2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24654143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 俊哉 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40272463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 係留気球 / 火山噴煙 / 火山ガス |
Research Abstract |
本研究課題は新しい火山噴煙の観測手法として、係留気球を用いた観測手法の開発を目指すものである。当初、使用する気球としては気球製作所(株)のK型(球形)係留気球を使用することを検討していたが、気球メーカーとの打合せで、気球の自重が重い係留型の気球よりも、軽量なゾンデ型の気球を係留する方が、本研究課題が目的とするような測定に適しているという指摘を受け、そちらを使用することにした。こうすることで、必要となるヘリウム量が少なくなるので、ガスボンベなどを持ち運ぶ量を削減できる利点がある。 ガス測定装置に関しては、定電位電解式の二酸化硫黄ガスと硫化水素ガスセンサーを調達した。また、データロガーには、無線通信が可能なものを選定した。これにより、150 mの距離までであるが、気球が上空にある状態で、ガス検知の有無を地上から確認することが可能になる。係留用のロープには釣り糸に使用されているダイニーマ素材のPEラインを選定した。最終的に使用するライン強度によるが、100 mあたりの重量が数十グラムと軽量である。 秋以降、ヘリウムガスの調達が難しくなったため(達成度の欄参照)、実際に気球を上げる作業ができなかったが、桜島火山周辺で気球観測を行う場所の探索を実施した。桜島の場合、島の北半分が鹿児島空港の外側水平表面制限区域に当たることがわかったため、火山の南側を中心に探索を行った。この結果2ヶ所の候補地を選定した。そのうち1箇所は、条件によっては地上でも二酸化硫黄濃度が1 ppmレベルになることがある場所で、好条件での観測が期待される。 年度末になり小容積のヘリウムボンベを調達することができたので、実験室で小型のゾンデ気球を使用して、ヘリウムの注入試験を実施し、注入操作法の確認を行った。また、係留気球観測を火山ガスの遠隔測定法の検証に使用する場合の検証方法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
達成度が遅れている最大の原因は世界規模のヘリウム不足が挙げられる。特に2012年秋以降多くのガスボンベ会社でヘリウムボンベの出荷停止になっており、この状況が年度末まで続いていた。 気球のテストなどを行おうとした時点で、ヘリウム不足を知り、年末には状況が改善されると思い様子を見ていたが、状況はさらに悪化した。特に桜島でのテストを予定していたので、鹿児島のガスボンベ会社に問い合わせを何度か行ったが、ヘリウムの在庫は全くなく、調達することはできなかった。このため、予定していた気球のテストなどが進展せず、特に火山近傍での気球を使った作業はまったく行うことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
鹿児島のガスボンベ会社の話では、ヘリウムの出荷停止は平成25年5月以降に改善する見込みであると聞いているので、ヘリウムボンベが調達できるようになった時点から、実際に気球のテストなどを進めていく予定である。今年度に観測候補地とした2地点とも、桜島火山の南東側にあるので、これらの地点での観測は、北西風が卓越する秋以降に実施する予定である。 研究の進展はヘリウムガスの調達状況に大きく依存する。本研究課題の目的を達成するためには、現在の進捗状況を考え合わせると、平成25年度で終了予定の現研究計画を平成26年度まで期間延長すべきであると考えている。平成24年度の進捗は6ヶ月程度遅れた状態であり、平成25年度もヘリウムガスの供給の回復状況によっては4-5ヶ月もの期間、ヘリウムを使用した実験ができない可能性も十分に想定される。従って、今後の研究推進方策としては、平成25年度においては、元の平成24年度の計画内容を着実に実施することに加え、元の平成25年度の計画の一部を実施する方向で予定している。そして、期間延長を行った平成26年度に元の研究計画の25年度分を実施したいと考えている。 最近の研究で、遠隔紫外分光測定で、多量のエアロゾルにより透明度が低い火山噴煙の二酸化硫黄カラム量を定量する場合、従来の解析手法では問題がありうることが明らかになった。また、噴煙内の二酸化硫黄濃度分布の影響も指摘されている。本研究課題の目的としている遠隔測定法の検証として、この問題の検証を進める方向で考えている。この際、二酸化硫黄濃度測定には、定電位電解式センサーより応答の速い装置が必要となる。現有の小型紫外分光計と、小型紫外光源を用いて二酸化硫黄測定に対応する予定である。また、この目的には気球自体を濃い噴煙に入れる必要があるので、観測としては地上から低高度で高濃度の噴煙がある阿蘇火山などがターゲットとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題で使用する物品で設備備品に対応するものはない。消耗品関係では、平成24年度に、ヘリウムボンベから気球にガスを注入るための機材、ガス計測部にあたるガスセンサーやデータロガーはすでに調達してある。平成25年度には、選定済みの係留ロープに当たるPEラインの購入や、係留地上部に使用する機材を最終的に選定し購入する予定である。地上部としては電動リールのみを使用予定であったが、気球メーカーとの打合せのなかで、係留ーロープへの瞬間的なショックを和らげるため釣竿の使用を進められたので、こちらの購入も予定している。また、ゾンデ式の気球はすでに数枚調達してあるが、基本的に使い捨てになるので、観測のたびに購入予定である。観測に使用するヘリウムガスは、ボンベ容器がレンタルなので、観測ごとに現場周辺のガス会社より調達し、終了後速やかに返却する。 旅費としては、研究打合せや観測での旅費が中心となる。火山での観測は、すでに観測場所の候補が決まっている桜島火山周辺および、地上から低高度で噴煙観測ができる阿蘇火山での実施を計画している。また、研究成果の発表の場としては、年度末の研究集会などを検討している。 その他の経費としては、観測機材の運搬費や観測の際に使用するレンタカー代金などとして使用する予定である。また、「今後の研究の推進方策」で記したように、平成26年度への期間延長を考えているので、平成26年度の研究計画を考慮しつつ、研究費を使用していく予定である。
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