2012 Fiscal Year Research-status Report
外郭団体改革の財政・金融・司法の融合的実証分析による新たな地方財政運営創造の研究
Project/Area Number |
24653073
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮脇 淳 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (50281770)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若生 幸也 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 講師 (90620790)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 外郭団体改革 / 公有地信託 / 損失補償契約 / 地方行財政 |
Research Abstract |
本研究は平成24~26年度の3年間での実施を予定し、リーディングケースとして神戸市外郭団体改革の政策合意形成へ参画し政策選択過程を辿った課題抽出と銀行交渉過程を踏まえた課題の学際的体系化を図り、抽出した課題の普遍化に向けた理論的考察と地方行財政運営や金融制度への影響分析、財政支出の公益性判断等議会も含めた政策合意形成への影響と住民訴訟の関係を明確にし、市民の将来コスト・リスクを最小化する外郭団体を含めた行財政運営の新たな構図に関する創造的研究を進めるものである。 「再生検証ステップ」と位置付けた初年度の平成24年度については、神戸市外郭団体改革、具体的には神戸市住宅供給公社、都市整備公社、公有地信託方式であるマリンホテルズ社の整理・再生とそれに伴う組織統廃合、金融機関との交渉等に関して政策合意形成過程に実際に参画し動態的に実証分析を行った。この結果、神戸市住宅供給公社は清算的民事再生手続きと都市整備公社への業務集約、マリンホテルズ社は特別清算・民間売却のスキームを構築し、財政・金融・司法的視点を政策合意形成過程から融合させ事後的検証では見えづらい相互関係を時系列で認識した。本年度の研究活動を通じて、神戸市、神戸シティ法律事務所との連携で実務面からの取り組みを時系列で深く掘り下げることが可能となり、それを理論的に再整理する中で学術的体系化を図る情報整理が実現した。 また、平成24年度に同様の状況に至った大阪市等の具体的事例との比較研究を行うことで、将来の都市部財政に与えるリスクへの対処としての訴訟等法的処理の選択の可能性の適否と地方行財政と司法・法曹活動の関連性にも視野を広げて整理を行った。平成24年度で基礎的情報把握を終了し、追加的情報収集の必要性はあるものの、本格化してきている土地信託事業の整理も含めた行財政、政策形成の構図検討のための情報融合分析に入る準備が整った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーディングケースとした神戸市での住宅供給公社、マリンホテルズ社等の外郭団体見直し議論と金融機関等との交渉プロセスが損失補償契約の有効性を争った安曇野市訴訟の金融側勝訴(損失補償契約の有効性)等の影響もあり 当初予定よりも半年程度早く進行することができたため、この間の時系列的な政策形成過程・交渉過程の情報収集がスムーズに実施でき研究初年度ととして想定した「再生検証ステップ」は計画以上に進めることができた。また、マリンホテルズ社の民間化に向けたプロポーザルも順調に進み事業継承する民間企業の決定と条件整理についても当初予定より早く決着することができた。 但し、政策形成過程や交渉過程の情報収集がスムーズに進んだ分、収集した情報の財政、金融、法的処理さらには政治的側面の理論的整理及び体系化の作業が量的・質的にも堆積しており、さらにマリンホテルズ社の民間売却手続きの前倒し等も重なり、研究二年度目に該当する平成25年度の「融合ステップ」に対する準備作業を5月中は引き続き進める必要があり、平成25年度当初において平成24年度から継続的に取り組まなければならない課題となっている。以上の課題はあるものの三年間の研究期間全体の中で平成24年度はおおむね順調に進展したとの自己評価を行っている。 なお、初年度の分析作業を通じて先行して発行してきた三セク債の返済期間設定が発行地方自治体の財務体力に比べて短期間であるため、単年度財政運営が困難化し三セク債の返済期間延長等の必要性についても検討することができた。加えて、三セク債が法人格を有する組織体を前提としていることから公有地信託事業のスキームへの適用等に限界があることも制度的に検証することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度で神戸市事例等に関する情報収集がぼぼ終了したことから、追加情報収集と共に二年目となる平成25年度では神戸シティ法律事務所等との連携によって収集した情報の体系的分析に注力する。その際に、北大(札幌市)、神戸市で研究会を開催し、大阪市や兵庫県等で抱える類似問題に対する比較研究等を進めると同時に、民事再生や民営化スキームが想定した通りに進行しているかどうか事後的検証を進める。この検証を通じて神戸市の個別事例を通じて検証できた課題の他地方自治体に対する普遍化を図り外郭団体の統廃合等整理に関するモデル形成に努める。 また、実質的に発行の最終年度となる三セク債の発行状況やその後の地方財政に与えている影響等についてマクロ的検証を行う。その際には、三セク債発行により外郭団体の整理統廃合に取り組んだものの三セク債の発行条件等の関係で財政運営が改善していない地方自治体等の検証にも視野を広げる。 最終年度平成26年度の総括プロセスを通じて出版に結び付けることを意図しており、平成25年度の融合プロセスを通じて資料・情報の体系化を図り出版のための基本スケルトン形成を行う。なお、平成24年度においても神戸市外郭団体の検討過程については論文としてまとめており、検証・分析の進捗と共に加筆を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中に発注したものの物品の在庫がなく納品されなかったため未使用額が発生した。平成25年度に納品された段階で使用する。
|
Research Products
(2 results)