2012 Fiscal Year Research-status Report
波の干渉により津波を消散させる「双胴型」防波堤の設計開発と数理モデルの構築
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24651197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
奥村 弘 富山大学, 総合情報基盤センター, 講師 (30355838)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数値波動水槽 / 防波堤 / 津波 / CFD / 海岸工学 / CADMAS-SURF/3D / 流体力学 / 耐波設計 |
Research Abstract |
波を「堰き止める」のではなく、波を受け流しながら、波エネルギーの収斂(集中)によって引き起こされる「自律的な反射」と干渉による「波の相殺効果」を利用することで、透過した津波の波高を大幅に低減させることのできる消波構造体の基礎研究開発に成功した。また,津波モデルの構築には,数値波動水槽CADMAS-SURF/3DのGPU高速化プログラムと高精度移流計算法を開発した.また、2次元Adiabatic流体モデルを開発しており、2次元キャビティー内流れにおいて既存のベンチマーク結果との比較を行い流速と圧力の検証を行っている。また、円柱周りの流れにおいて境界層を伴う高Reynolds数流れにおいて揚力係数・抗力係数の検証を行っている。このとき、2次元円柱流れでは、レイノルズ数 Re = 1×10^5の実験結果と、adiabatic流体モデルと非圧縮性流体・圧縮性流体・準圧縮性流体(音速が定数で、温度や密度に依存しないと仮定した場合の圧縮性流体モデル。非圧縮性流体モデルと解の挙動が近いと言われている)で数値計算結果(揚力係数 C_p)の比較を行った結果、adiabatic流体モデルが実験結果と一致しており、本研究開発の実現性は極めて高いといえる。現在、CFDは港湾外郭施設の耐波設計のみならず、航空機・自動車・鉄道車両・船舶などの幅広い分野における風洞実験・水理模型実験に並ぶ重要な存在となっており、本研究開発課題は分野を超えたビッグデータ利活用による新しい知識や洞察を得るための情報技術およびそれらを支える数理的手法の創出・高度化が得られる。港湾・海岸工学分野の課題解決とともに、固有技術(CFD)の他分野展開や新規基盤要素技術の導入を強力に推進することができる。さらに、港湾・海岸工学アプリケーションの観点から、次の社会的価値・経済的価値があげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(理由1)自由界面を有する2流体流れ解析の高精度数値計算法の開発に成功 本研究では、特性法に基づいた新しいシミュレーション・テクノロジーを開発した。本数値解析手法の特徴として、次の2点があげられる:①特性有限要御法という新しい発想から数値解析のボトルネックであった時間刻み Δt の制約がない。②移流計算では連立方程式を解かないマトリクス・フリーのシミュレータであるため、自由表面流れの長時間予測を高速かつ高精度に行うことができる。 (理由2)津波を減衰させる消波構造体の基礎開発に成功(特許出願) また,本研究において特許出願した発明では、東日本大震災の三陸沖津波のような長時間周期の津波を、構造物によって遮り堰き止めるのではなく、U字、V字、矢じり型などの断面によって構成される水路に干渉域(点)を設けることによって、干渉域を通過する津波同士をぶつけ合わせることで相殺させ(相殺効果)、透過した津波(透過波)のエネルギーおよび波高が大きく減衰する消波構造体である。なお、発明した消波構造体では、干渉による相殺効果を生じさせるため、分流(水流の分割)と変流(変流原理による水平方向エネルギーの拡散吸収効果)を生じさせるU字型などの断面水路によって構成される。旧・消波構造体では、波エネルギーの収斂(集中)による、波の自律的反射により透過波を減衰させたが、本発明の消波構造体では、これに干渉による相殺効果を付加させることで、長時間周期に対する波に対するさらに大きな減衰効果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
海岸・港湾の分野において、CFDが港湾外郭施設の耐波設計に利用され、気液混相流体(数値波動水槽)による数値シミュレーションが沿岸域や越波災害を被った現地海岸に適用されている。一方,ビッグデータ化に伴う数値波動水槽のCFDプログラム自体を高速化することが必要であるが、従来の流体モデルでは圧力の計算比重が全体の約80%以上を占めCFDのボトルネックであった。今年度以降,研究開発予定の断熱流体(adiabatic流体)モデルでは、このボトルネックであった圧力計算を飛躍的に高速化ことが可能である。ここで、adiabatic流体とはある断熱流体を仮定したの流体モデルであるが、断熱といってこのadiabatic流体モデルを用れば、従来の流体モデル(非圧縮流体モデル)に基づいたあらゆるCFDプログラムを100倍以上高速化させることができる。ここで述べた高速化率とはCFDプログラムをCPU計算機で稼働させた場合であり、GPU(グラフィック・ボード)を組み合わせた並列計算機環境(100万円程度の海岸・港湾分野の企業や研究者・実務者が比較的購入し易い普及型計算機)ではCFDプログラムを数千倍以上の高速化が得られる。本課題のCFD新技術を確立することにより、分野を超えたビッグデータ利活用による新しい知識や洞察を得るための情報技術およびそれらを支える数理的手法の創出・高度化が得られる。ここで、マトリクス・フリーとは従来CFDプログラムにおいてボトルネックであった大規模連立一次方程式を解かないことを意味し、CFDのパラダイムシフトをもたらすものである。さらに、沿岸域事業の調査・設計に携わる実務者の観点からも優れた数値波動水槽を開発することで、港湾・海岸分野での水理模型実験のコストを削減することができ、CFDの他分野展開や新規基盤要素技術の導入を強力に推進することができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新しい流体モデル開発に要する高速計算機(CPU/GPU並列計算機)の購入 1,785,000円
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Research Products
(9 results)