2012 Fiscal Year Research-status Report
表面プラズモンの誘導放出による次世代型ナノ情報発生源の開発
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24656385
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 晃司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50314240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プラズモニクス / 誘導放出 / ナノレーザー |
Research Abstract |
半導体電子回路の集積密度は飽和を迎えつつあり,これを克服する一つのアプローチとして速く信号を伝えられる光回路を組み込むことが提案されているが,光の回折限界により光回路を微細化された電子回路に組み込むことは困難である.本研究では,電子と光を結び付ける技術として,金属/誘電体の界面に局在する電磁モード(表面プラズモンポラリトン)に注目し,高速性と微細性を兼ね備えた次世代情報伝達・処理回路の要素技術を開発する.特に,金属/誘電体/金属のナノ積層構造の誘電体層に量子ドット等の利得媒質を導入し,利得媒質の電界励起とそれに続くエネルギー移動過程を利用して,表面プラズモンの誘導放出に相当するスペーザー発振の実現を目指す. 平成24年度は,利得媒質を含む球状の誘電体ナノ粒子に金属キャップを被せたコア-シェル構造におけるプラズモン共鳴を数値計算の手法で解析した。具体的には、利得をもつ半径が100ナノメートルのシリカ粒子に10ナノメートル厚のAgキャップを被せた構造に対して光を入射し、入射方向をさまざまに変えたときのプラズモンの挙動を調べた。その結果,(1) 電気四極子のプラズモン共鳴モードが指向性をもつスぺーザーをもたらすこと,(2) 入射光の方向に依存せず,金属キャップの軸方向に沿って電磁波が放出されること,(3) 球状の誘電体ナノ粒子のまわりを完全に金属で覆った構造に比べて,金属キャップの構造の方が放出される電磁波の強度が高いことなどが明らかになった。このような現象はコア-シェル型構造の対称性を球対称から低下させるだけで現れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
指向性をもつスぺ-ザーがどのような金属/誘電体ナノ構造で得られるかが不明であったが,平成24年度の研究でそれが明らかになった。この結果は本研究を大幅に進める成果であり,残り1年で指向性スぺーザーの実証を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,数値解析の手法を用いて,利得をもった誘電体ナノ粒子を金属キャップで覆ったコア-シェル構造の基本的な光学特性を明らかにした。今後は,このナノ構造を実際に作製し,発光特性を評価してナノレーザーの実証に向けた取り組みを行う。現在,100ナノメートルサイズの誘電体ナノ粒子を得るための合成技術は確立されており,そのような粒子に金属キャップを被せることも原理的には可能であるため,当初予定通り研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、試料作製のために原材料費が当初より安くなり消耗品費で余りが出たが,これは平成25年度の原材料費に繰り越して使用する。また,現状では50万円以上の備品を購入する必要はなく,研究費は主に消耗品費と成果発表旅費として使用する。
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