2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザーブレイクダウンプラズマによる衝撃波を用いた微小空間のための音響加振法
Project/Area Number |
24656158
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
細矢 直基 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40344957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 逸朗 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60224416)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レーザーブレイクダウン / プラズマ / 衝撃波 / 音響加振 / 微小空間 |
Research Abstract |
本研究では,レーザーブレイクダウン (Laser-induced breakdown: LIB) により理想的な点音源を任意の位置に生成することで,微小空間に対して100 kHz程度の高周波数帯域の音響加振を実現する.音響加振は,スピーカにより加振する方法が一般的であるが,スピーカが音場の特性に影響を及すことや,スピーカの形状や大きさにより空間に配置できないことがあるため,MEMSなどのマイクロメートルオーダーの微小空間内を対象とした音響加振には適さない.レーザービームのスポット径を凸レンズにより数十 マイクロメートル程度に集光しLIBを発生させれば,生成される音源は点音源となることが予想される.この理想的な点音源を微小空間内における任意の位置に配置することができれば,音響加振の適用範囲拡大が期待できる. 平成24年度は,LIBにより生成された点音源に基づく音響加振法について検討した.LIBによる点音源は,無指向性かつ理想的なインパルス波形であり,音響加振源としては数百kHz程度の高周波数帯域までの成分を含むことがわかった.また,LIBによる点音源の音圧の再現性を確保するためには,レーザーパルスエネルギー,スポット半径を適切に設定する必要があることを明らかにした.LIB生成の再現性および信頼性を向上させるため,ガリレオ型ビームエキスパンダーを本加振システムに導入した.ビームエキスパンダーにより焦点距離の長い凸レンズのスポット半径をより小さくすることで,LIBによる点音源の音圧の再現性を向上させることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,高速度カメラによるLIBプラズマ形成の画像計測,およびマイクロホン(圧力センサ)による衝撃波の音圧計測を同時に行うことで,LIBプラズマの形成と,レーザーパルスエネルギー,凸レンズのスポット径,焦点深度の関係を明らかにすることを達成目標とした.平成24年度は以下の3点について計画通り実施できた. (1) レーザーパルスエネルギー,凸レンズのスポット径,焦点深度を様々に変化させることで,LIBプラズマの形成とこれにより生成された衝撃波の音圧との関係を調べた. LIBプラズマの形成を高速度カメラで500,000コマ/秒程度で画像計測すると同時に,衝撃波の音圧をマイクロホン(圧力センサ)で計測した.レーザーパルスエネルギーは0.08 ~ 1 J,凸レンズのスポット径,焦点深度は,凸レンズの焦点距離(焦点距離: 100 mm, 200 mm, 300 mmの3種類)を変化させることで調節した.これにより,LIBプラズマの形成にスポット径,焦点深度が衝撃波に及ぼす影響を明らかにし,音響加振源として適切なLIBプラズマの形成を実現した. (2) 衝撃波伝播を可視化するためシュリーレン光学系を構築した. (3) LIBプラズマによる衝撃波を用いて,空気中の膜構造を音響加振するための実験装置を構築した.また,膜構造の精確なFEMモデル構築のために,膜構造に対してインパルスハンマによる打撃試験を行い,周波数応答関数計測を行った. 以上より,当初の計画の通り研究を実施し,成果が得られているため,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,LIBにより理想的な点音源を任意の位置に生成することで,微小空間に対して100 kHz程度の高周波数帯域の音響加振を実現する.この理想的な点音源を微小空間内における任意の位置に配置することができれば,音響加振の適用範囲拡大が期待できる.平成24年度は,高速度カメラによるレーザーブレイクダウンLIBプラズマ形成の画像計測,およびマイクロホン(圧力センサ)による衝撃波の音圧計測を同時に行うことで,LIBプラズマの形成と,レーザーパルスエネルギー,凸レンズのスポット径の関係を明らかにした. 平成25年度は,LIBプラズマによる衝撃波の伝播をシュリーレン法により可視化し,これを高速度カメラで画像計測することで,数マイクロメートルオーダーの微小空間を対象とした音響加振源として有効であることを示し,高時空間分解能を有する音響試験法の実現可能性を検討する. (1) LIBプラズマによる衝撃波の伝播を可視化することで,対象とする微小な空間,構造に対して適切なLIBプラズマの形成位置を調べる. (2) LIBプラズマによる衝撃波を用いた空気中の膜構造物の音響加振実験を試みる.また,LIBプラズマによる衝撃波は水中でも発生するため,水中構造物に対しても同様に音響加振実験を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,シュリーレン光学系を改良するための光学部品購入費,高速度カメラのレンタル費用などに用いる.現在のシュリーレン光学系では直径50mmが検査対象領域であり,大きな領域の観察には適さない.また,水中構造物の音響加振実験をあらゆる角度から観察するために,光学系を変更する必要がある.さらに,高速度カメラによる撮影回数の増加も想定され,これに伴いデータ記録用のハードディスクドライブも必要となる. 本研究により得られた成果を公表するための費用(論文掲載費,旅費)として使用することも計画している.
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Research Products
(10 results)