2012 Fiscal Year Research-status Report
層状構造をもつ遷移金属オキシナイトライドの合成と新奇超伝導体の探索
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24654094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本橋 輝樹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00323840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導 / オキシナイトライド / 層状構造 |
Research Abstract |
本研究では、複合アニオン化合物の一種であるオキシナイトライド(酸窒化物)において、層状構造をもつ新奇超伝導体を創製することを目的とした。新規機能性材料の候補として、金属酸化物と金属窒化物の中間に位置するオキシナイトライドが高い注目を集めている。この物質群では結晶中に2種類のアニオンが共存するため、金属・アニオン間結合状態を柔軟に変化させることにより物性の幅広い制御が可能である。 今年度(平成24年度)の研究では、化学的性質が大きく異なるリチウムと遷移金属を組み合わせて、金属が秩序配列した層状構造をもつオキシナイトライドに着目した。LiNb3O8をアンモニア窒化することにより六方晶構造の(Li0.88□0.12)Nb3.0(O0.13N0.87)4を合成した("□"は金属サイトの空孔を表す)。X線および中性子回折を用いた構造解析より、本物質は八面体サイトと三角プリズムサイトが交互に積層する構造を持ち、八面体サイトにはLiとNbが約4 : 6の比で共存し、三角プリズムサイトはほぼNbのみが占有することが判明した。 電気抵抗率は室温から低温まで10-2 Ω m程度であり、本物質が金属的伝導性をもつことを示している。さらに約3 Kから電気抵抗率が急激に低下し、この温度以下で大きな反磁化と比熱の異常が観測された。1.7 Kでの反磁化の値から体積分率を計算すると約11%であり、層状Li-Nbオキシナイトライドが新規超伝導体であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、オキシナイトライド(酸窒化物)において層状構造をもつ新奇超伝導体を創製することを目的としている。平成24年度の研究において、化学的性質が大きく異なるリチウムとニオブを組み合わせて、金属が秩序配列した層状オキシナイトライド(Li0.88□0.12)Nb3.0(O0.13N0.87)4の合成と低温物性評価を行ったところ、本物質がTc=3Kの新規超伝導体である可能性が強く示唆された。 この成果は、本研究の目的に合致する内容である。我々の知る限り、本物質は層状構造を持つオキシナイトライドにおける初の超伝導体である。新しい結晶構造における超伝導体の創製は、超伝導研究の新展開に繋がる可能性があるため大変意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究により、リチウムとニオブを含む層状オキシナイトライドにおいて新規超伝導体を発見した。同様のコンセプトによって、化学的性質が大きく異なる複数の金属を含むオキシナイトライドについての新規超伝導体探索に期待が持たれる。具体的な計画内容は以下の通り。 酸窒化ニオブ(Nbオキシナイトライド)への典型元素置換: 比較的高いTcを持つ岩塩型構造の酸窒化ニオブへ典型元素のCa, Srを添加して相生成および超伝導特性の影響を調べる。CaO, SrOも岩塩型構造をとることが知られていることから、岩塩型構造を基本としたCa-Nb, Sr-Nbオキシナイトライドの生成し、またCa, SrとNbの化学的性質の違いからCa, SrとNbが層状に規則化した構造となることが期待される。 Li-Mo系、Li-Ti系への拡張: 研究対象をニオブ以外の遷移金属に拡張し、一連の研究項目を実施する。Liと組み合わせる遷移金属元素として、熱的に安定なオキシナイトライドを数多く形成するMo, Tiに着目する。試料合成は、Li-Nb系と同様アンモニア窒化により酸化物を酸窒化物へ直接転換する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度未使用額が発生した理由は、同年度に新規超伝導体の可能性が高い化合物を得ることができたため、酸窒化物の合成実験のウェイトが想定以上に小さくなり、アンモニアガスなど消耗品費の使用が減ったため。 25年度は、さらに新規超伝導体を探索するため、上記未使用額を合成実験の追加経費(高純度ガス、小型電気炉:50万円以下備品)に充てることを計画している。
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