2013 Fiscal Year Research-status Report
有機分子‐炭素ナノコンポジット材料を用いた2端子多経路確率共鳴素子の開発
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24651140
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 恵 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50437373)
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Keywords | 確率共鳴 / カーボンナノチューブ / 雑音 / 分子 / 揺らぎ / 平坦電極 |
Research Abstract |
雑音があるからこそ微弱な信号が受信出来る現象は確率共鳴と呼ばれる。確率共鳴現象は生体の感覚器官での働きが確認されており、このようなシステムを真似る「生体模倣技術」が近年ますます盛んになっている。本研究はナノ材料の量子的な揺らぎや分子の状態変化、即ち材料に発生する自然な雑音をそのまま確立共鳴効果に利用できないかという発想から始まった。本研究では有機高分子膜の非線形伝導を用いた素子及び、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた素子を作製して、それぞれに発現する確率共鳴効果を示した。既にその構造及び確率共鳴発現の仕組みを特許出願している。具体的な例としては酸化・還元応答性の高いフェロセン分子を挟んで金属電極間に複数のCNTを架橋させ、分子の常温における分子構造の揺らぎを雑音に利用する。結果、約10経路程度の多形路効果を示す結果を得ている。しかしながら現状ではそれ以上の多形路効果の向上が得られず、その原因は各径路に関与する雑音の効果が弱い為ではないかと考えている。 当該年度は、高い電界トランジスタ(Field Effect Transistor: FET)効果を示す基本素子の作成が先決と考えた。確率共鳴効果に必要な非線形応答を個々のSWNTによって確実に発生させる為である。電極間に独立したSWNTが並行に多形路をもって架橋し、SWNT材料の精製、素子表面の改質、電極材料の選択といった実験条件を整えていった。結果大幅なSWNT-FET素子性能の向上を達成した。また電極の材料を変化させることで、金属とSWNT間の接触状態もコントロールすることが可能であることが判り、界面における非線形応答に対する確率共鳴効果も計測し、高い共鳴効果を得た。しかしながらこの方法では高い電界による界面の劣化が激しく、再現性の乏しいものであることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はこれまでの試料作成方法を根本的に見直し、高い再現性を目指した精緻な実験を行うことを目的とした。結果予想よりも早く確実な進捗で、SWNTを用いた確率共鳴素子の基本系となるCNT-FET素子の作製と高性能化に成功した。確率共鳴効果の発現については大きな進捗が無かったものの、今後これらの技術を用いて大きな飛躍が望めると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、2端子素子の中で多経路確率共鳴現象を起こすことを目指している。多形路を形成することは既に実現しており、本年度は個々の架橋したSWNTに如何に雑音効果を発生、若しくは与えるかを中心に進行していく。具体的にはSWNTへの金粒子及び分子修飾による自発かつ独立の雑音発生を目指す。金粒子では常温における電荷移動の量子効果を、分子の吸着脱離では高温の反応性の増大と反応の乱雑さを利用し、両者ともにSWNTの電気電導度の変化を雑音として利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前々年度に他の研究に使用する目的で購入したカーボンナノチューブ材料が本研究にも用いることが出来ることが判明し、購入を予定していた幾種類かの材料を購入する必要がなかった為。 今年度における消耗品、特に有機無機材料の購入に逐次あてて行きたい。
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Research Products
(5 results)