2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655034
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20372724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛原 大軌 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (00583717)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トリフィリン / チオフェン / 金属錯体 / 白金 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、14π芳香族性を有する[14]トリフィリン(2.1.1)の化学を確立することであり、本年度は特に、(1)トリフィリンの白金及び鉄錯体の合成検討、(2)トリフィリンの3つのピロールのうちの1つがチオフェンに置換されたチアトリフィリンの合成と物性についての詳細な検討、につてい詳細に検討した。 (1)では、トリフィリンのPt(II)錯体の合成に成功した。この錯体は2つのピロール窒素と塩素イオンを配位子とする平面4配位であるが、大気下では不安定で容易に八面体構造のPt(IV)錯体へと酸化されること、あるいは結晶化の過程で酸素原子がブリッジして安定構造をとることを、X線結晶構造、吸収スペクトルなどから明らかとした(Inorg. Chem. 2013, 52, 2688-2690)。また2価の鉄錯体はCpとトリフィリンによるサンドイッチ構造をとることを明らかとし、単離に成功した。 (2)では、予想されたチアトリフィリンを単離することはできなかったが、その化学を詳細に検討した。その結果、硫黄原子が窒素原子より大きいことと、環内部の窒素のlone pairの反発から単離が難しいことを明らかにした。すなわち、メソ位にアルコキシ基が付加することで14π芳香環を崩して立体反発を回避すること、あるいは、酸によりピロール窒素をプロトン化することで環内部の水素結合が可能になり、lone pair同士の反発を回避して14π芳香属性を実現することを、結晶構造、酸と塩基滴定による吸収スペクトル変化などにより、見いだした(Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 3360-3363)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、[14]トリフィリン(2.1.1)の白金錯体の合成に成功し、その酸化挙動について詳細に明らかにした。柔軟な構造を有する環状1価の3座配位子としてユニークな性質を持っていることが明らかとなり、非常に多様な金属イオンに対して配位能力があること、また、構造的あるいは電気化学的に不安定なときに、柔軟に構造や電子状態を変化させて対応することができるなど、興味深い性質を有することがわかった。平面4配位の白金2価錯体が、酸化されてオクタヘドラル構造を取る白金4価錯体に変化することが可能な、珍しい配位子である。 またチアトリフィリンについても、独特の反応性を明らかにした。14πチアトリフィリンは立体的に不安定であるが、環の柔軟性を利用して立体障害を回避することが可能であり、その結果、興味深い反応性を示した。 以上の結果はそれぞれ、Inorg. Chem., Angew. Chem. Int. Ed.に受理された。山田、葛原ともそれぞれInternational Conference of Porphyrins and Phthalocianinesでの招待講演も行い、国際的にも高い評価を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
金属錯体に関しては、24年度に引き続き、鉄錯体の化学を中心に行う。フェロセンに代表されるサンドイッチ型錯体は、ポルフィリン全体を見渡してもあまり多くない。とくに、可逆的に鉄の酸化還元が行えるものやCpとのハーフフェロセン型錯体は報告例が少ない。そこでその構造や酸化還元挙動、触媒機能について詳細に検討する。さらに、ホウ素錯体や銀錯体などの合成も試み、トリフィリン金属錯体についての知見を深める。 また、チオフェンにかわる複素環を含むトリフィリンの合成例はこれまでになく、その構造と性質に興味が持たれる。そこで、引き続き、様々な核置換トリフィリンを合成し、ポルフィリン、N混乱ポルフィリンなどのポルフィリン類縁体と比較し、その特徴を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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