2013 Fiscal Year Research-status Report
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24656405
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樽田 誠一 信州大学, 工学部, 教授 (00217209)
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Keywords | ナノ構造 / 透明材料 / 結晶化ガラス / マイカ / 電気伝導 |
Research Abstract |
1.金属Agナノ粒子が析出した透明なマイカ結晶化ガラスの作製と性質: Ag2Oを最大40mol%添加した無色透明の母ガラスを作製することができた。これを800℃で熱処理すると金属Agの析出がXRD分析により確認された。熱処理すると着色するが、850℃でも透明性を維持した。700℃の試料をTEM観察すると、 約20 nm×約10 nmの棒状マイカ結晶のほかに、1-3 nm の球状Ag粒子もみられた。また、850℃の試料には、大きく成長した棒状マイカ結晶,マイカ層間にサンドイッチされた多数の棒状金属Ag,1-3 nm の球状Ag粒子,球状のβ -ユークリプタイトが析出していた。TG - M S分析より、熱処理すると試料からフッ素が放出されることが確認された。これより析出した金属Ag粒子は試料中のフッ素成分が揮散することによりAg+イオンが還元されたものであると考えられた。Ag源としてA g Fを添加すると、より多くの金属Agが析出した。これは試料からフッ素成分がより多く揮散するためと考えられた。しかし、透明性が低下する傾向にあった。また、 L iの一部をS rとし、そこへAg 2 Oを添加すると、β -ユークリプタイトは析出しなくなり、高い温度で熱処理しても透明性の高い結晶化ガラスが得られた。しかし、金属Agの析出は少ないと考えられた。 2.Ag+イオンの還元に与える還元剤添加の影響: 還元剤としてSnOを添加すると、無色透明な母ガラスは得られなかった。また、SnOが容器として使用している白金と激しく反応した。一方、還元剤としてCeF3を添加すると、透明な母ガラスを得ることができた。このCeF3を12mol%以上添加すると、650℃で金属AgとCeO2が多量に析出し、外観は黒く着色し不透明となった。これをTEM観察すると、約70nmのAg粒子が多数観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画の内容が、概ね実行された。ただし、母ガラスを作製する際に用いる白金容器が原料のAg2Oと反応するため、Ag2Oを多量添加した試料については、伝導度を測定するために必要な大きさの試料を作ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、透明なマイカ結晶化ガラスへ金属Ag粒子の連続相を形成させることで、透明な導電材料を作製することである。平成25年度の研究結果より、金属Agを多量析出させるには、Ag2Oを多量添加すること、より高温で熱処理すること,および還元剤としてCeF3を添加すること、が有効であることがわかった。なお、当初、CeF3を還元剤として使用するには、紫外線(312nm)の照射が必要と考えられたが、紫外線がなくとも還元剤になり得ることが確認された。また、高温で熱処理した試料の透明性を維持するには、SrOの添加が有効であることも確認された。そこで、添加したAg+イオンをより効率よく還元して、より多くの金属Agを析出させるために、以下に示す推進方策にしたがい、研究を実施する。 (1) 結晶化ガラスの基本組成として、より高温で加熱しても試料の透明性を維持できるように、Srを添加した、(94.9 mass%(LiSr)0.5Mg3AlSi4.5O13.25F2 + 5.1 mass% MgF2)とする。 (2) 基本組成に、Ag源としてAg2O,および還元剤としてCeF3を添加し、その結晶化過程および試料の微構造を検討する。このとき、Ag2OおよびCeF3の添加量を変化させる。また、CeF3を添加すると、低い熱処理温度で比較的大きな金属Agが析出することが予測されるため、熱処理の昇温条件なども検討する。 (3) 還元剤としてCeF3を用いると、マイカが大きく成長して、試料の透明性が低下する傾向にあるので、CeF3の代わりにCe3+イオンを含む、CeCl3およびCePO3を添加し、その結晶化過程および微構造を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、文献等で紫外線を照射しないと起こらないと示されていた酸化還元反応が、紫外線を照射しなくても生じていることが判明した。それにより、購入を予定していた紫外線照射装置を購入する必要がなくなったため。 平成25年度から繰り越した予算(132,796円)については、電気伝導度の測定に必要となる白金線(φ0.0mm3×3m:80,000円),絶縁管などの消耗品(52,796円)に充てる。 また、平成26年度予算(800,000円)に関しては、消耗品(研磨材,試薬など)に100,000円,国内旅費(成果発表)に150,000円,その他(白金改鋳加工,英文論文校閲)に550,000円を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)