2012 Fiscal Year Research-status Report
国際協力ボランティア政策に関する国際比較研究―半世紀の検証と未来への改革と継承―
Project/Area Number |
24651281
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
澤山 利広 関西大学, 国際部, 准教授 (90388885)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アメリカ / 韓国 / ブータン / フィリピン / ガーナ |
Research Abstract |
本研究は、平成27(2015)年に発足50周年を迎える青年海外協力隊(JOCV)を中核とする政府主導の国際協力ボランティア事業について、今日的意義を踏まえた政策の方向性を示すための基礎資料の作成を目的とする。本研究メンバーは全員がJOCV隊員として途上国に派遣された経験を有する。 数ある政府系国際協力ボランティア派遣事業から、我が国とアメリカ、韓国のボランティア事業の生成・発展過程や組織に着目する。それらの事業に込められた国家戦略、外交、国内政策を整理し、近年の日本のボランティア派遣数の減少傾向と米韓の倍増の背景を探る。また、PPP(Public Private Partnership)に基づく国際協力ボランティア派遣や海外経験の国内還元の事例を収集する。そして、受入国の視点から日米韓のボランティア事業を検証するために、アジアのフィリピン共和国とブータン王国、アフリカのガーナ共和国において調査を敢行する。これら一連の研究を通じて、新たな半世紀を見据えた我が国の国際協力ボランティア政策に関する一考察を示す。 派遣国研究は、ボランティア事業が果たしてきた役割と、今日的課題を設定し、今後の国際協力ボランティア事業の可能性を明らかにする。 受入国研究では、日米韓のボランティア事業の実態、評価、課題、そして期待等に関する項目を設定してインタビュー及びアンケート調査を行う。 平成24年から平成26年9月までは、文献検索と国内においてフィールドワークを行い、平成26年度10月からは報告書の執筆に集中する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、派遣国としての韓国、受入国としてのフィリピンとブータンにおける各国の援助実施機関、あるいは受入れ機関での資料を収集し、担当者・関係者等へのインタビューの内容を記録した。 韓国においては、政府系の国際協力ボランティア事業の統一名称であるWFK(World Friends Korea)のひとつのKorean Overseas Volunteers (KOV)は、派遣数の倍増を掲げ、Koreaブランドの強化の一翼を担っている。この点についてはフィリピンでの調査内容との符号が認められた。 フィリピンでは、Philippine National Volunteer Service Agency局長(Executive Director)によるWFKの伸張に関する言及が印象的であった。近年の派遣数はWFKがJOCVを上回っており、フィリピン政府が重点開発地域に位置付けられているミンダナオ島ではKOVの活動は見られるが、JOCVは紛争地域であることを理由に派遣をしていない。フィリピンJOCV隊員総会では、東日本大震災被災地での帰国隊員の活動に高い関心が示され、海外経験の国内還元体制の整備が今後の国際協力ボランティア政策のフロンティアであることがうかがえた。本総会では、KOVとの交流事業がプログラムに組まれており、日韓連携の可能性を予感させた。 ブータンは、米韓のボランティアを受入れておらず、JOCVのプレゼンスは依然大きいが、2011年からタイのボランティアの受入れを開始しており、新興国からの派遣増の兆しがうかがえた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の受入国研究では、ブータン、フィリピンに加え、ガーナにおいてもフィールドワークを行う。これらのボランティア受入国における日米韓のボランティア事業の軌跡の探求がメインテーマである。フィリピンとガーナについては、共に日米韓のボランティアを受け入れている。両国の国づくり・地域づくりに果たしてきた各国ボランティア事業の役割を時代によって変るボランティアの職種から読み解く。ブータンでは、JOCVのみを受け入れている独自政策から日本型国際協力ボランティアの優位性を探る。受入3カ国における比較研究によって経済社会発展に伴うボランティアへの期待を推計する。そのことは我が国のボランティア派遣数の漸減傾向を反転させる基礎資料になることが期待される。 本研究の実践的展開としては、現役大学生のJOCV短期隊員としての派遣を模索する。具体的には、ブータン王国において、大学生の教育的効用を重視するWFK-Korea University Volunteer Programを参考にしつつも、JOCVの生命線である技術協力を疎かにしないボランティアの派遣を目指す。そのための高等教育機関の役割として、派遣受入国での卒業生ネットワークを活用した案件発掘の有効性と、教育機関としての大学ならではの派遣前後の研修プログラムの構築を課題とする。 本研究の中間年にあたる本年は、研究会を定例化することで派遣3カ国と受入3カ国での地域研究の有機的な連携と情報や資料の共有を促す環境整備に努める。年度末にあたる平成26年3月には、日本NPO学会において中間成果を発表し、研究手法の点検と最終年度の成果物の製作に向けた示唆を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|