2012 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素ハイドレートの大規模火災用消火剤としての可能性
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24656145
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
植田 利久 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10151797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 亮 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70356666)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 消火 / 二酸化炭素ハイドレート / 沸点 |
Research Abstract |
本研究は,大規模火災の消火に対する二酸化炭素ハイドレートの有用性を明らかにすることを目的として,燃料の沸点の影響と浮力に着目した火炎のスケールの影響について実験的に検討を加えるものである. 燃料の沸点の影響について: 研究計画にそって,沸点が異なる燃料,メタノール(沸点67.4℃),エタノール(沸点78.4℃),1-プロパノール(沸点97.4℃)および1-ヘキサノール(沸点158℃)を用いて消火実験を行った.直径27.4mm,深さ15mmのステンレスシャーレに燃料を深さ8mmまで満たし,着火しプール火炎を形成する.その火炎に上部から消火剤を落下させ,消火の有無を調べる.消火剤としては,二酸化炭素ハイドレートのほか,比較対象として,氷とドライアイスを用いた.その結果,消火に必要な消火剤の最小の質量,消火限界質量,は燃料の沸点が高くなるにつれて少なくなることが分かった.氷の場合も同様に消火限界質量は沸点の高い燃料ほど少なくなったが,ドライアイスではほとんど変わらなかった.このことは,二酸化炭素ハイドレートおよび水の場合,沸点の高い燃料ほど,水の蒸発が増え,その結果蒸発潜熱による冷却効果が増大したものと考えられる.水の蒸発を有しないドライアイスの場合,消火限界質量は燃料の沸点にかかわらず,ほぼ一定であった.このことより,二酸化炭素ハイドレートの消火には水の蒸発が重要な役割を演じていることが明らかになった. 火炎のスケールの影響について: 沸点の影響に関する実験より,火炎のスケールは燃料によって大きく異なることが明らかとなった.また,沸点が100℃以上の燃料の場合,燃料表面で水が突沸するフラッシュオーバーが生じることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,大規模火災の消火に対する二酸化炭素ハイドレートの有用性を明らかにすることを目的として,(1)二酸化炭素ハイドレートの生成装置の設計・製作を行い,(2)燃料の沸点の影響と(3)浮力に着目した火炎のスケールの影響について実験的に考察するものである. (1)の二酸化炭素ハイドレート生成装置の設計・製作に関しては,当初計画通り製作した.(2)燃料の沸点の影響に関しては,燃料として当初予定していたメタノールだけでなく,二年目に予定していたエタノール,1-プロパノール,1-ヘキサノールを用い,消火剤としては二酸化炭素ハイドレート,氷,ドライアイスを用いた実験をすべて行うことができた.その結果,二酸化炭素ハイドレートの消火には水の蒸発が重要な役割を演じていることが明らかになった.すなわち,本研究に関しては,次年度分についても前倒しで検討を加えることができ,当初の計画以上に進展していると判断することができる. (3)の火炎のスケールの影響に関しては,燃料により火炎のスケールが大きく変化すること,燃料の沸点が高くなるとフラッシュオーバーが生じることが明らかとなった.当初,フラッシュオーバーについては研究計画で深く考慮されていなかったため,フラッシュオーバーの影響を考慮した実験装置について再検討を加え,設計図を新たに作成した.したがって,実験装置を製作することはできなかったが,火炎のスケールの班化に関する検討についても,研究はおおむね順調に進展している判断することができる. 以上述べたように,二つの課題を総合して考えた場合,本研究はおおむね順調に進展していると考えることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度製作したハイドレート生成装置を用いて,CO2ハイドレートを作成する.(2)燃料の沸点の影響に関しては,2年度目の燃料を用いた実験もすでに行っており,当初の計画を1年目でほぼ達成している.(3)火炎のスケールの影響に関しては,フラッシュオーバーについて再検討したことから,当初計画していた実験装置の組み立てには至らなかった.そこで本年度は,(3)火炎のスケールの影響に関する実験を中心に研究を進める. 具体的には,まず,火炎のスケールを大きくした場合にフラッシュオーバーが生じることを考慮し,当初計画に加えて,ハイドレート落下位置を調整可能とし,火炎の高さ,フラッシュオーバーによる火炎の膨張にも十分耐えうる装置を設計製作する.つぎに沸点の低い燃料から順に実験を行い,CO2ハイドレートを落下した時の火炎形状の変化,消炎過程をビデオカメラを用いて記録し,解析する.また,落下するCO2ハイドレートの量を徐々に増やしてゆき,消火に必要な最小限のCO2ハイドレート質量(消火限界質量)を明らかにする.これらの実験結果をもとに,CO2ハイドレートの大規模火災への有用性を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,昨年度製作できなかった(3)火炎のスケールの影響に関する実験装置を製作する.その費用は昨年度当該実験装置を作成することができなかったために生じた未使用分を含め,約30万円程度である.また,大きな火炎の基部の複数の位置の温度測定を可能にするために,温度測定装置を購入する.その費用は40万円程度である.また旅費として,昨年度の成果を2013年5月に韓国慶州で行わる国際会議で発表するために,国外旅費20万円,12月に開催される燃焼シンポジウムでの発表のための国内旅費5万円を見込んでいる.そのほかは,データ整理のためのアルバイト代や消耗品費として,液体燃料,ハイドレート作成装置に用いるエチレングリコールなどの購入を考えている.
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Research Products
(2 results)