこの確率共鳴システムを構築しようという試みは多く行われている。しかし本研究が提案する2端子素子内での多経路確率共鳴が人工的に再現されたことはこれまでにない。 本研究の第一目標は2端子素子の中で多経路確率共鳴現象を起こすことである。研究計画の最も斬新な点は、ナノ材料特有の量子状態の揺らぎを雑音として利用するところにある。多数の信号伝達経路が形成されれば、個々への雑音印加を必要としない為に、系の入出力端子を一対にすることが可能である。 本研究の当初の提案では一対の対抗電極間にカーボンナノチューブ(CNT)を多数本架橋し、電極とCNT間に酸化還元作用によって電気伝導性の大きく異なることが期待できる有機分子を挿入する素子と、将来的には電極に機能性の有機分子を修飾させ、CNTの多経路効果を発現させることを計画している。作製された素子の片方の電極に微小電圧変化を印可し、対抗電極における透過電荷、すなわち微小電流を計測することで、信号伝達度を計測する。CNTの他経路効果と有機分子の非線形応答効果により多経路確率共鳴が発現した場合の増幅効果が検証可能である。 本研究が最終的に目指す成果は「人工確率共鳴素子」という実用素子である。2端子素子中で多経路確率共鳴現象を起こせることが実証出来れば、確率共鳴素子は実利用化に向けて大きく飛躍する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した分子CNT素子の作製し、その機能を計測することに成功した。フェロセンの電極修飾を行い、その電極上に単離したCNTをスピンコート法により分散させて、両電極間の非線形伝導を安定的に室温で再現した。非線形性伝導を示す両端子間において、確率共鳴伝導を再現することが出来、その多経路効果を見積もったところ、ほぼ10本程度の多経路が形成されているのではないかと結論付けることが出来た。 本来の目標としては1000本を超える多経路効果を期待していたが、多くのCNTが両電極を架橋するような高い密度の素子では非線形効果が得られず、確率共鳴効果は得られなかった。 また、研究の途中で半導体性CNTの電界効果を利用したFETを作成し、その一本一本のCNTの電界に対する反応が異なると予想される量子効果を独立の雑音効果として取り入れた新たな確率共鳴素子を考案し、計画にはなかったがこれを作製した。この素子の確率共鳴効果を計測したところ、ゲート電圧に雑音を印可し、その雑音増加に応じた入力‐出力信号相関の増加と減少が確認出来た。しかしながらこちらも多経路効果が少ないことが示唆される結果であった。 上の両方の結果共に、本来目指した多経路効果の発現は少ないものの、確率共鳴効果を示す素子を作成することには成功した。よって初年度の研究目的達成度としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はCNTの量子状態を利用した多経路確率共鳴素子の開発を重点的に発展させていく。多数単相CNTが分離された状態で電極間を架橋したFET素子を作製し、確率共鳴効果を計測する。実際には昨年度にもこれに挑戦したが、架橋本数が増えると半導体CNT材料に含まれる少数の金属CNTがFET素子の特性を阻害してしまうことを確認した。よって、より純粋な試料を利用したり、半導体性CNTのみを選ぶことが出来るような表面を利用して再度作成に挑戦する。 また、金属製CNTであっても、極低温であれば一次元特有の量子状態である、朝永ラッティンジャー効果による伝導度の揺らぎが期待出来る。よって金属性CNTを用いた極低温における確率共鳴現象の発現に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度はすでに所有している材料によって研究を行ってきた。今年度は研究方向に明らかな指針が立ったので、主に高純度のCNT材料の購入や、低温寒剤の購入費に充てたい。また、研究の遂行に必要なPC関連器具及び旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)