2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24652141
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤目 ゆき 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60222410)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 全国調達庁職員労働組合 / 進駐軍被害者連合会 / 調達庁 / 戦後補償 / 占領軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の全体を通して、全国調達庁労働組合の占領軍被害に関する調査票を基礎資料として、関連史料を収集し、分析した。人身被害は殺人、傷害、暴行、強盗、交通事故など多岐にわたるが、最終年度には特に武器弾薬処理の危険作業に伴う被害に注目し、名立機雷爆発事件、桜島不発弾爆発事件、鹿屋市郷之原町爆発火災事件に関する現地調査を実施した。占領下に全国各地で多発した事件の全容はこれまで明らかにされていない。それらは被害者や遺族にとって忘れられない記憶であり、爆発や火災の被害地域の高齢者たちはその悲惨を鮮明に覚えている。大事件の場合、自治体史に記録されたり、地域で伝承活動が行われていることもある。だが占領下にはGHQは人身事件に関する責任を負わないと言明しており、被害者は泣き寝入りすることが多かった。被害者が補償を訴えた場合も、日本政府はわずかな見舞金を支給するに留まった。被害の全容を把握して補償をするべき立場にあったGHQと日本政府が補償責任を履行せず、情報の公表も行わなかった結果、それらの経験は日本各地で人々が共通して経験した占領軍被害の一部でありながら、直接的被害地域や直接的被害者家族の内部に個々に封じ込められ、国民的認識になりえなかったのである。講和条約発効後、占領軍被害者の国家補償請求運動が始まり、占領軍被害を明るみに出し、この認識を広く社会に普及させる活動も行われた。だが占領軍被害問題は、国家補償の理念を欠落させた「給付金」付与の立法化で決着づけられた。その後の裁判で一部に日本政府の責任を指摘する判決が出た事例があるが、それらの判決もほとんど知られていない。本研究ではこのような占領軍人身被害の全体状況を明らかにし、同時に、貴重な資料である調達庁労働組合の調査票のデータ入力を行った。これらの調査成果を、プライバシー保護の方策を講じた上で、資料集として出版することを計画している。
|
Research Products
(5 results)