2014 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシアにおける女性の表象-女性器切除をめぐる言説の政治-
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24651289
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
井口 由布 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (80412815)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 女性表象 / マレーシア / 女性器切除 / 多民族社会 / イスラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、女性器切除female genital mutilation (FGM)をめぐる言説を読み解くことによって、マレーシアにおける女性の表象を、植民地主義、ナショナリズム、多民族社会、イスラムとの関係から明らかにしようとするものである。これまで、1)マレーシア内外におけるFGMに関する諸表象を収集すること、2)理論的な問題と接合させること、3)成果発表を行い今後の研究に継続させることを主眼に研究を行ってきた。 資料の収集を進めるなかで、マレーシアにおいて公的なFGM言説は思ったほどないことがわかった。マレーシアの保健省などでは統計調査をしておらず、FGMの実態はよくわからない。マレーシア政府はFGMを禁止し、WHOの指導を受けながらさまざまなアクションを行っているが、2009年にはマレーシア政府のイスラム推進局が、事実上FGMを合法とするファトゥワを発表した。マレーシアのFGMをめぐるこのような状況について、いかにして考えるべきなのか。この点に関して2014年度の現地調査はとりわけ示唆的であった。 現地調査における医療系カレッジの教授へのインタビューにおいて、これまでの調査からおそらく99%のマレー系女性はFGMを経験しているだろうという指摘があった。その一方で、同教授の調査によれば、女性たちの性器には傷跡が見られなかったという。これらのことから以下のような考察が導かれた。 第一は、マレーシアのFGMを、WHOによるアフリカ中心のFGM理解とその分類から一度切り離して見るべきであるということである。そこから、マレーシアにおけるFGMをより象徴的な行為としてみていく可能性が導かれる。第二は、FGMを家父長制による女性支配だけでなく性器加工の伝統や美容整形との関連で理論的に考察することである。
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