2013 Fiscal Year Research-status Report
波の干渉により津波を消散させる「双胴型」防波堤の設計開発と数理モデルの構築
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24651197
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
奥村 弘 富山大学, 総合情報基盤センター, 講師 (30355838)
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Keywords | 計算流体力学 / 数値波動水槽 / GPU並列化 / Adiabatic流体モデル / マトリクス・フリー / CFD / 水理模型実験 / 耐波設計 |
Research Abstract |
ビッグデータ利活用に準ずる情報技術および数理的手法の一つにCFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)イノベーションが求められている。また、海岸・港湾の分野においても、CFDが港湾外郭施設の耐波設計に利用され、気液混相流体(数値波動水槽)による数値シミュレーションが沿岸域や越波災害を被った現地海岸に適用されている。護岸の断面形状や天端高を変化させたCFD数値解析を行うことにより,対象地域の特性に適合した対策工法が検討されている.一方,ビッグデータ化に伴う数値波動水槽のCFDプログラム自体を高速化することが必要であるが、従来の流体モデルでは圧力の計算比重が全体の約80%以上を占め、CFDイノベーションを妨げるボトルネックであった。本研究開発課題のシーズ候補である断熱流体(adiabatic流体)モデルでは、このボトルネックであった圧力計算を飛躍的に高速化することが可能である。ここで、adiabatic流体とはある断熱流体を仮定した(エントロピー変化率が一定)の流体モデルであるが、断熱といっても対象とする系の境界面から熱の出入りがないと仮定するだけで、流体内部の温度・密度の変化も同時に考慮することができる。このadiabatic流体モデルを用いれば、従来の流体モデル(非圧縮流体モデル)に基づいたあらゆるCFDプログラムを飛躍的に高速化させることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究開発における新しい流体モデルは,断熱流体(境界表面からの熱の出入りがない)であることと流体内部のエントロピー変化率を一定とした仮定により導出されるadiabatic流体(断熱流体)モデルである。従来、非圧縮性流体モデルをベースとしたCFDでは、圧力計算が大きなボトルネックであった。本課題で創出するadiabatic流体モデルでは、このボトルネックである圧力計算の負荷を大幅に低減させる(圧力ポアソン方程式を解かない)ことが可能である。現時点では2次元のadiabatic流体モデルを3次元流体に拡張し,実験データと比較することによりCFDにおける次世代の流体モデルを創出する.このadiabatic流体モデルを用いれば、非圧縮流体モデルに基づいたあらゆるCFDプログラムを普及型の高速計算機(マルチコアCPUとGPU搭載)で数千倍以上まで高速化させることができる(CFDイノベーションの実現)。さらに、adiabatic流体モデルを気液混相流体解析に適用し、港湾外郭施設の耐波設計のための超高速・気液混相流体シミュレータを開発する。現在、CFDは港湾外郭施設の耐波設計のみならず幅広い分野において重要な存在となっており、本課題は分野を超えたビッグデータ利活用に準ずる情報技術とそれらを支える数理的手法の創出・高度化が得られる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、CFDは港湾外郭施設の耐波設計のみならず、航空機・自動車・鉄道車両・船舶などの幅広い分野における風洞実験・水理模型実験に並ぶ重要な存在となっており、本課題は分野を超えたビッグデータ利活用による新しい知識や洞察を得るための情報技術およびそれらを支える数理的手法の創出・高度化が得られる。港湾・海岸工学分野の課題解決とともに、固有技術(CFD)の他分野展開や新規基盤要素技術の導入を強力に推進することができる。さらに、港湾・海岸工学アプリケーションの観点から、次の社会的価値・経済的価値があげられる。A)本課題で開発する海岸保全施設の自動最適化CADシステムは、沿岸域事業の調査・設計に携わる実務者の観点からのモニターに基づいた耐波設計使用に際しての利便性、そして事業者やステークホルダーが理解しやすい結果の表現方法を取り入れることにより、海岸工学などの専門家だけに頼ることなく地方公共団体や地域の自立した防災計画を促すことが出来る。B)港湾外郭施設の耐波設計汎用CFDソフトウェアが市販されていないため、本システムの利用により、既設防波堤の耐津波化に加え、重要な港湾施設についても、必要に応じた耐津波性を確保するための対策が講じることができる。また、港湾の静穏度確保することが可能となり、港湾の災害対応力を強化することができる。C)特に港湾は、日本の貿易や多くの経済活動を支える物流拠点であり、島国日本の生命線である。また、臨海部に人口・資産が集積する日本の国土を踏まえれば、港湾における津波に対する安全性の確保は、日本の国民生活や経済活動の安定・向上にとって必要不可欠となるため、本課題の成果がもたらす社会的・経済的インパクトは大きい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた出張の宿泊数が減ったため。 次年度に予定している出張での宿泊数を増やすことでより多くの情報収集を得る。
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Research Products
(2 results)