2013 Fiscal Year Research-status Report
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24653187
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
高岡 昌子 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (10342263)
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Keywords | グラスレス3D映像視聴 / 携帯型ゲーム機 / 疲労感 / 発達 / 幼少期のゲーム経験 |
Research Abstract |
平成25年7月には日本視覚学会において「携帯型ゲーム機のグラスレス3D映像視聴による影響」という題目で発表した。質問紙の結果からは3Dのほうが全体的に疲労感が高いことが示されたが、この影響は目と頭に関係するもので、吐き気などを伴うような気分の悪さは弱かった。また、2D体験後に3Dを体験する場合の方が、その逆順序で体験するよりも臨場感が増して、スピードも感じられるという結果であった。全体的に2Dよりも3Dでのゲームの方が臨場感が高かったが、楽しさでは差がなく、3Dよりも2Dでゲームをすることを好む者の方が多かった。因子分析の結果によって、3Dの場合の方が全体的に疲労感が高くなることを確認したが、「立体」であることよりも「動き」のある 画像であることによると思われる吐き気などを伴う気分の悪さは、3D体験後も2D体験後もいずれもほとんど生じず、差がないことが示された。これは実験で使用した画面が小さいためであると考えた。今後、携帯型ゲーム機の3D画面の大きさの違いによる疲労感への影響も調べたい。 平成25年3月には日本発達心理学会において「幼少期におけるゲーム経験とゲーム体験による疲労感との関係」という題目で発表した。平均6.5歳より早期に初めてゲームで遊んだという「早期ゲーム開始群」の方が、6.5歳よりも後に初めてゲームで遊んだという「後期ゲーム開始群」よりは全体的にゲームによる疲労感が少ない傾向がうかがえた。なお2Dのゲーム機の経験率は100%で、3Dのゲーム機の経験率は40%であった。さらに3Dゲーム機体験済み群と3Dゲーム機未体験群とに分けて分析したところ、3Dゲーム機体験済み群の方が3Dゲーム機未体験群よりもゲーム機で疲れにくい傾向がうかがえることがわかった。しかし全体で3Dでゲームをすることを2Dでゲームをすることよりも好むと答えた者は全体の12.5%しかいなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。現在の子どもたちの携帯型ゲーム機の使用状況を観察やインタビュー調査等してきたが、子どもが集団で携帯型ゲーム機で遊ぶ子どもを取り囲んで見ているケースが多く、「保護者による使用制限」で3D映像の表示を制限するように設定しているケースは少なく、6歳以下の子どもも自分で2D映像か3D映像かを選択しているケースが多いようであった。より多くのデータを蓄積するため質問紙による実態調査を実施する予定である。また子どもを実験協力者とした実験はグラスレス3D映像視聴から予測される危険性によって慎重にならざるをえないため、まだ行えていないが、そのために必要な大学生を対象とした実験を重ねており、今後の子どもを対象にした研究につなげていくことのできる重要なデータは蓄積しつつある。平成25年度に日本発達心理学会で発表した内容は、3Dゲーム機がなかった世代の大学生における幼少期のゲーム経験の程度と3Dによって生じた疲労感の度合いとの関係を調べた内容であり、早期にゲームを体験するほうが疲労感が感じられにくいようであり、3Dゲーム機体験済み群の方が3Dゲーム機未体験群よりもゲーム機で疲れにくい傾向がうかがえることがわかった。これらの内容は調査しておくべき内容であり、幼少期から3Dのゲーム機が存在する現代の子どもたちが20歳ごろになったときに再度同じような調査と実験を行い、今回の結果と比較検討を行いたいものである。 (平成26年度より新職場に異動したため、その異動の前後に研究費を使用できず研究が滞る期間があったが、その異動により、連携できる幼稚園や小学校が増えたため、平成26年度からの研究の遂行は平成25年度末までよりも円滑に遂行できつつある。)
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に日本視覚学会で発表した内容から、携帯型ゲーム機は画面が小さいことが利点となり、約20歳の実験協力者にとっては気分が悪くなるというような危険性はほとんどないようであった。これは、携帯型ゲーム機の画面が小さいために、その影響が少なかったのではないかと考えた。そのため、同種の大きな画面をもつ携帯型ゲーム機において、同様の結果が得られるのか、比較しておく必要がある。さらに平成25年度までの研究では動きの大きなゲームを用いてきたが、教材的な意味合いのあるソフトやパズルなどのソフトなど別のタイプのゲームをした場合の影響などについても調べていきたい。 平成25年度に日本発達心理学会で発表した内容からは、3Dゲーム機体験済み群の方が3Dゲーム機未体験群よりもゲーム機で疲れにくい傾向がうかがえることがわかった。この結果からユーザーの経験の度合いが3Dゲームのよりよい評価につながっていく可能性が示唆された。幼少期から3Dのゲーム機が存在する現在の子どもたちの携帯型ゲーム機の使用状況を観察調査してきたが、より多くのデータを蓄積するため、質問紙による実態調査を今年度行いたいので、その準備をしている。現代の子どもたちが20歳ごろになったときに再度同じような調査と実験を行い、今回の結果と比較検討を行いたいものである。 一般的にはグラスレス3D映像視聴は推奨されるものではなく、6歳以下の子どもが長時間にわたって3D映像視聴をしないように制限すべきとされているが、その制限の度合いは実際には100%ではない。その度合いについても質問紙による実態調査で調べておきたい。そして今後のソフトウエアの改良や今後のユーザーの経験の度合いの変化によって、一層長い時間にわたってゲームをした場合の影響や、また幼少な世代の子どもたちへの発達への影響を蓄積していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度に異動したため、平成25年度まで所属した大学での使用は平成25年12月末で一旦止めて処理し終える必要があり、平成26年1月から3月の期間に予定していた内容を進めることができなかったので、データ処理協力者と実験協力者への謝礼金等を使用することができなかったが、平成26年度に使用する予定である。 今年度は収集したデータの処理を進め、ECVP(The European Conference on Visual Perception)という学会で発表する予定である。さらに残りの実験と質問紙調査を遂行してデータ分析を行うために協力者を得る必要があり、そのために謝礼金を使用する予定である。そしてデータを蓄積して、論文を作成して、投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)