2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24652040
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
羽田 康一 国際基督教大学, キリスト教と文化研究所, 研究員 (30240724)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (50295458)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | フィロストラトス / エイコネス / ギリシア神話 / 風景画 / エクフラシス / フレスコ / 国際研究者交流 / フランス:イタリア |
Research Abstract |
1)昨年度の前半はフィロストラトス『エイコネス』の翻訳註解を進めた(4~9月)。研究の根幹をなす作業である。 2)その傍らフレスコ画制作の講習を受け、古代フレスコ画について文献調査を行った(7~8月)。ポンペイ壁画に代表される古代フレスコ画に関し、図像だけでなく素材と技術についても古代文献と遺品を照合する研究を踏まえることは、『エイコネス』の翻訳註解に新しい次元を開くものである。 3)次いで所属大学における講義を、それまでにできていた原稿をもとに「オリュンピアー神話群」「テーバイ神話群」「アンドロメダーとヘーシオネー」について考察を深める機会とした(9~3月)。それぞれの神話について、主としてLIMC(古典神話図像事典)に依拠して文献資料と図像資料をほとんどすべて収集し分類し、それぞれの変遷を照合した。『エイコネス』にあっては、「オリュンピアー神話群」には「I.30 ペロプス」「III.9 ペロプス」「I.17 ヒッポダメイア」の三章、オイディプースを中心とする「テーバイ神話群」には「I.4 メノイケウス」「I.27 アンフィアラーオス」「II.29 アンティゴネー」「II.30 エウアドネー」の四章が属し、「アンドロメダーとヘーシオネー」は「I.29 アンドロメダー」と「III.12 ヘーシオネー」の二章からなるが、作業の結果、それぞれのエクフラシスに、ほぼ対応する遺品が数点ずつ存在することが判明した。成果の一部は今年度論文でも発表する。 4)そこから再現画制作の企画が具体化した。対応遺品を核として、来年度まとめて描く予定である。近世にティツィアーノやプッサンが『エイコネス』のテクストに触発されて独自の絵を創造したが、古代文献と古代遺品の悉皆調査に基づく恣意的でない再現画の試みはまだ行われていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度はフィロストラトス『エイコネス』の翻訳註解を80%ほどまで終える予定であったが、所属大学で急遽その内容を紹介する講義を任されたため、あまり前に進めなかった。しかし、全80数章中10章ほどについては特に深く考察する機会となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
代表者は、昨年度に続き今年度も『エイコネス』の翻訳註解を続け、80%の完成を目指す。それと並行して、「フィロストラトス」「エクフラシス」「『エイコネス』の構成」「古代の風景画」「古代の絵画技法」「古代絵画の色彩」など、総合的なテーマをめぐる考察の深化に努める。分担者と協力者も、最終年度のシンポジウムで発表するため、「エクフラシス」ないし「テクストとイメージ」関係の論考を1~2本準備する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は最終年度であり、研究成果をまとめることが最重要課題になる。一つには『エイコネス』の翻訳註解の完成、二つには国外研究者2~3名を日本に招聘してのシンポジウム開催である。研究費の主要な使途は、シンポジウム関連の海外・国内旅費(代表者、招聘研究者)と、再現図制作に要する人件費(委嘱協力者)になる。今年度から次年度に多少持ち越すのは、次年度の予算に余裕を持たせるためである。
|
Research Products
(5 results)