2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24657063
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40212154)
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Keywords | 交尾器 / 昆虫 / 配偶行動 / 精子 |
Research Abstract |
オスの交尾器の形態は,単に精子をメスに渡すだけでなく,精子競争の回避や受精率を高めるための機能などの複合的要因から進化的に決定されていると考えられる.とくに昆虫類のオスの交尾器は多様な形態を示すが,交尾器のそれぞれのパーツがどのような機能を有しているかはほとんど不明である.交尾器の各部分の機能を明らかにするためには,それらが交尾時にどのように使われているか(メスのどこに接地しているか)をまず明らかにする必要がある.一般に昆虫類の交尾は瞬時に行われたり,腹部内で外から見ることができないため,微細蛍光ビーズをオスの交尾器の一部に塗布して,交尾後にその蛍光ビーズがメスのどこに付着しているかを調べる手法を用いた研究を行った.カマキリ類のオスは左右非対称な交尾器を持つことが知られている.交尾のときには,メスの体の上にオスが乗り,オスは腹部をメスの腹部の横側を通して下方に曲げて交尾器を接続させる.調査したカマキリ類3種とも,オスの交尾器には左右非対称な3個の硬化した鉤状突起が認められた.しかし,メスの尾部の構造は左右対称であった.鉤状突起それぞれの先端部に蛍光ビーズを塗布したオスをメスと交配させ,その後にメスの尾部を蛍光実体顕微鏡下で観察した結果,オスの長い方の突起はメスの右側の亜生殖板に,短い方の突起は左側の亜生殖板に位置していた.つまり,これらの鉤状の突起を使って,亜生殖板の中央に埋め込まれている産卵管を持ち上げ,まず生殖腔を開けてから交尾に至ることが明らかとなった.交尾を経験したオスだけでなく,交尾未経験のオスも,試行錯誤することなく右側から下方へと腹部を曲げて交尾に成功したため,こうした交尾行動は学習によって獲得されるわけではなく,生得的な行動であると考えられた.このように微細蛍光ビーズを用いる方法は,昆虫類の交尾器の機能を解明する上で非常に有用である.
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Research Products
(1 results)