2012 Fiscal Year Research-status Report
水素吸蔵合金アクチュエータを利用した新しい地熱発電
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24656538
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 昌治 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10250474)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地熱エネルギー |
Research Abstract |
本研究では,従来の地熱発電では利用できなかった低エンタルピー地熱資源(中低温の地熱水)の有効活用を目指して,水素吸蔵合金アクチュエータを用いた新しい原理に基づく発電システムの開発を目指している.当該年度は,実験室において,発電システムを組み立て,その動作を確認し,出力および熱効率の評価を実施することを目的としていた.実際に実施した内容とその重要性は以下のようである. (1)水素吸蔵合金アクチュエータの組み立て:水素吸蔵合金アクチュエータを組み立てるため,それに接続する水素ガス経路切替器(クロスオーバーバルブ)を設計し,製作した.水素吸蔵合金容器への合金粉末の充填に際しては,容器周囲の熱が合金に素早く熱伝導するように,そして合金と水素ガスの熱伝達も考慮して,さらに水素ガスの流動性を確保するために,合金容器の内部構造はステンレスネットを用いて多重構造とした.そして合金粉末の容器への充填の仕方については工夫を凝らした.水素吸蔵合金としては,熱源の温度範囲に対応したAB5型のLaNi5を使用した.配管の接続には,必要に応じてロウ付けを実施し,継手とバルブも使用している. (2)発電システムの組み立て:水素吸蔵合金アクチュエータと発電機を接続するギヤボックスを設計し,製作した.そして,発電機とギヤボックスを固定する架台も製作した. (3)発電システムの最適化:発電システムの能力を最大限に引き出すために,アクチュエータと発電機をギヤボックスを介して適切に接続する必要がある.また,温水と冷水の流れを切り替えるタイミングや水素ガスの吸放出を切り替えるスイッチングバルブの制御が重要である.これらは,水素吸蔵合金容器内での合金の水素ガスの吸収・放出挙動を考慮して実験的に検討する必要がある.ここで明らかとなった事項は,次年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画にあったシステムの組み立てが遅れたため。その理由は,申請額に対して助成金額が大幅に削られていたため,当初予定していた特注品も最小限に抑える必要が生じ,特注部品の設計のし直しと可能な限り自作をしたために,試行錯誤の繰り返しとなってしまい,計画の実施に時間を要したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,地熱開発現場に水素吸蔵合金アクチュエータを利用した地熱発電システムを設置することを模擬した実証試験を実施する. (1)地熱開発現場の環境条件の検討:本研究で開発した水素吸蔵合金アクチュエータを利用した地熱発電システムを地熱開発現場に設置する場合に考慮しなければならない条件を検討する.現時点で実証試験が実施可能な候補としているのは,生産井の掘削が開始された地熱地域である.その現場で地熱水を利用するためには,スケールの問題,配管の腐食の問題等,考慮しなければならない点がいくつもある. (2)地熱開発現場への本発電システムの設置を模擬した試験:地熱開発サイトに本発電システムを設置した場合に考えられる問題の解決策を練る.そして,高温側熱源として地熱水を,低温側熱源として沢水を利用して,水素吸蔵合金アクチュエータを稼動させ,その動力によって発電機を回すことを考える.このとき,発電機はなるべく長時間稼働させて,必要なデータ(地熱水と沢水の温度,地熱水・沢水の切り替え周期,アクチュエータのピストン周期,出力など)を取得する.そして,現場において発電システムの出力と熱効率が最大となるような最適化条件を明らかにし,現場で発電システムを稼働した場合の問題点とその解決策を整理する. (3)本研究の総括:実験データを詳細に検討し,本研究で得られた最適化条件と照らし合わせながら,発電システムの改良点や適用可能範囲を明確にする.最終的に,現場の状況も考慮した場合の地熱発電システムの平均出力と熱効率を評価し,当システムの汎用性について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請額に対して助成金額が大幅に削られていたため,当初予定していた特注品も最小限に抑える必要が生じ,特注部品の設計のし直しを強いられ,計画の実施に時間を要し,研究実施計画にあったシステムの組み立てが遅れたため,実験に使用予定の消耗品費を使い切ることができなかった. 24年度の未使用額133千円の25年度における使用予定は以下のようである. 設備備品費0千円,消耗品費133千円,旅費0千円,人件費・謝金0千円,その他0千円,合計133千円
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